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振る舞いも見た目

先日、百貨店の中に入っているカジュアルめの服屋にふらっと立ち寄った。
たまたまセール中だったらしく、店内が客でごった返していた。

私は、少し高い棚にいくつか積んで畳まれているスウェットから、一番下の商品だけを引っ張り出したかった。しかしうまく引き出せず、上に重なっていた服も一緒に落ちてきてしまった。
面倒だなと思いながら、一枚一枚畳み直し元の棚に戻していると、2.3m先でいかにも試着したそうに商品を腕にかけた女性が私の方をチラチラ見てきていた。

私はこの瞬間、「店員と間違えられる(られそう)...」と半分無意識で察知して、咄嗟に手に持っていた別に欲しくない方のスウェットを自分の体に合わせるというジェスチャーをした。すると、その女性は何事もなかったかのように私の視界から消えていった。

改めて周りを見渡すと、確かに店員と客の区別がビジュアルだけではかなりわかりにくい。その中で、服を一枚一枚棚に整頓している様は、店員確率を60%ぐらいまで引き上げる行為の一つだったのだろう。私が一声「らっしゃせー」と呟いたら、女性は直進してきたと思う。


もう一つ面白かったのは、勘違いされそうな状況に立った時、自分で客らしい演技をしてしまっていたことだ。「死んだふり」をする動物の防衛本能みたいであった。

私は次にマクドナルドを訪れた。

自動ドアをくぐり入ると、レジの前でバラバラと人が散って立っていた。
メニューをまだ迷っている人、レジに並んでいる人、注文が終わって商品を待っている人、の3属性がいる。これもぱっと見では判断しにくい。

私は服屋のこともあり、そういう視点で観察していると、それぞれが自分の属性を周りに伝えているような細かい振る舞いが見えてきた。

メニューを迷っている人は、斜め上のメニューが書かれたサイネージへ目線を向け、重心はやや後ろ気味で、まだレジには案内しないで良いという空気を放っていた。

レジに並んでいる人は、できるだけ列を意識した場所に立ち、どこのレジが空くかを気にしているような素振りをしていた。(一番わかりやすい)
受取り待ちの人は、スマホを見ながらレジから体を軽く背け、自分の任務は全て完了している感を出していた。
微小な動きで自分の属性を伝える能力、そしてそれを鋭敏に感じ取る能力、人間に備わったこの2つの能力でマクドナルドのレジ前はスムーズに回っていた。

家を出る時、髪型や服装など静的な見た目に関しては自分の要素として意識的に考えがちである。
しかし、一歩外へ出て公共の場に溶け込むと、静的な見た目よりも動的なジェスチャー、表情、視線、歩行速度、話す速度、声のボリューム、など強力な「振る舞い」によって判断されてしまうことがあるのだが、それも含め自分であることに比較的無意識である。

振る舞いも含め、見た目なのである。

🍘おまけ
天竺鼠の「家族」という私の好きなコントをお勧めしたい。
登場人物の見た目が判別不可能な状態を利用したコント。おじいちゃん目線という設定も秀逸。

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