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【共同体感覚を体感する】カードゲーム体験記「Life with Social interest」

はじめに

以前からボードゲームが好きであったことと、アドラー心理学に興味があることから、先日、本カードゲームの体験会に参加してみた。
事前の紹介通り、本ゲームを通じてアドラー心理学の共同体感覚を体感することができた。
このカードゲームのことを紹介したいという思いから、
体験会の後、主催者の方に送った感想文を、『嫌われる勇気』の引用を加筆するとともに一部表現を修正してこちらのnoteにも転記することにした。

カードゲーム「Life with Social interest」について

このカードゲーム「Life with Social interest(略称:LwSi)」は、アドラー派シニアカウンセラーの方と、医学博士・公認心理師の方が共同で開発された、アドラー心理学の共同体感覚を体感できるゲームである。
詳細は、以下URLをご覧いただきたい。

カードゲーム「Life with Social interest」

感想

アドラー心理学で説かれている、目的論、共同体感覚や課題の分離といった様々な概念をボードゲーム「Life with Social interest」(以下、LwSi)を通じて体感することができた。
ここでは、ボードゲーム愛好家の一人として、ゲームシステムに着目しながら、アドラー心理学の要素が盛り込まれていると感じられた点について感想を共有したい。

目的論

LwSiは、「チーム仲間全員で最終課題である"終わりのことば"を唱えること」をゲームクリアの目的とする、制限時間内に達成を目指す協力型ゲームである。
ゲーム内で、各プレイヤーは魔法使いとなり、修行先の人間界の困りごとを解決し、そこで得た学び(魔法の本)を通じてさらに多くの困りごとを解決することを繰り返していく。
ただし、ゴールクリアの目的を意識せずに、単に目の前にある課題解決を繰り返すだけでは際限なく現れてくる困りごとの山に焦燥感を感じる人もいるかもしれない。
その意味で、何のために行動しているかという目的を常に意識する、アドラー心理学が唱える目的論の概念が根底にあるように思われた。

共同体感覚

アドラー心理学において共同体感覚は、自己への執着を他者への関心(Social interest)に切り替えていくこととされる(岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社、2013年 p.181)。
本ゲームでは、自分の手札を見るだけでは不十分で、他者の手札や、困りごとのお題にも意識を配ることが求められる。
自分一人だけで完結して行えることは小さく、自他の区別を超えて、チーム全体のゴールに向けて各自が協力することでゲームの達成はより早くなる。

また、自分の手番で解決した困りごとから得た知識を、さらに他の人の手番に受け渡して役に立つこともでき、仕事の本質は、他者への貢献であるという概念が実感できる。

課題の分離

ゲーム内では、各プレイヤーの手番でやれることが複数あり、何を考えることに時間を使うかは各プレイヤーに委ねられている。
困りごとの解決のための情報は徐々に発散していき、色々なことを一人だけで考えようとするとタスクの海に溺れてしまいそうになる。
自分がどのような役割でチームに貢献するか、各自が自分の役割・課題に集中して、他のタスクは他者を信頼して任せるといった態度を貫くことでチーム全体でのクリアが加速する。

信じるという行為もまた、課題の分離なのです。

岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社、2013年 p.145

まさに、対人関係における課題の分離の感覚とその効用を体感できる。

所有でなく使用の心理学

手に入れたカードは、ただ単に持っているだけでは意味がないが、他の人に渡す、自身で困りごとを解決するために用いる、など様々な用途に利用することができる。アドラー心理学自体も、与えられたものをどう使うかを考えることが大事とされており、ゲーム内でも同じ概念が通底していると感じられた。
はじめのターンはほぼだれしも図書館での学びから始まり、学んだあとに困りごとが解決できるようになるという設定も面白い。ここでも、学んだだけでは意味がなく、人の役に立ってはじめて学びは解決するというエッセンスを感じられる。

ゲームの勝利者とは

最後に、このゲームの勝利条件とは何だろうか、改めて考えてみたい。

今回のワークショップでは、全2戦行い、第2戦目は2チーム間での対抗戦としてプレイした。
しかし、チーム間の競争や勝敗に本質的な意味はないだろう。

アドラー心理学でも、人生は他者との競争ではない対人関係のゴールは「共同体感覚」とされている。

・他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所」があると感じられることを、共同体感覚といいます。
(中略)
・そして共同体感覚とは、幸福なる対人関係のあり方を考える、もっとも重要な指標なのです。

岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』ダイヤモンド社、2013年 p.179-181

 筆者のチームでは、第1戦目で他方のチームが生み出していたノウハウを学び活かすことで、第2戦目ではゴール達成を早めることができた。
達成時間の短縮は、両チームを含めた全員の成果と言える。

チーム一丸となってゴールを達成した際に各自が貢献感を感じられたこと、
そして、両チーム合わせた会の参加者全員が共同体感覚を得て、また、このゲームで遊びたいと思えたことこそが、このゲームの真のゴールであり勝利ではないか。

以上