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ドン引きされた経験すらも糧となる

タイトルのシチュエーション、実は十数年前に地下鉄を利用してファッションデザイナーさんの事務所に型紙を運ぶというレアなアルバイトをしていた事がありまして。

文面だけ見ると、それはもう楽チン極まりない仕事内容に思えるじゃないですか。

これが実際にやってみるとですね・・・必ずこの時間内に届けなくてはならないという鉄の掟があったり、(当時コロナなどとは無縁だった事もあり)どんなに体調が悪かろうと、雨が降ろうと雪が積もろうとどんな手を尽くしてでもお届けしなくてはならないのです。

まあ、当たり前なんですけどね。
分かります、どんな仕事でもそうですよね。
そう、仕事なんだからやって当然。

少しだけ仕事に慣れてきたある日、東京に大型台風が直撃したんです。
ええ、もちろん出勤しましたよ。
会社のデスクには完成した型紙が山積み、いつもと変わらない風景。
いつもと違うのは天候だけ。

さあ、暴風雨の中ミッション遂行です。
公共交通機関の中はなんてことありません。
問題はそこから地図を見て徒歩で向かう道中。

分厚めの段ボールのような素材で型紙を包んで脇に抱えて持って行くのですが、横殴りの雨でずぶ濡れになりそうなんですよね。
なんなら途中で傘も吹き飛ばされて型紙もグショグショなんですよ、命と言っても差し支えない型紙も。
顔も体もシャワーを浴びているかの如く、もしくはプールで泳いだ後かのような、見た瞬間それと分かる超ウエッティな状態。

肝心の地図も何が何だかよく分からない紙切れに変貌してしまい、それでも黒い線とインクの滲みを頼りに歯を食いしばりながら事務所に到着。

忘れもしません、デザイナーさんの助手らしき女性スタッフさんが受け取りに入り口に出てこられ、僕を見た時の表情。
タイトル画像をもっとずっとひきつらせたような顔でしたね。

そんな訳の分からないバイト経験、いったい何の役に立つんだと思われるかもしれません。
これが俳優業では別な感情を表現する際のアウトプットとして使えたりするんです。
「いや、おまえウソやろ・・・」みたいな、そういう表情や情動を求められる事があるんですね。
どんな状況でどんな心情のどんな役を演じる事になるか分かりません、それならインプットが多いほど良い。
後は記憶の糸を辿って引っ張り出して役に当てはめて表現するだけです。
というわけで、僕はこれまでの人間観察、人生経験、全てを総動員して役を演じています。

Life is beautiful.

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