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舞台「ロマンス」(振り返り)

2024/09/28~09/30 舞台「ロマンス」の上演でした。
初の”つかこうへい”作品で、長台詞や早いテンポについていけるか不安でしたが、無事に全ての公演を終えることが出来ました。
舞台の告知もせずに振り返りのみの投稿になってしまいましたが、オファーを頂いたころから振り返ってみようと思います。

■オファー

今年6月の終わりにGフォースの後藤さんから連絡を頂きました。
これまで”つかこうへい”作品の「幕末純情伝」や「熱海殺人事件」なんか観てきたけど、そこに出ている役者さんは実力者ばかり。私なんかが演じられる作品じゃないって、ビビりました。
でも、この先、歳とともに衰えていく気力・体力・記憶力を考えると、今しかないと腹をくくりました。と言っても「ロマンス」がどんな作品なのか、どんな役があるのか分からないので、まずは台本を読ませていただいて演じてみたい役を指定させていただくことにしました。

■台本を読んで演じる役を決める

7月に入って稽古場まで台本を受け取りに行きました。ぶ厚い台本に台詞がびっしり書かれてました。その台本を手渡してくれた後藤さんはニコニコしてて楽しそうだった。「あぁ、この人は本当に”つかこうへい”作品がお好きなんだなぁ」って思った。
帰宅しながら電車の中で台本を読み始めると、ん---…。
自分の好きじゃないコメディじゃん?って正直思った。でも読み進めていくと、すぐにそうじゃないって気が付いて作品にのめりこんで行った。
読み終えた直後、と言うか、読み終える前に「この役をやってみたい!」と思ったのが「金髪グッチ先生」でした。
(台本中には「先生」としか役名が書かれていない)
後藤さんに「金髪グッチ先生ならやってみたいです」と連絡。

■台詞を覚えはじめた

8月には舞台「氷雪の門」の稽古や本番が控えていたし、「氷雪の門」の千秋楽の2日後から「ロマンス」の稽古が始まるスケジュールだったので、「氷雪の門」の稽古が始まる前から台詞を覚え始めました。
金髪グッチ先生の出番は、主に前半と中盤と後半に少し。特に前半と中盤はそれぞれ10数ページの2人芝居で、こんなに沢山の台詞を覚えたことも演じたことも無かったので「本当にやれるのか?」と不安しかありませんでした。
舞台「氷雪の門」の稽古も始まり、そして本番を迎えたころに、やっと前半部分の台詞をなんとなく覚えた。中盤は読み上げアプリで聞き流す程度だったので間に合うのか焦った。
「氷雪の門」の共演者に「代わってくれない?」と何度か冗談っぽく言ったけど、内心、冗談ではなかった笑。

■役作り

主人公のひとり”青木シゲル”を愛し、シゲルをオリンピックで優勝させるのが目標だった。先生としてだけでなく、女性(オカマ)として。
オカマを演じることに抵抗は無かった。でも、どうすればオカマになれるのか全く分からなかった。
そこで相談に乗ってもらったのがGフォースの”いしだゆうすけ”さん。彼(彼女)は真正のオカマちゃん。色んな話を聞いた。いつから自分が男ではないと気が付いたのか、それを隠して生活していた時期、カミングアウトした時期、それからの生活など。なるほど、体は男として産まれてきたけれど心は普通の女性なんだって気が付いた。
それからは余り悩むことはなかった。普通に女性になれば良いのだから。
でも、心は女性になれたとしても、体の使い方が男もままではお芝居にならないので、女性の体の使い方(所作)を研究することに。研究と言っても特に何かしたわけではなくて、今まで観てきた舞台の女性を参考にイメージを作っていった。怒られちゃうかもしれないけど、そこで参考にさせていただいたのが大先輩でとても尊敬している女優の”吉永鈴(小野沢智子)”さん。
トコさんの和服姿を何度も拝見しているので、トコさんが見せてくれていた女性としての所作を真似ることが出来ました。

■読解力…がない

台詞、役作りが何となく固まって、何となく通せるようになった頃、共演者の”野々川護”さんに色々とアドバイスを頂くようになりました。ののさんは「氷雪の門」でも共演させて頂いた先輩で、”つかこうへい”作品に何度も出演されているベテラン俳優。コーチ(演技指導)としても的確にアドバイスをしてくれるのでいつも助けてもらってます。
その”ののさん”から「台本に書いてある」と何度も言われた。
でも、私が読む台本には”文字としては”書かれていないんです。「書いてある」と言うのは「台本の前後関係や役の心情や状況を考えれば、そのように読み取れる」という事。言われれば「なるほど~~」と思えることでも、言われないと全く気が付かない。
昔から本を読むのが好きじゃなかったし、頭の先から足の先まで理系だし。文字で書いてあることは理解できるけど、そうじゃないものは超苦手。
だから自分が読んで感じた方向に演じることは出来るけど、その方向が間違っていることが多々あった。その方向を修正してもらうことで仕上げていった。
たぶん、私の「読解力」は、この先も変わらないと思う笑(←開き直りw)。

■通し稽古

程なくして始まった通し稽古では、衣装の着替えや化粧もOn timeでやってみる。と言っても、自分で着物を着れないので共演者の”林優里”さんに着せてもらい、化粧も自分では時間がかかって間に合わないし下手なので”野々川護”さんいやってもらった。
着物を着てみて、まず困ったのは「動けない」こと。歩幅も狭くなるし、きつく紐で縛られている上半身も思うように動かせない。座った状態から立ち上がることさえ上手くできず、最初は立ち上がってもフラフラしていた。
本番直前になってようやくコツをつかんで何とかなった。
その次は所作。前にも書いたけど、女性として、和服を着た女性としての立ち居振る舞い(所作)は”吉永鈴(小野沢智子)”さんを参考にさせて頂きました。着物の衿や裾を直すしぐさ、手は広げずに指をそろえたり、手を合わせるしぐさや歩く姿など色々とトコさんを思い出してやってみた。本物(の女性としての演技)としてはダメなレベルだけど、オカマの女性として何とかなった気がする。(それでもまだまだだけど)
話が前後してしまうけど、着物を着る前の前半部分では、ジャージ姿で登場し、途中から上半身をさらけ出して「グッチグッチ」と鞭でぶたれる。本当にぶたれているけど、オモチャの鞭なので大して痛くない。でもシゲル”橋本達”くんの気持ちは十分伝わってくる。あのシーンが終わると汗だくだし、呼吸も限界。
その状態で着物を着せてもらうので、慣れるまでは呼吸が辛かった。手に扇風機を持ったまま着せてもらってた。着付けが終わるのとほぼ同時に”野々川護”さんが舞台から戻ってきて化粧をしてくださる。化粧が終わると、すぐに中盤のシーンが始まる。そんな感じで時間ギリギリだった。
着付けをしてくれた”林優里”さん、化粧をしてくれた”野々川護“さんには、改めてお礼を言わせてください。ありがとうございました。

■本番

あっという間に終わってしまった。
初日の本番前にゲネをやったけど、さすがに少し緊張した。稽古とは違う本番の舞台や照明、音響(スピーカーの位置)、舞台セットの裏通路や楽屋に慣れることで必死だった。
本番が始まれば「今までやってきたことをやるだけ」と思うんだけど、「まだ何かできる」と思っちゃうんだよね。千秋楽まで「次は何を試してみよう。何を直してみよう。」って思ってた。
途中いろいろ試してみたり後戻りしてみたけど、最後は「台詞を間違えたり嚙んでも良いから、感情全力でやる」と決めて千秋楽を迎えた。

■すべて終わった今、思うこと

”つかこうへい”作品の「ロマンス」を、金髪グッチ先生をやって良かった。
その一言に尽きます。
自分には大きなチャレンジだったけど、色々と成長させてくれた気がするし、自信になった。

座組も良かった。

(ここから先は自分が最も後輩だという立場を無視して思ったことを書きますね)
花村牛松役の”伊能佑之介”さんは若いのに凄い。きっと近い将来、手の届かないところまで昇っていく役者さんだと思う。謙虚さも◎。
青木シゲル役の”橋本達”さんも見事にシゲルを演じきった。今回の座組の中で一番話をしたと思う。親しみを持って話しかけてくれた優しい人。
人一倍プライドが高いことが彼の良いところだと思うので、そのプライドを上手くコントロールできるようになると、もっともっと素敵な役者さんになると思う。自分を大きく見せたい気持ちを抑えて、それを自分を成長させるために努力することに注げたらもっと凄くなると思うな。ずっと応援してるよ。
大石先生役の”野々川護”さんは、ご自分のお芝居以外に費やす時間の方が多かったのではないだろうか。稽古中も他の役者の相談に乗ったり、コーチをしてくれたり、本番中も私の化粧をしてくれたり。野々川さんが居たから成り立っていた。
百合子先生役の”林優里”さんは、稽古の序盤、紅一点でやりづらいかなぁと思ったけど、持ち前の明るい性格や人懐っこさで、男女の壁無く打ち解けた。ダンス・踊りは本物。お芝居の経験は少ないとのことで、毎日、共演者にどうしたら良いかって相談に行ってた。立派に百合子先生を演じてました。
サムライ長次郎”さんとは「氷雪の門2023」で共演させて頂いたので、今回で2度目でした。ご存じの方も多いと思いますが、本当に真面目な方。何をするにも全力。でもちょっと不器用なところがあって、そこが長次郎さんの愛される理由だと思いました。
平川七勢”さんは声優さんが本来の土俵。体を使ったお芝居の経験が少ないとのことでしたが、見事に演じられてました。見た目のカッコよさや可愛さは十分あるので、それをお芝居中は忘れて役として弾けられればもっと良くなると思うな。
いしだゆうすけ”さんは、唯一の本物のオネェさん。オカマのことを色々と教えてもらった。周りからもいろいろと言われたりしてお芝居はずいぶんと悩んで苦労してた。「自分のままを演じればいいんだよ。」とアドバイスを貰ってた。でも「自分を綺麗に見せたい」「カッコよく見せたい」気持ちが少し残ってたのかな。次の課題だね。
坂本翔太郎”さんは、自分の役割をちゃんとわかってて素晴らしい役者さんなんだと改めて思いました。お芝居だけではなく、準備や調整、その他諸々の雑用的なことも坂本さんがやって下さった。役者としても、人としても素敵な方でした。
内田裕康”さんは今回の座組の中でもベテランクラスのひとり。私との絡みは最初と最後のちょっとだけだったけれど、内田さんのおかげで安心して自分のお芝居に徹することが出来ました。物腰も低く丁寧にアドバイスをして下さって本当にありがとうございました。

■次のステップへ

今回の「ロマンス」は、大きなチャレンジだったし、予想以上に成長できたと思ってる。と言っても、まだまだ出来ないことの方が多いのもわかってる。
そんな自分が次のステップとして考えているのは「大劇場での舞台」。小劇場はお客さまとの距離が数メートルなので、役者のエネルギーをお客様に届けやすいし、お客様の反応を役者たちも受け取りやすく、それが舞台を作り上げていく素晴らしい環境なんですよね。それはそれで大好きなんだけど、自分がこの先、何年役者をやっていけるかを考えたら、やっぱり上を目指したいんだ。大きな舞台で、多くの人の前で演じたい。まだ実力不足だからとか、自信がないから、とか言ってる時間は自分には無いからね。
「やると決めた時にチャレンジする」それが自分の良いところ。
来年は大劇場の舞台に1つでも出られるようにオーディション頑張る。

と、その前に、年内はもう一つ小劇場で舞台があります。
舞台「そばに居るひと」
加藤英雄さんの新作、11月28日(木)~12月1日(日)にJOY JOYシアターにて

詳しくは別のnoteに書きますね。

舞台「ロマンス」2024
おわり

座組のみんな、応援してくださったお客さま、スタッフ、全ての方に感謝しております。ありがとうございました。

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