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ソーシャルビジネスの作り方 part1

はじめに ソーシャルビジネスの定義と限界

このブログではソーシャルビジネスの作り方をステップに分けて説明をする。(part1~3があり、このブログはpart1にあたります)

ソーシャルビジネスの定義は様々である。
ノーベル平和賞を獲得したグラミン銀行設立者のムハマド・ユヌス氏は「社会問題の解決を目的とし、持続可能な手段としてビジネスを行い、得た利益を社員の福利厚生や自社への再投資にまわす「損失なし配当なしの会社」」とし、利潤最大化を図り、株主への配当を目的とする株式会社と一線を画す定義をしている。
基本的にこの定義で問題はないと感じるが、私は同時にこの定義だとソーシャルビジネスの門を狭めているとも感じている。ユヌシ氏のノーベル平和賞取得は2006年だが、2015年以降はSDGsの採択により、先進国の営利企業も含め社会課題解決の重要なプレイヤーとして位置づけられ、例え営利企業であっても、営利活動の中の一事業として社会課題解決を図る事業に当たるものは見られ、これからも生まれると思う。

ソーシャルビジネスの具体例としては、上記の低利子で貧困層に貸付を行うグラミン銀行や、日本だとバングラデシュの女性に雇用創出を行ったアパレル製品を作るマザーハウスなどが有名である。

https://www.mother-house.jp/

また、ボーダレスジャパンでは、ソーシャルビジネス事業だけの会社であり、立ち上がった事業会社が新たな事業会社の設立支援を行うといったエコシステムが形成されている。
https://www.borderless-japan.com/

その他にも、企業の社会課題解決の貢献を称え、外務省のJapan SDGs Action Platformで企業、非営利組織に対してアワード授与を行っている。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html


今回私がブログを書いている理由は、ビジネスモデルの構築方法に関しての書籍は多い中で、ソーシャルビジネス立ち上げの方法論が体系立っていないと感じたためである。

しかし、強調しておきたいことは、私は方法論自体に興味があるわけでは決してない。
社会課題の解決の一つの手段としてソーシャルビジネスがあり、あくまで課題解決に役立つ可能性を持っているため、今回このようにまとめている。
ソーシャルビジネスは手段の一つでしかないため、絶対に神格化してはならない。
はっきり言えばソーシャルビジネスはスケール性(広がり)、持続可能性がある一方で、寄付金や助成金で解決するような深刻な課題の解決へのアプローチはほぼ不可能だと断言できる。
こういうと、アダム・スミスの(神の)見えざる手を引用し、「個々人が自身の利益を追求し、経済は自由にさえしていれば、社会は豊かになる」と言う狂った市場原理主義者が現れる。しかし、アダム・スミスの「国富論」の中でも市場に任せるべきである一方、経済が成り立っていない社会においては政府の介入が必要であると明言がされている。

具体例を挙げてみよう。私はNPO法人Stand with Syria Japanで役員を務めている。
https://standwithsyriajp.com/


シリア紛争によって抑圧された人々に寄り添うことを目的とした団体だが、対象によって寄付のアプローチと、ソーシャルビジネスのアプローチを切り分けている。
寄付のアプローチが必要な例としては、例えば明らかに働けない難民となった人たち。
突如の紛争で、愛する家を追われ、空爆に怯え、友人の死を目にしながら、飢えをしのいでお腹がぺっちゃんこになりながら死に物狂いで、極悪なブローカーに騙されながらも、外国へと逃れる。愛する人を失い、故郷も希望も失ったような、私たちでは想像もできないような地獄を生きている人たちにビジネスで解決しましょう!!なんて頭がお花畑にもほどがある。
ただ一方、紛争から長い年月が経ち再建の時期に差し掛かるフェーズ(時間軸)や、地域によっては(地域軸)、ソーシャルビジネスのような持続性のあるアプローチの方が有効だとも感じている。
長くなったが、つまりはソーシャルビジネスがいつも正しいとは限らないということ。その手法に捉われるのではなく、あくまで目的が課題解決に目を向けなくてはならない。こうした方法論をまとめる作業が必要だと感じる一方、この今助けを必要としている人を思うと、胸がいっぱいになる。

1章 ソーシャルビジネスが必要な理由

ソーシャルビジネス立ち上げの方法論を話す前にもう一つ前座に付き合って頂きたい。
ソーシャルビジネスに取り掛かる前に、なぜソーシャルビジネスが必要なのか、である。もう少し広く捉えると、営利企業がなぜSDGsに取り組むかである。
感情論でやりたいはもちろんのこと、対外的な説明を要する場合、特に営利企業の中の一事業として行う場合の理由付けについて話したい。
結論、一番大きな理由は近年のESG投資額の増大に対応するためである。
ESGとは、「財務情報」に対比して「非財務情報」と呼ばれる。(非財務の情報開示基準は多くあるが、経産省が作成した「価値協創ガイダンス」などがある)
ESGの英字が意味するところは、
「E」(Environment:環境):地球温暖化対策など
「S」(Social:社会):働き方改革、女性活躍など
「G」(Governance:企業統治):取締役会の役割など
である。

ESG投資増大の契機は2006年の「国連責任投資原則」(PRI)という当時のコフィ―・アナン国連事務総長の呼びかけによる自主的な投資原則である。
特に日本でESG投資が流行ったきっかけとしては、国内でも大手の機関投資家である「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が上記PRIに署名したからである。ESGを重要視した企業こそ社会的評価を受け、中長期的に成長を遂げると判断したのである。

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特に日本のESG投資の伸び率は驚異的であり、2104-1016年の伸び率は6692%である。(米国は33%、欧州は12%)
元々日本が出遅れたいたが故の伸び率だが、近年ESGが重要視されていることがよくわかる。
ESG重要視をすることで、投資に限らず、銀行からの融資においても好条件が提示されるなどのメリットもある。
加えて他にメリットとしては、元農林省、その後各種省庁を渡った後、伊藤園でSDGsをけん引し、現在CSR/SDGsコンサルタントとして活躍をする笹谷氏著の「Q&A SDGs経営」によると、下記が挙げられる。
・ビジネスチャンスやリスクを見極められる
・対外価値向上
・関係者と関係強化
・社会課題理解による安定的市場獲得
・NGO/NPOとの目的共有
・有能な人材確保
とし、特に人材確保が大きなメリットとしている。(所謂ミレニアル世代, Z世代の獲得)


2章 ソーシャルビジネスの作り方 全体像

いよいよこのブログの本題に入る。
ソーシャルビジネスの作り方は、通常のビジネスより難易度と手間が増えるが、8ステップで整理することができると考える。私がそれらを独自でまとめたものが以下の図である。

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通常のビジネスと異なるステップは、STEP1,2,3,5,8である。逆にSTEP4,6,7は通常のビジネスで必須の内容なので、ソーシャルビジネスに生かすつもりはない読者もきっと役に立つと思う。

3章 STEP1:課題領域の特定

まずは自分たちが取り組む社会課題が、どういった位置づけになるのかを定義する。この作業は必須ではないが、社内・社外向けに自身が取り組む課題が何かを説明する際には役に立つ。
ではどのように位置づけるかと考えた時に、SDGsのゴールに紐づけるで事足りるのだが、逆にESGや、CSRの考えの基となるISO26000(社会的責任に関する手引)に知識のある人だとそういったものとの関係性・整合性に頭を悩ます。
ISO26000とは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)が発行した企業の社会的責任に関する羅針盤である。これはあくまで自主的な手引きとして使用され、世界中でデファクトスタンダードとして扱われている。

これは元伊藤園の笹谷氏がまとめたESGとISOとSDGsの関係性をまとめたものである。

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https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sdgs_esg/001.html
(経産省 第1回 SDGs経営/ESG投資研究会の資料5 事務局説明資料p22でも採用され、記載されている。)
左から2行目の7つの中核主題がISO26000を表す。そして、自社の取り組み該当する箇所を●(直接関連)と〇(間接関連)で表している。
このマトリックスは伊藤園の統合報告書(企業の独自の強みである知的資産(定性的データ)と財務データ(定量的データ)の両方の観点から、自社の独自の強みや経営ビジョン、今後の事業展開とその見通しについてまとめた報告書)でも活用されている。
https://www.itoen.co.jp/files/user/pdf/company/corporatebook/backnumber/2019/itoen_report_all_2019.pdf

では、マトリックスを理解したうえで、自社で行う事業はどのように決めれば良いのだろうか。
私は主に自社の「シーズ」×自身の「想い」だと考える。
シーズとは種を表し、会社の持つ技術や人材、能力、設備等の強みを表し、ニーズと対比でも使われる。
例えばシーズドリブンの考えであれば、自社の強みからどういったサービス・製品を作ろうかと考える。
ニーズドリブンの考えであれば、自社の強みは一旦置いておき、世の中で求められているものはなんだろうと思考する。
結論両方必要だが、これだとただのビジネスである。

そこで大事なのが取り組む自身の想いだと思う。
人間とは不思議なもので常に合理的な判断をして、継続して努力ができる人はいない。(合理的でないからこそ、行動経済学など心理学と経済学を掛け合わせて非合理的な行動を説明しようと試みが行われ、はたまた文化人類学では近代的な自身の効用を最大化する合理的行動を取らない理由を参与観察を通じて文化とコンテクストから読み解くのである。)
何が言いたいかというと、人間は合理的にコンスタントな努力は相当難しいのだから、生半可な覚悟で社会課題を設定するのではなく、自身が一生を費やしてでも解決したい課題を設定すべきだということである。中途半端に課題を設定してもきっと難易度の高いソーシャルビジネスを最後までやりきれないのだと思う。
それが最終的に結果にも繋がるし、加えて自身が問題意識を抱えていることが人を動かす。超有名なtedの「ゴールデンサークル理論」にある通り、人間はビジョンに動かされるのである。
https://www.rarejob.com/englishlab/column/20190525/
このピッチではアップルを例に説明がされる。
ダメなアップルのプレゼンだと、「私たちは素晴らしいPCを作っています。ファッショナブルでユーザーフレンドリーです。お一つどうですか?」という。
しかし、本当のアップルのプレゼンは違う。why?から説明をする。
「私たちは世界を変えられると信じています。世界を変えようと美しく、機能性に優れた製品を世に出そうと努力しているうちにこのような製品が出来上がりました。お一つどうですか?」
特にNPOの人間はこれが意外にも苦手な気がする。私自身、自分の抱える課題は他の人も当たり前に持っていると勘違いしてしまっていたのだと思う。
NPOの環境にいると社会課題に敏感な人が当然多く、例えアフリカのニッチな国名を出しても、ああ、あそこね、と話が盛り上がる。しかし、実際はそうではない。当たり前だが、誰もが自身と同じ課題感を抱えているのではない。だからこそ、ビジョンをしっかり言語化する作業が必要なのである。

もう一つ課題設定の参考になる話をしたい。
「イシューからはじめよ」という脳神経科学ph.D・マッキンゼーのコンサルとしてのバックグラウンドを持つ安宅氏の名著は読んだことがあるだろうか。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%82%88%E2%80%95%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E7%94%A3%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AB%E3%81%AA%E6%9C%AC%E8%B3%AA%E3%80%8D-%E5%AE%89%E5%AE%85%E5%92%8C%E4%BA%BA/dp/4862760856

この本の冒頭では、まずは解くべきイシューを見極めることが大事だと言っている。この本でいうイシューとは、研究でいうRQ(リサーチクエスチョン)や、ビジネスでいうリサーチ項目にあたるが、私は社会課題も同じだと思う。
下記図はイシュー度と解の質の分布図のイメージをこの本を基に私が作成した。

イシュー度と解の質の分布図

「イシュー度」とは解くべき問題かという度合である。研究でいえば学術的意義・社会的意義があるかどうかであり、ソーシャルビジネスであればどれだけ人の心に響くかであると思う。
「解の質」とは、質の高い解答を出せるかという度合である。研究でいえば、例えば解の質を担保できないものとしては、一昔前の数学の最難関のフェルマーの最終定理や、あとはめちゃくちゃ危ない紛争地でないと証言が取れないような紛争研究や、行くことのできない地域を対象とした地質学がある。ソーシャルビジネスであれば、はじめにで書いたような、ビジネスでは到底救うことのできないあまりにも悲惨な難民などが挙げられると思う。
この図で示していることは、本当に解くべきイシューは右上の第一象限にあるものであり、100個あるイシューのうち1つであるということである。著者はこれを示し、本当に解くべきイシューを正しく特定することが、生産性をぐっと高めると言っている。
これはソーシャルビジネスにも応用が利く。まずはイシュー度を重要視し、右上の第一象限、もしくは右下の第四象限にあたるイシューを見つける。その後、解の質を高める方法(ビジネスなのか寄付なのか)を検討すれば良い。

さて、こうした自身の感情をもとに課題を設定しても、共感が得られるかの問題は残る。
当然日本人にとって、北朝鮮の問題の方が、シリアより関心が高い。(例えシリア政府が北朝鮮政府の何百倍も非人道的行為を行なっていようと)
では、マイナーな課題を諦めるべきかというと答えはNoである。日本といえど必ずどこかに共感してくれる仲間はいるはずだし、外国に目を向けても良いと思う。
また、例えどんなに共感者が少なくても(NPO用語でいえば寄付市場が小さい)としても飛び込むべきだ。
ビジネスとは異なり市場の有無でその課題領域への参入判断はしない。むしろNPOのミッションはそういった関心のない層に対して情報を発信して、その市場を作っていくことこそがミッションだからであり、ソーシャルビジネスも同じである。日本人で女性初の世界銀行地域担当副総裁に選出された西水美恵子氏の「国を作るという仕事」で書かれた言葉を借りれば、「情熱は飛び火する」のである。今まで全く興味のない人が、ハッとし、自身の中でカチッとスイッチが入る瞬間を何度も見てきたし、私もその一人である。
https://www.amazon.co.jp/%E5%9B%BD%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E4%BB%95%E4%BA%8B-%E8%A5%BF%E6%B0%B4-%E7%BE%8E%E6%81%B5%E5%AD%90/dp/4862760546

4章 STEP2:ボトルネック特定

課題を設定すると、次はボトルネックの特定が必要になる。
ボトルネックとは、全体に影響するレベルの問題要因で最も問題視される箇所のことであり、コンサルではよく使われる用語である。
一つ例を出そう。
いつもあなたは家を出て学校に向かおうとすると、家の前を通り過ぎるおばあちゃんが倒れてしまっている。それをみる度にあなたは救急車を呼びおばあちゃんを病院へ送る。それは何度も何度も繰り返され、あなたも何度も何度も救急車を呼ぶ。
ここで大切なのはボトルネックの特定である。毎度おばあちゃんが倒れているのは家の前の道がツルツルしていて、転びやすい道なのかもしれない。本当にそれが根本的原因であるのであれば、毎度救急車を呼ぶのではなく、道をそもそも作り変える必要がある。

この例は簡単な例だが、所謂途上国での社会問題は複雑な要因が絡まっており、それを解きほぐすことは簡単ではない。
そうした複雑な要因を解くために様々な学問分野からのアプローチが必要になる。
例えば、東京大学大学院国際協力学専攻では、様々な学問分野からのアプローチである額融合を唱えている。以下引用する。
「(略) 例えば、途上国において新しい農業技術の普及がどうして進まないのかという問題を取り上げてみましょう。この問題に対処するためには、まず農業技術に関する農学的な知識が必要ですし、その上で、農民の意思決定にかかわる理論的考察をミクロ経済学やゲーム理論などをベースに行っていかなければなりません。さらに、その理論的考察を立証するために、実際にデータを集めて分析することが必要ですが、その際には統計学/計量経済学などの定量分析のためのツール、もしくは社会学・文化人類学的な定性分析のためのツールが必要です。分析のツールとして、自然科学を基盤とした社会ネットワーク論や空間情報学で利用されている手法をフルに活用すれば、さらに深い分析をすることが可能となります。」
http://inter.k.u-tokyo.ac.jp/about-us/overview/

ボトルネックの特定の1つの手段はこうした研究機関の研究結果を活用することである。
他にも他のソーシャルビジネスのアプローチを参考にすることも考えられる。(特に海外で行われているが日本では行われていないものなどは散見される)
しかし、こうした研究結果や事例がない場合にどうしたらいいだろうか。当然自身で考えるしかない。ただ、こうしたボトルネック特定の方法論は既に確立がされている。それがJICAプロジェクトでも活用されている、開発援助プロジェクトの立案・運営・管理をするPCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)手法である。
このPCM手法の中の「立案」の部分にプロジェクトを実行するうえでのボトルネック特定に方法論が記されている。
http://www.pcmtokyo.org/modules/tinyd2/content/lib/PCM-I%20%28PP+I%29%20050306.pdf

問題分析

これはPCMでは「目的分析」と呼ばれ、ビジネスでは、ロジックツリーと呼ばれるものである。ピラミッドに解決したい中心問題を据えて(これが抽象的過ぎても分析が膨大になり、具体的過ぎてもそのうえに繋がるその他の要因を削ぎ落としてしまうから難しい...)why?で深堀をしていく。
そして、深堀をしていくことで中心問題に繋がっていたボトルネックが見つかり、そこを対象にしたプロジェクトを立案する。
PCM手法におけるプロジェクト立案では、これ以外にもステークホルダーを分析する「関係者分析」や、目的分析を裏返して、中心の目的達成するためにHow?で深堀をする「目的分析」があるため、詳しくはPCM手法を実際に見ると良い。

5章 STEP3:解決の方針決定

ボトルネックを特定したら、次はそのボトルネックを解消するための事業を考える必要がある。
事業の方針を考えるにあたり、元デロイトトーマツコンサルティングCSR・SDGS推進室長、現SDGsパートナーズCEOの田瀬氏著「SDGs思考」によると、以下の3つの思考法が有効である。

3つの思考法

まず1つ目の、「時間的逆算思考」は、未来のある時点での実現すべき事柄を決定し、その達成のためになすべきことを導く思考方法である。そして、その目標を達成するために必要な施策を「バックキャスティング」で考えるというもである。例えば、ジョン・F・ケネディ元大統領の掲げたアポロ計画が挙げられる。
2つ目の「論理的逆算思考」は、顕在化している問題に対し、本来あるべき姿から演繹的に解決方法を考え、イノベーションを導き出す思考方法である。本体あるべき姿を考えるにあたり、特定の問題解決ではなくその問題が発生しない理想の状態を「デザイン思考」によって定義する。筆者はイノベーションを2つに分けている。「帰納的イノベーション」とは、対症療法的行為であり、「演繹的イノベーション」は問題の根本原因に応えるものとしている。例えば、途上国で水を汲むために毎日こどもが何往復も何時間もかけて水をタンクにいれて頭に乗せて運んでいる問題に対し、転がせるタンクの発明により、往復回数を減らして、首への負担を減らすアプローチがあるが、一定の効果は認めるものの、これは場当たり的な「帰納的イノベーション」としている。一方、「演繹的イノベーション」のアプローチであれば、そもそも水運びが必要ないような「ありたい姿」を思い描き、そのために空中の湿度から飲料水を抽出する製品の発明を行う。
3つ目のリンケージ思考は、様々な目標が相互に連結し(リンケージ)結びついているため、「レバレッジ・ポイント」と呼ばれる複数の因子に影響を与える梃子の力点を発見し、そこから正の連鎖反応を創り出し、目標を達成する思考方法である。例えば、WFPは途上国の村全体の状況を改善するために、学校給食提供プログラムを実施しそこからの正の連鎖反応を狙っている。
給食提供 →子供が学校へ →教育を受ける →栄養も改善 →よりよい就業機会 →給食材料の購入による地域経済活性化 →格差縮小 →最終的な貧困削減といったストーリである。


今回はソーシャルビジネス立案のためのSTEP1~3を説明した。
次回のブログではSTEP4~6の事業計画の作り方の部分を説明する。

連絡先:
山澤
shuichi.y@standwithsyriajp.com

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