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AIを施主にした実務シミュレーターを学校で導入してほしい。

「導入してほしい」と書きましたが、そんなシミュレーターはありません。
つくれと言われるなら監修でもプロジェクトリーダーにでもなるから、誰か資金を出してつくって欲しいところです。

なぜなら、新人を育てるのには非常〜に時間がかかるからです。

またアトリエ系事務所に入社を希望する人は、基本的に独立を前提にした意欲のある人が多く、非常〜に時間をかけて育てたとしても、数年したらいなくなる。

だから、教育コストを回収する期間が短く、ただでさえ人が少ない会社なのでコスト効率がすこぶる悪いという事情があります。

だからといって「俺の背中を見て育て!」と言って実際は各人の意欲や性質に依存した放任教育にすると、担当者ごとのクオリティのばらつきが大きくなる。

そして「ハズレ」を引いた施主がおおいに困ってしまうことになります。
施主からしたらたまったもんじゃない。

世の中には「先生」と呼ばれて自分が偉いと勘違いして、教育をおそろかにして施主に迷惑をかける人がいる、という話をちらほら耳にします。

いや、自分が100%スタッフに同一クオリティを授けられているかと問われれば、そうではないので、自戒を込めての噂話ですが、そうはしたくないなと常々思っています。

しかし、アトリエ系設計事務所の教育には、なぜそんなに時間がかかるのでしょうか?

アトリエ系設計事務所の教育に時間がかかる理由


自分が携わる仕事だからというバイアスがかかっているのかもしれませんが、「アトリエ系」(だいたいの場合は個人名を冠していて、人数が少ない会社)事務所の新入社員が、一人前に仕事できるようになるまでにかかる時間は、数多ある業種の中ではトップクラスなのではないかと思うのです。

もちろん全ての仕事のことを調べたわけではないし、他業種で働いたことがないので、実際のところはわかりません。

しかし、社会人になり経営者になり、それなりに色々見聞きし体験した身で見回してみると、習得しなければならない事柄がかなり多いことに気付かされます。

覚えることが多いのは「そういう職種だから」で片付くところもありますが、一番大きな要因は「小さな設計事務所であるから」だと感じています。。

複数人で分業か一人で全部やるか


答えはこれかなと。

小さな設計事務所は、基本的に一人の担当者が一つの物件にかかる仕事を全部引き受けます。
「アトリエ系」と言われる設計事務所はほとんどこのやり方だと思います。

コンセプトメイクや基本構想(やスケッチ)をボスがやって、それ以外をスタッフが担当するようなことも多いようですが、これは分業のうちには入らないと思います。

設計の仕事を分解してみると以下のような作業があります。

デザインコンセプトなどブランディングに関わる企画作業
業種に関わる許認可関連の作業(例:旅館業の営業許可、建築確認申請)
概算コスト算定や家具などの仕入れ販売に関わるお金に関する作業
パース作成
デザインおよび設計図作成
プロジェクト全体のスケジュール管理などいわゆるプロジェクトマネジメント
工事監理

これら作業を一人でやるのがスタンダードです。
もちろん部分的に外注をすることもありますし、規模によっては複数人で手分けするのですが、基本的に一気通貫、一人で担当します。

一方で社員数が数十人以上の規模のいわゆる「組織設計事務所」になると、これらの作業を各セクションで分担して進めることが多いようです。

新人のころは先輩についてデザインや設計、工事監理を学び、管理職になってくるとプロジェクトマネジメントを任される、といった流れでしょうか。
もちろん会社によって違いはあるでしょうけど。

限りなく現実に近いシミュレーターでプロになる


という訳で、小さなデザイン事務所を経営する身としては、学生さんにはプロになる前にできる限り実務に慣れた状態になっていて欲しいと思ってしまう訳です。

F1などの自動車レースのプロになる人たちが、実際のコースに慣れるために、非常に精密なシミュレーターで練習をして、そのままリアルなレースを走れてしまうように、設計の世界でもそんなのがあると面白い。

AIの性能がどんどん上がっている現在、法律やコスト、計画に対する評価などを習得したバーチャルプロジェクトを、将来独立を目指す学生が履修できるようになると助かるなぁ。

実際には難しいだろうから、こうやってコツコツブログで新人さん向けのTIPSを書き溜めていっていますが、これもいつ完成するのやら。

時間がかかります。だれか一緒に手分けして書いて、研修事業やりませんか?(笑)

それではまた来週。

設計事務所の新人さんに向けた記事を集めたマガジンはこちら。少しずつコンテンツが増えます。


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