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「Stand Alone Complex」 自分自身を愛したい (Prototype Human解説vol.2)

テーマ、歌詞について

「置かれた場所で咲きなさい」なんて言葉が美談みたいに語られることがあるけれど、置かれた場所が砂漠なら、水のあるオアシスを求めて移動するべきだ。それを逃げだとは思わない。

じゃあどこに向かえばいいのか、というのが難しい。
何となく満たされてないような飢えは感じるけれど、何が欲しいのか自分でもよく分からない、ということがままある。
スマホ一つで何でも注文できる時代でも、欲しいものが分からなければ置き配もしてくれない。

僕は他人の顔を気にしいで、例えば人と話した帰り道、
「傷つけてしまったんじゃないか」
「もっとああ言っておけばよかった」
と一人反省会をする。

自分に自信がある人とか、何か一つブレない芯みたいなものがある人はそんなことはないんじゃないだろうか、と想像してみる。
そうだ、僕が欲しいのは、具体的な物とかではなく、
「これが自分だ」
「自分はこれさえあれば生きていける」
というような、自分にとっての確信、柱になるような「何か」だ。

たくさんいいねがつくことで、他者から好意を向けられることで、職場や学校などで実績を認められることで、自己肯定感が高まるのは勿論だけど、逆にそれがないと自己を肯定できないのは物凄く不健全だと思う。

ノウルシの過去曲「None But Air」では、自分の美しいと思うものは自分が知っていればいい、という他者と完全には分かり合えない前提で自分だけの美学や聖域について歌った。
僕の歌には根底に「孤独」とか「分かり合えなさ」みたいなものが横たわっているものが多いけど、今回もそうだと思う。

今回は、他人とはどうせ分かり合えないから、とネガティブになるのではなく、だからこそ自分だけは自分のことをきちんと理解して認めてあげなくちゃいけない、自分が愛せるような自分になりたいというとてもポジティブな願いを込めた。
他人の顔色や言動を気にして振り回されるのではなくて、自分を強く持ちたい。僕はそうなりたい。
自分自身をエンパワメントするような曲。

タイトル、モチーフについて

タイトルのStand Alone Complexはアニメ「攻殻機動隊」のサブタイトル。
作中の意味合いをざっくり今の世の中に当てはまれば、インターネットや今日のSNSなどによって情報の並列化(みんなが同じ情報を得ること)が起こり、誰に組織されたわけでも指示されたわけでもない独立した個人(Stand Alone)なのに、それぞれが共感・感応して一見組織だって見える(Complex)同じような行動を取ることをそう呼ぶ。

X(Twitter)で何か隙を見せた人に大勢が集って袋叩きにして炎上したり、多くの人が否定的に呟いてるから自分もいつの間にかその人のことを否定的に見るようになっていたり、こういう言動をすると炎上しかねないから、こういう呟きがいいねを稼ぎやすいから、というような刷り込みが知らず知らずのうちに自分の行動や思考を形作っていたり。
先のDoublethinkで「自分の頭で考えること」に焦点を当てたのにも通ずるが、とにかく今僕らは自分自身で思考する段階をスキップして、外側からの影響にインスタントに反応しすぎだし、他人の顔色を伺いすぎていると思う。

Stand Alone Complexという語の本来の意味合いと、自分の足で立つことという今回の歌のテーマとを掛け合わせてこの曲名とした。


楽曲の方向性、サウンドについて

Doublethinkに再着手して最終的な方針が見えてきたタイミングで、物語の導入にあたるDoublethinkからシームレスに繋がるリード曲を作りたいという想いが芽生えた。
Doublehink完成前に着手し同時進行で進める。

当時宇多田ヒカルのPINK BLOODに打ちのめされていたり、ビート感強めのエレクトロやダンスミュージックを色々聴き漁っていたこともあり、Doublethink同様ビート感強め、ミニマルなフレーズで展開していく楽曲のイメージで突き進む。
今回は最初からSFをモチーフにしたフルアルバムを作るというコンセプトありきで着手していて、その中でもリード曲にしたいという思いがあったため、とにかく強度の強いものにしたかった。
この場合の強度は、「メロのキャッチーさ」と「革新性」と定義。

世の中の、過去のどんな作品とも連続性のない完全に「オリジナル」な作品を作ることはほぼ不可能だと思う。
でも、誰か一人のアーティストから影響を受けて書くと二番煎じになるけれど、十人、百人、千人から影響を受けて作ったらその配合のバランスにオリジナリティが生まれる。と思う。

また、歌詞の上でのモチーフとなったアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」のOP曲 Inner Universeで鳴っているグリッチノイズを参考にイントロや間奏のノイズの音色を作り、
ED曲 lithium flowerのギターリフを参考にラスサビのリフをアレンジするなど、たぶん誰にも気づかれないような細やかな参照を上手く盛り込めたのも個人的に満足している。

20211209デモ完成


Stand Alone Complexたくさん聴いてね


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