たすけてー、ここから出してー
最近、奇妙な夢を見るようになった。
(たすけてー、ここから出してー)
眠りにつくと、そんなささやきで目を覚ます。おかげですっかり寝不足気味だ。そして寝不足が続いたせいか、風邪まで引いてしまった。なんだか鼻の奥が痛い。
「お待たせ」
待ち合わせ場所にやって来たミキは、ハイネックフレアのトップスにワイドパンツ。秋めいたガーリーな装い。寝不足のこともすっかり吹き飛び、俺はこの子と結婚するのかな…そんなことを考え始めたその時だった。
「キャー!」
叫び声。男性が倒れ苦しむ様子を、人々が遠巻きに眺めている。
…奇顔病だ。
最近話題の奇病。罹患をすると人の顔のような瘤がいくつもできて、熱と激痛に苛まされる。もがき苦しむ男性の左頬には、人面状の不気味な瘤が盛りあがっていた。
放っておくわけにはいかない。俺は男性に駆け寄った。
「ミキ、救急車を…」
…その時、確かに聞いたんだ。
たすけてー、ここから出してー
瘤が、ささやいていた。
【「ミキ」に続く】
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