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第68話「繋ぎ紡がれる力」 #死闘ジュクゴニア

目次】【キャラクター名鑑【総集編目次】
前回
 ハガネが叫んだ! 「俺は!」フシトに向けて拳を突きつける! ミヤビも同時に叫んでいた。「私は!」フシトに向けて剣をかざす! 二人の声が重なるように続いた。「お前に!」「貴様に!」

「「決して屈しはしない!」」

 フシトは怒りに表情を変えた。「汝ら……不敬であるッ!」
 そして舞台は……光が世界を貫いた、あの時点へと戻るッ!

 それは巨大な光の柱だった。それは世界を貫く強大なる力であった! それは想像を絶する質量と光と熱を放射し、渦巻き、吹き荒れていた!

「「ぬぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉおッ!」」

 天を、大地を、咆哮が揺るがす。渦巻く光によってジンヤが真っ二つに割れる。

「うおわわお! これはヤバいぃ~!」

 揺らぎ、落ちていくジンヤの片割れで、ピエリッタがはしゃいでいた……その上空!

「こ、これは……ッ!?」

 核融合のフュジョンが叫び、渦に巻き込まれて爆散した。その凄まじき爆発が大量絶滅のミージェをはじめ、多くのジュクゴ使いたちをも巻き込んで連鎖するように拡がっていく。爆発の光が水平に広がる。それが光の柱と交わり、巨大なる十字の輝きを形成していく!

 世界中の人々がそれを目撃していた。世界中の人々がそれを感じ、理解していた──今、その輝きの中で、圧倒的な戦いが繰り広げられているのだと! 大地を貫き、天を割る。渦巻く光の爆発。壮絶なる光の十字! それはまさしく、神話的光景であった!

 真っ二つに割れたジンヤが急降下していく。落下が加速し、重力を失ったピエリッタの体が宙に浮かぶ。「あっはは。これは死んじゃうかも? 何とかしてよぉ~、グェイサちゃん!」ピエリッタは右手でスカートを押さえ、左手をグェイサの首に絡めて投げ出されそうな体を繋ぎ止めていた。

「フン……お前だけが死ねばいい」グェイサは加速の中でも微動だにせず、苦々しい表情で渦巻く戦いを見つめていた……その直後。「およ?」がくんとジンヤが停止し、ピエリッタの体が宙に止まる。「あらら?」目を丸くしたその体が重力を取り戻し、べたんと床に叩きつけられる。「ぐえ」

「いってててぇ……なんだなんだぁ!?」ピエリッタは顔をさすりながら見上げた。そして、「おう?」と素っ頓狂な声をあげた。極彩色に揺らめく輝きが、砕けたジンヤを包み込んでいる。

 何かの力が、ジンヤを宙に留めているのだ。「ヌゥ?」グェイサもまた眉根を寄せた。その二人の目の前に音もなく、長衣の男と少年が降り立った。

「カカ……」グェイサは獰猛な笑みを浮かべる! 「これは摩訶不思議……ッ!」その笑みに、降り立った男は超然とした微笑みを返した。「いかにも……わたしは摩訶不思議。摩訶不思議のハンカール」「あーらあらあら。これはこれは。偉大なる宰相閣下様のお出まし……いや、それとも逃げて来たのかな? あはは」

 おどけたように笑うピエリッタ。「んん~?」直後、訝しげに目をすがめた。ハンカールの背後。その長衣にすがりつくように隠れ、伺うようにこちらを見つめている少年がいる。白い髪、白い瞳、白い肌──おびえたような表情。

「んんん……?」ピエリッタの表情が曇る。(なんだなんだこいつ……なんかなんか嫌な感じ……)その瞳に浮かぶ虚構の二字が、暗く淀んで、揺らいで──

「カカカカカッ!」

 その状況を切り裂いたのは、獰猛なる吠え声であった! グェイサ! 「気に喰わん……!」グェイサの体は沸騰し、超新星爆発の五字が凄まじきジュクゴ力を放った。「何もかもが気に喰わんぞ……俺はッ!」

 野獣のような笑みを浮かべ、グェイサは左手をかかげた。その掌の上には、山のように盛られた創世の種があった! 「気に喰わんッ! 俺はすべてが気に喰わんッ! 俺は! 貴様も! お前も! あいつらも! その悉くを! 全てッ!」グェイサは山盛りとなった創世の種をすべて飲み込み、バリバリと咀嚼し、吠えた! 「ヌオァァァッ!」

「まぁ、待ちたまえ」

 ハンカールはグェイサに向けて右手を翻した。摩訶不思議の輝きが鈍い軌跡を描いて煌めいていく。

「ヌグゥッ!?」グェイサの口から、咀嚼したはずの創世の種が粒子となって吹き出す! 「ブホァッ!?」「ふふ……」ハンカールは冷たく微笑んだ。そして、粒子は霧散して消えた。

「あらあら、おやおや」ピエリッタが目を丸くする。「カカッ……貴様ぁッ……!」「ふふ……無粋ではないか」ハンカールは輝ける大十字を見上げた。「今はただ、静かにこの未曾有の戦いを見守るべきだ」

「あはは……あのさぁ……」ピエリッタはその昏い瞳をくりくりとさせ、ハンカールに不気味に微笑んだ。「その偉そうな態度、ムカつくなぁ……。そういうの、やめた方がいいと思うんだけどなぁ……? 何もかもお見通しって態度はさぁ……最後の最後に……恥をかくかもよ?」

 ハンカールの笑みは冷たい。「ふふ……いかにも。わたしにはわかる。わたしは見通している……この戦いの結末も……そして、君たちの最期もね」

「はーん……」ピエリッタはあごに人差し指をあて、小首を傾げた。「本当にぃ? ほんとぉにそうなのかなぁ? 君にもわからないことって、あるんじゃないのかなぁ……? たとえばさぁ……」

「ふふ……」ハンカールはその言葉を制した。「焦る必要はない」ハンカールの視線はピエリッタに向かわず、ただ輝く十字だけを見つめていた。「焦る必要はないのだ……この世界にいるべきではない娘よ」

「……!」その言葉を聞いて、ピエリッタのこめかみがピクリと動いた。「……あー。やっぱりムカつくなぁ……君は」その口角だけが薄暗く歪み、笑みのような形をつくった。「……ぶっ殺(ころ)決定だ」

 ハンカールはその呟きを無視して、ただ巨大な輝きだけを見つめていた。

「慌てずとも、もうすぐ……もうすぐ、すべての決着はつく」

 その見つめる先……輝ける渦の中心!

「くく……はははははははははははははッ!」

 胡坐座のまま、輝きの中を上昇し続けるフシト! そのフシトを追うように不撓不屈の翼を翻してハガネは飛ぶ! 一方、ミヤビは花弁と粉雪で生み出された足場を次々と跳躍しながら、輝きの中を駆け抜けていた! 二人はフシトを中心に螺旋を描く……そして、強大なる現人神との激突を繰り返していた!

「フシトッ!」ハガネの咆哮! 唸りをあげるその拳を、フシトは軽々と指先で受け止める。「ハァッ!」ミヤビの裂帛の斬撃を、いともたやすく小虫のように振り払う!

「くく……先ほどまでの威勢はどうした、汝ら?」

 フシトは優雅に笑った。ゆったりと円を描くように右手を天へと伸ばす。左手は地へと。「理解したか? 余の力を。ならば……」

 フシトの目が見開かれる!

「崇めるがよいッ!」

 その人差し指が天を、地を指し示す! 「見よッ!」万物を超越するジュクゴが──天上天下唯我独尊の八字が輝き、炸裂した!

「これこそが余の世界であるッ! これこそが余であるッ!」

「「うぅッ!?」」ハガネは、そしてミヤビは見た。それは創世の輝きだった。それは情報の爆発だった。それは荘厳なる力の発動であった!

 世界のありとあらゆる歴史が、生きとし生けるものの営みが、情報となってその輝きの中に集約されていた! 「これは……ッ!?」ハガネの体をフシトの世界が、刹那の輝きに込められた爆発的な歴史が通り過ぎていく。

 燃え上がる灼熱の大地! それが冷えて水が生じ、世界が海に覆われていく。育まれる生命。やがて生命は陸に上がり……巨大な爬虫類状の生物が闊歩し……人が誕生して文明が産み出されていく……この地上の歴史、営み、想い……そのすべてが刹那の輝きの中に込められていた。その力は……ハガネを圧倒した!

「うあァァァッ!」ハガネが吹き飛んでいく! 「ハガネッ!」ミヤビは跳躍した。花びらと粉雪が嵐となって、ミヤビに続くように舞った。錐揉み回転しながら飛んでいくハガネ、その腕を……ミヤビが掴んだ!

「ミヤビ……!」「まだだ。まだ貴様はこんなものではない……そうだろう、ハガネ」

 フシトは嘲った。「くくく……弱き者同士が支えあい、助けあう……実に麗しい!」

「黙れ」ミヤビの周囲を花びらが、粉雪が渦巻いた。跳躍。ミヤビはフシトに剣を振り下ろしながら決然と告げる。「貴様に……美について語る資格などない!」

「くくく……汝がそれを言うか。汝がそれを言うのか! 実に呆れたものよッ!」フシトはミヤビの剣を掴み、傲然と言い放った。

「ミヤビよ。汝は余を狂者と言ったな? そして今、美について語る資格はないと言ったな? くくく……実に愚か」「なんだと?」「もう忘れたのか? 汝のこれまでを!」

 ミヤビの剣を弾き、嗤う! 「余の命に従い、街を焼き、敵を殺し、味方をも殺し続けて来た……それが汝である! くくく……大いなる矛盾! 何が美か……余に言わせれば、汝ほど狂った者も珍しい!」

 フシトは大きく仰け反りミヤビを傲然と見下ろした! 「くくく……気狂いは、汝であるなぁ!」

「私は……!」ミヤビは奥歯を噛みしめ、再び剣を振るう! 絞り出すように言った。「私は見たのだ……あの暗黒の中で……真に、美しきものをッ!」

「ほぅ?」フシトはミヤビの言葉に首を傾げながら、無造作に手から光を放った。「くッ!」ハガネは回転し、翼でそれを弾く! ミヤビはなおも剣を振るい続けながら言った。

「それは見た目の美醜ではない……力の強弱でも、才能の過多でもない……!」

 ミヤビの花鳥風月が、風花雪月がその輝きを強めていく!

「人が生きる……苦悩し、泣き、悲しむ。誰もがそうだ。この世界は苦しみに満ちているかもしれない。吐き気を催すような世界なのかもしれない。人は時として、邪悪に振る舞うのかもしれない。それでも……それでもなお、人々は歩んでいた! その営みの中に……その人々の歩みの中に……私の求める美はあったのだ!」

「くくく……」フシトは呆れたように嗤った。「実に陳腐。あまりにも凡庸……」ミヤビはなおも剣を振るう! 「たしかに私は狂っていた。私は狂人だった……私はいずれ、その代償を払うことになるだろう。だが、その前に……私は決着をつける。お前と! ジュクゴニア帝国に属した私自身に!」

「くくくく! 愚かッ!」フシトの体から幾つもの光の玉が浮かび上がり、その周囲を旋回した!

「美だと? 真の美だと? くだらぬッ! 余は知っているぞ。人間は、己の目の前しか見えない生き物であるとなぁ! 汝はそれを美しいと言ったな? バカめ。人間は遠くに飢えた同胞(はらから)が居ようが、笑っていられる! 人間は欲しいものが手に入ったと言っては喜び、手に入らなかったと言っては嘆く! 持つ者を羨み、持たざる者を蔑む! いともたやすく大きな声に流され、敵を作っては憎しみを吐き出す! その結果を自分で考えようともしない。それが汝ら人間である!」

 光の玉が輝きを増す。その一つ一つの輝きの中に、無数の世界が現れては消えていく!

「故に……余が導いてやろうというのだ。考えようとしない人間たちに代わって、余が考えてやろうというのだ。世界について、未来について! 自ら考えようともしない汝らに代わり、余がすべてを背負ってやろうというのだ!」

 再びその右手が円を描くように天へと、左手は地へと伸ばされていく。その指先が、天を、地を指し示す! 「故に……余が世界であるッ!」旋回する光の玉が炸裂した。

 それは先とは比較にならない、莫大なる創世の奔流であった。

 その凄まじき奔流の中を、根源的な力を持った八字のジュクゴが──その一文字一文字が、回転し、旋回し、五色の輝きを放ちながら飛び交っていく! そう……それこそは!

天 ! 上 ! 天 ! 下 !
唯 ! 我 ! 独 ! 尊 !

 
「うぉァァあッ!」抗うようにミヤビが叫んだ! その体を創世の奔流が飲み込み、焼き尽くしていく! その力はハガネを、ミヤビを圧倒し、その全てを……滅ぼした!

 ……かに見えた。

「ぬゥ!?」

 フシトは眉根を寄せて唸っていた。その眼前。怒涛の奔流に抗うように、ゆっくりと、繭のような何かが浮かび上がってくる。「なんだと……!?」それは閉じられた翼──不撓不屈の翼!

 ゆっくりと、その翼は開いていく──「バカな……これは……なんだ……!?」フシトは予感した。静かに押し寄せようとしている。滔々と流れる、大河のごときジュクゴ力が。

「俺には……」

 翼が開き、轟と燃えた。開いた翼の中に、ミヤビを抱えたハガネがいた。「俺にはわかった。お前が、なぜそうなったのか……」「なんだと……?」

「お前は……最後の最後に絶望したんだ」「……なにぃ?」呻くフシト。「ハガネ……貴様は……」何かを理解したように、その腕から離れるミヤビ。ハガネはフシトを見据えながら続けた。

「お前は絶望した……自分の力の無さに、人間の力の無さに。だから絶望し、より強大な力に……ジュクゴにすべてを委ねて……己を見失った」「何が言いたい、汝……ッ!」

「たしかに、それで世界は救われたのかもしれない。お前に感謝すべきなのかもしれない。だが……」ハガネの瞳に浮かぶ不屈の二字が、燃えるように輝いていく!

「お前には見えなくなった……お前は、見ようとはしなくなった!」

 その翼が力強く燃え上がり、翻り、拡がっていく!

「お前の救った世界……お前の造り出した世界……その世界に拡がる、無限の輝きを!」

 フシトは不快そうに顔を歪めた。「輝き……だと?」ハガネの翼が燃え上がり、轟轟と火の粉を上げた。その舞い散る火の粉の中に、様々な光景が浮かんでは消えていく。大地に咲く花々。海をゆく魚の煌めき。風が吹き、山の上に雲が漂う。フシトは嘲笑った。「くく……これが輝きだとでも?」

「そうだ……お前が救い、お前が造り、そして、見失ったもの……」その翼の燃焼がさらに強まり、舞い散る火の粉は火花と化していく! その中に、さらなる光景が浮かんでは消える。雨が降り、水が流れ、大地を潤す。その大地の上で人々が生きていく。子を育てる父と母。喧嘩し泣きあう幼い兄弟。酒を酌み交わす人々。笑い、泣き、疲れ、食べ、眠り、そして笑う……。

「人間は考えようとはしない……お前はそう言ったな。だがお前がどう思おうが、人は……俺たちは、一瞬一瞬の中で常に決断し、常に選択して生きている! そう、この世界の中で! 愚かな判断も、賢明な決断もあるだろう。過ちも悲しみもあるだろう。だが……俺たちはそうやって生きてきた。そうやって命を繋ぎ、紡ぎ続けてきた! それが世界だ。そのすべてが世界だ。ここはお前一人の世界ではない。この世界に拡がる輝きは、お前ひとりの小ささによって打ち消せるような輝きではないッ!」

「くくく……ははは……」フシトは呆れたように笑い出していた。ハガネは拳を力強く突き出す! その拳に力が漲っていく。瞳の不屈が、不撓不屈の翼が爆ぜるように燃え、轟と音を立てた!

「だから俺は戦う。俺たちを、世界を踏みにじろうとする者があるならば……相手が誰であろうと、何度でも立ち上がる。何度でも立ち向かう! 俺は屈しはしない……俺は……俺たちは」

 ハガネは吠えた!

「決して屈しはしないッ!」

「くくく……ははははは!」フシトの笑いはほとんど絶叫に近づいている! 「余もわかったぞ!」フシトの八字が輝きを放つ! 「汝もすでに、人ではないのだなぁ! その言葉、その想い……汝もまた、すでに人の分際を超えている。それはもはや人の言葉としてはあり得ない……神としての視点、神としての振る舞いである! 故に汝はすでに……不屈の概念そのものだッ!」

「それが……どうしたッ!」「くくく……よかろう!」フシトは迎え撃つようにその両の手を広げた。

「余は嬉しいぞ。汝ら、不敬ではあるが見事である。余は超越者の中の超越者として、すべての頂点に君臨する者として……汝の不屈を、汝らの挑戦を叩き潰してみせようではないか。汝らを完膚なきまで屈服せしめ、そのうえで、神々の一柱として迎え入れようではないか!」

 ハガネの不屈がバチリと輝く! 「ミヤビッ!」ハガネは叫び、その翼を翻した!

 ミヤビは……目を瞑った。その胸の奥に、様々な想いが渦巻いていた。(本当にいいのだな、ハガネ……これが貴様の答え……なのだな)

 ミヤビは目を開いた。その視線の先で不撓不屈の翼が輝き、羽ばたいていた。ミヤビとハガネの視線が交わる。ミヤビは、ハガネが力強く頷くさまを見た。(ハガネ……そうであるならば……私はッ!)

 ミヤビは咆哮した!

「ゆくぞ、ハガネッ!」
「あぁッ!」

「ぬぅ!?」

 フシトは己の周囲を見た! 花びらが、粉雪が、爆発するように渦を巻き、フシトを取り囲んでいく! 「くく……何をしようというのだ、汝ら!」花びらは、粉雪は煌めき……そして、創世の奔流の中に、新たなるジュクゴを描き出していった!

 光が、力が、花びらが、粉雪が、爆発的に渦巻いている。その怒涛の煌めきの中で、ハガネは想った。

(許せなかった……憎かった。貴方が死んで、貴方が殺されて、俺は……。しかし今、その許せなかった男が貴方の力を繋いでくれた。そして今、新たな力を紡ごうとしているんだ……!)

「うぉぉぉおッ!」ミヤビは叫び、その剣を天へと向けてかざした! 創世の奔流を貫くようにジュクゴが刻まれ、凄まじき閃光を放った! それこそは!

無 辺 際 !

 
「バカなッ!?」渦巻く光、花びら、粉雪。その中に、まるで合わせ鏡に連続する無限の像のように、ハガネの姿が映し出されていく! フシトは見た。ハガネの不屈が、不撓不屈の翼が、渦巻き、旋回し、己を取り囲み、燃え上がり、爆発的な輝きを放つさまを! 

「バカな……バカなッ!? 無限の……不屈だとッ!?」

 その輝きは世界を貫く光すらも超え、十字の輝きすらも爆散させた! ハガネは叫んだ。「うぉぉぉッ!」無限に煌めくハガネの拳が唸りを上げて炎を纏い、フシトへと迫った!

「見ていてくれ、ムサイさん! 今、俺は……貴方の力で!」

 ジンヤの上で、それを見つめ、冷たく佇む男がいた。ハンカール。ハンカールは冷然と呟く。

「……滅びの時です、陛下」

 己を圧倒した輝きの中で、フシトは断末魔の叫びをあげた。無限に連なるハガネの拳が迫っている! 「バカなッ! バカなぁーーッ!」ハガネの咆哮が轟く! 「俺の、俺たちの力が! 今こそお前を……ジュクゴニア帝国を!」 その瞳から、涙のように不屈の炎が爆ぜた! 「叩き潰すッ!」唸りをあげる無限の拳が、フシトの体を怒涛のごとく貫いたッ!

【第69話「母と娘」に続く!】

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