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破壊的イノベータの5つのスキル

「イノベーションのジレンマ」「ジョブ理論」で有名なハーバード・ビジネススクール教授、クリステンセン氏の「イノベーションのDNA」という本を読みました。

相変わらずクリステンセン氏の著作は面白くて一気読みできたし、特に前半の「破壊的イノベータのDNA」は何度も読み返したい内容だったので、ここに要約をまとめておきます。

破壊的イノベータのDNA「発見力」

この本は、「創造性は生まれより育ち」という前提からスタートします。ある研究で、IQは80~85%が遺伝的であったのに対し、創造性の遺伝的要素は30%しかなかったそうです。つまり創造性というのは後天的なものであって、トレーニングにより習得することが可能です。
ビジネススキルを大きく「発見力」と「実行力」に分け、その能力をテストしたとき、起業家に強く見られたのが発見力で、大企業の幹部に強く見られたのが実行力だとされています。このテストは簡易版が本についており、以下のサイトで$120払うと完全版もできるようです。(ちなみに僕は実行力だった)

破壊的なアイデアを生み出す「関連づけ」の力

発見力の中心は、「関連づけ」だと定義されています。
これは、普通の人が無関係だと考える分野や問題、アイデア同士を結びつける力です。例えばSalesforceは、エンタープライズシステムとクラウドという2つの仕組みを組み合わせることで、SaaSという新しい仕組みを作った。これは今では当たり前のことですが、当時は画期的なことだった。

この「関連づけ」が破壊的なアイデアを生み出す肝であって、それを養うために以下のような方法が提案されています。
強制連想:適当に取り上げた2つの物を使って、何か新しいアイデアを考える
別の会社になりきる:例えばみんなでAppleのTシャツを着て、Apple社は目の前の課題にどうやって対処するか考える
何かに例える:「テレビを雑誌に例えてみたら?」というアイデアから、テレビの自動録画サービス「ティーボ」が生まれた
おもしろ箱:とにかく面白いと思ったものを一つの箱に集める。煮詰まったときはその箱から何か取り出して遊んでみる。デザインシンキング発祥の地IDEOで実践されている
スキャンパー:ある課題に対して、「代用、結合、応用、拡大・縮小・変更、除去、逆転・並び替え」という観点で課題について考える

「関連付け」を支える4つの力

◆質問力
現状に意義を唱え、「こうしたらどうなるだろう?」と問いかける力。ただ文句言うだけじゃなくて、「こうしてみたら?」という発展的な質問をする、というところが肝だと理解してます。
P&Gでは、「掃除を楽にするためには?」ではなく「どうすれば消費者に土曜の朝を取り戻せるのか?」と問いかける。これはジョブ理論ぽいですね。
質問力を高めるトレーニングとして、以下が提案されています。
質問ストーミング:アイデアではなく、質問をブレーンストーミングする。会議で行き詰ったときに有効
3つの質問:「この3つの質問に回答できたら課題が解決する」という3つを洗い出す。これはイシュードリブンの話ですね
Q/A比:自分の発話の中にあらわれるQとAの比率を取る。Qの方が多くなることを目指す
質問ノート:自分がどんな質問をしたかをメモに残し、その傾向を分析する

◆観察力
周りの顧客・製品・サービス・技術・企業などに注意を払い、新しいやり方のもとになる洞察やアイデアを得る能力です。
インドのタタは、雨の日に4人家族が1台のスクーターに乗って移動するのを見て、世界最安車「タタ・ナノ」を作ったと言われています。
観察力を高めるトレーニングとして、以下が提案されています。
顧客を観察する:顧客が毎日どんな行動をしているか
企業を観察する:顧客の企業がどんな活動をしているか
琴線に触れたものを観察する:とにかくイイと思ったものを
五感をフル活用して観察する:見るだけでは得られないことを

◆ネットワーク力
多様な背景や考え方を持つ人達との幅広いネットワークを通じて、アイデアを見つけたり試したりする力です。実行力型の人は主に営業や協業を目的にネットワーキングしますが、発見力型の人は新しい知識を仕入れる=関連付けのネタ探しのためにネットワーキングする、というところに違いがあるそうです。
マイケル・ラザリディスは、見本市で見せてもらったDocomoの無線システムに着想を得て、ブラックベリーを思いついたそうです。
ネットワーク力を高めるトレーニングとして、以下が提案されています。
相談できる人を増やす:すぐに相談できる人を書き出してみる。そもそも何人いるか、そして、多様なバックグラウンドの人が揃っているか、を確認
食事のネットワーキング:知らない人とランチ
フォーラムに行く:手っ取り早く情報収集できる
創造の場を作る:デザインシンキングセッションみたいなものをたくさん企画する
外部から人を招く:新しい風を入れる
合同研修を行う:異業種交流

◆実験力
新し経験に挑み、新しいアイデアを試す力です。
アマゾンは、元々インターネットで書籍を売る実験からスタートしましたが、色んな実験を繰り返した結果、当初ベゾスが考えていたものとは全く違う姿に成長しました。
実験力を高めるトレーニングとして、以下が提案されています。
物理的障壁を超える:他のチームへ、他の部署へ、他の会社へ
知的障壁を超える:全然興味のない本を読んでみる、学会に行ってみる
新しい技術を身に着ける:新しい研修、スポーツ、学問など、定期的に新しいことを学ぶ
製品を分解する:興味のある製品を買ってきて、設計・加工・製造法にどんな特徴があるのか、分析する
試作品をつくる:何か改良したいものを選ぶ、改良したらどんなふうになるか考える、実際に作ってみる
新しいアイデアを試験的に導入する:いつもと違うやり方を試してみる
トレンドを探す:本、記事、雑誌、ウェブにアンテナを張って、次に来るものを予測する

まとめ

破壊的イノベータのDNA=発見力は、5つのスキルで構成されています。
・関連付け
・質問力
・観察力
・ネットワーク力
・実験力
そしてこれらのスキルは後天的であり、トレーニングにより習得することができます。

自分自身が学びたいということも含めて、これらのスキルを体系的に学べるトレーニングを作ったらおもしろそうだな、、、と思いました。

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