猫の形をした幸福 小手鞠 るい (著)を読みました。
タイトルの通り、猫が出てきます。
猫飼いの私としては素通りできず、久しぶりに図書館で借りてきました。
実はこの本、10年ほど前に借りて読んだことがありました。
ただその時は猫を飼っておらず内容もうっすら覚えている程度だったので、改めて読んでみようと思ったのです。
静かな夫婦の物語
物語は一貫して静かに淡々と夫婦の穏やかで温かい日常が描かれます。
夫はアメリカ育ちの日本人。妻は日本育ちの日本人。けして若くもなく離婚歴のある二人が出会い子どもを持てないことを承知で結婚します。
二人はやがて1匹の猫を迎え、この猫に夢中になります。
前回この本を読んだ時よりも、猫の存在がずっと大きくその愛らしさもリアルに感じられます。
そして、今猫と暮らしている私だからこそ、主人公の二人がいつか来る別れの日を恐れつつ今を大事に生活する気持ちが痛いほどわかってしまうのです。
幸せな十数年間
猫は十分長生きしますが、15年ほどで死んでしまいます。
最近は動物医療も発展し、20年以上生きる猫もいるということですね。
私も自分が平均寿命まで生きられたとすれば、猫を見送る日がやってくるでしょう。
そう思うと、最後の数十ページは涙なくしては読めませんでした。
夜中の号泣です。
男と女の悲しみ方の違い
物語の終盤の悲しみとは別に、私には気になったことがありました。
それは男と女の悲しみ方の違いです。
物語の夫婦はそれぞれ深く悲しむのですがその乗り越え方が全く異なることでぶつかってしまいます。
妻は、たくさんの猫の写真を部屋中に飾り、思い出に浸ることで悲しみを受け止めます。
しかし夫のほうは、猫の写真すら見られません。思い出すことが辛いから見たくないといいます。
実はこれと同じようなことが、先日私の友人夫婦にも起こりました。
愛犬を亡くした友人
長い付き合いのある私の友人夫婦は先日15年一緒に暮らした愛犬を見送りました。
その時私の友人は犬の使っていた毛布やおもちゃをいつまでも部屋に置いておこうとしたそうです。しかし旦那さんは、犬がいなくなった翌日には犬を思い出させるようなものを一切捨てようとしたというのです。
もともと仲のいい夫婦ですが、これだけ「悲しみ方」が違うのです。
友人は「愛犬を思い出すのが辛いんだろうね。それもわからなくはないけどわたしは全部捨てるなんてできない」と言っていました。
夫婦は話し合い、いくつかの想い出の品を残し、あらかたの物は処分したそうです。
見送る覚悟をもつこと
動物を飼うと、たくさんの幸せな時間をもらえます。
愛しくて、ずっと一緒に暮らしたいと思うけれど、たいていの場合先に逝ってしまうのです。いえむしろ、ちゃんと見送ってあげないといけないんですよね。
飼い始めた日から、心のどこかに「その日」を意識している自分がいます。
動物と暮らしている人はみんなそうですよね。
別れが悲しいから動物を飼うのはこわいな・・・と思っていた時期もありました。
けれど、この本を読んで別れは悲しくても、この小さくてかわいらしい生き物と暮らすという選択は間違っていなかったと思うのです。
猫ラブの皆様には特におすすめ。
秋の夜長に是非読んでみてくださいね。
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