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母からの電話③ 母はツンデレ腐女子?

先日、母から電話があり、ゲイとして専業主夫になったことがばれた。
しかし、意外にも許容された。

ここ2、3年で「LGBT」という言葉が普及。
僕ら親子のわだかまりに光が射したとも思う。
そして、完全な勘だが、母は腐女子になった?

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1年半前――
まだ、僕がゲイであることを拒絶され続けていた時。
僕の引っ越し先の住所のために、母に電話をした。
理由は夫との同棲だったが、理由を言うつもりはなかった。

「おかしいわ。15年以上も一人暮らしした場所を引っ越すなんて」
「・・・」
「会社が移転するとか言ってたからそれ?」
「一緒に暮らす人ができて」
「・・・あんた、まだそんなこと・・・」

勘のいい母は、「一緒に暮らす人」の性別を確認せずに男と断定した。
夫の事を話したのは、この時が初めてである。

仕事は何をしているか、年齢は、家族構成は、実家は持ち家かマンションか、性格は、最終学歴は。母は事細かに確認した。

僕に最後に釘を刺した。

「私に紹介しようとか思ってたら、絶対に嫌だから」

調子に乗っていたところを突き放された。

怒りと切なさが入り混じる。

カミングアウト当時、全部話さないでと言ったのは、お母さんじゃないか。
だから言わなかった。

しかし今思うと、このセリフはおかしい。

なぜか。

先週の電話――

母はこういった。

「お相手さん、5つ年下なんでしょ。あなたが養われる側とはね」

年下が養われるとか、戦国時代の小姓か。
ツッコミたくなったが、「5つ下」をきっちり覚えているのも妙だった。

紹介されたくもない息子の夫を覚えている母。

会いたくない母親の建て前と、興味を捨てきれない本音が交差していた。
こうなると、壮大なボケである。

「歳をとったら愛想をつかされるんじゃないの」
「専業主夫が、遊んでるように思われて捨てられないかしら」
「若い人を好きになるかもしれないわよ」

色々言い出す母。
これ以上ボケないで。

「最近も芸能人が同性の恋人と別れたとTVで言ってたし」

いやいやいやいや。誰!?誰のこと!?
自分より詳しいし!

ここまでくると、母が少女に思えてくる。
好奇心旺盛な、わくわくしてる、あの感じが漏れて。
さながら女子高校生である。

最近は「LGBT」の流れに乗るように、ゲイのドラマが多い。
「おっさんずラブ」か「昨日何食べた?」くらいは確実に観ているはずだ。

母も、もしかしたら。

僕らの事について、想像を膨らませて、膨らませて――

腐女子になったかもしれない。

先週の電話――

「あなた家は買うんでしょうね」

エンジンがかかり、積極的に聞き出そうとする母。

「なんとか東京に買おうかと」
「東京なんて買えるの?」
「LGBTの不動産屋さんがあって、中古なら可能かもって」
「ふうん」
「共有資産で買えたらと話してる。法律で繋がれないから。」
「そう」

そう、って。
もう認めてるよね。

「千葉が地価が低いと、お相手――ボコさんが提案してるんだけど。でも自分も実家の近くがいいと言ったら、ボコさんは " オレはどっちでも "って」

さらりと、夫の名前を公表。
夫が "オレ" 属性であること、懐の広いことの情報ご提供。

「お相手――ボコさん?近所はいやよ。隣駅とかならいいけど」

完全に受け入れているではないか。

「そりゃ、近くに来てくれたら安心だけど」

だけど、じゃねーし。
(どこまで身勝手なの・・・)

しかし、母の頭の中で、夫は「好青年」になったであろう。

さて、仕上げである。
いま勢いがある時に言うしかない。

「財産なんだけど、例えば家を買って、僕が死んだら相続が親にいくのね」
「遺書を書けばいいじゃない」

完全に僕らの関係を受け容れた前提で返答している。
笑える。

「書いても、法定相続人とか遺留分という考えがあって確実に渡せないの」
「そうなんだ」
「だから、近く、遺留分の放棄をお願いしたくて」※
「事件に巻き込まれそうで怖いわ」
「大丈夫、お願いするときは、ボコさんのご両親と同じタイミングでする」

母は肯定も否定もなかったが、とりあえず予告できた。
会話の終わりには、少し夫の株が上がったようである。

「こんな時が来ると思ってたわ」

母はつぶやくように言った。
沢山の話を1日に詰め込みすぎて、疲れていたような。
納得している自分自身を悲しく思っているような。

さて。

夫には悪いが、母の中で夫は「5歳下の誠実な好青年」である。
サラサラヘアーのシュッとした体形、高身長でスーツを綺麗に着こなすスマートサラリーマン(もちろん顔は町田啓太)という誤った想像も加わっているかもしれないが、それは想像した母が悪い。
誘導したのは僕だが、想像したのは母である。

78歳の腐女子脳、ありがとう。

これからも、よろしく。


※2020/1/20追記
 遺留分の「事前」の放棄は家庭裁判所の承認と、相当な理由が必要で、ほぼ不可能ということがわかりました。


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※次回は10月20日予定です


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