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日進月歩 ~Road to MBA~#44

2020/11/14:自主勉強会③
 自主的な勉強会における「学び」を目的に今回は、有志で『IT業界』について講義をいただきました。メンバーの中で約半数がIT業界に属していることから、IT業界における市場や概要、基礎などからお話をいただき、DXはなぜ進まないか、ユーザー企業におけるITはどんなものかをご説明いただいた上で、最近のテクノロジーのトレンドについてもお聞きしました。

【情報サービス業の市場規模】
 まずは『情報サービス業』の全体構成と市場規模の拡大要因について、中でも市場規模の拡大を牽引しているのは、「情報処理サービス」と「ソフトウェア」の領域であり、その中にある分野などを中心にお話をいただきました(簡単な全体構成と分類は以下参照)。

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【業界構造】
 また、業界構造を聞くと「多重下請け構造」であり、エンドユーザー企業から、元請け⇒二次請け⇒三次請けへと案件とおカネが流れ、企業間の政治や繋がりを中心にビジネスをしているように感じられた(小規模のシステム開発などは除く)。さらに最近では、AIやIoTなどの先端技術を活用したDXの流れもあり、従来型ITを活用した既存システムの刷新を各企業が検討している傾向となっている。テクノロジーの変化が業界に与えている影響は世間で騒がれている程大きくはなく、既存の構造やシステムからの刷新にはまだまだ時間がかかりそうだというお話もいただいた。

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【IT人材】
 AIやIoTなどのテクノロジーの変化にともない、IT人材における「キャリアパス」も変わってきている。プログラマーからの一般的な推移例は以下の図のように示されるが、先端IT人材という捉え方や活用方法についても、企業は模索をしながら検討している状況である。本日の講話からは、このような先端人材の活用には大きく2通りの考え方や戦略があるのではないか、と理解することができた。「新しい技術を生み出す人材として育成する」方法と、「上流工程を整理できる人材を育てることで先端人材を1つの方法論として利用する」方法があるのではと認識できた。

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 ここまでがIT業界の市場・構造・人材といった前提となる。ここからは、は、IT業界で取組みが推進されているDXについて考えてみる。世界で推進されているDXが、日本において思い通りに進まない理由の要素をいくつかご説明いただいので、私なりにまとめて確認できればと思う。


Ⅰ)ビジネスとテクノロジーの両要素を把握した人材の不足

 ビジネスを変革させていく中で、以下のような「ビジネス」を視点で考えるか、「テクノロジー」を視点で考えるかによって、推進までのスピードなどが違ってくるのではないか。また、全体最適と個別最適といった考え方によっても、”パッケージ”もしくは”スクラッチ”で開発するなど、開発における考え方という点でも推進が違ってくると考える。まだ、DXという言葉が独り歩きをして、テクノロジードリブンで発想している企業が多いことが要因になるのではないか。ビジネスモデルや顧客のニーズを起点とした変革が必要であると企業が気づくこと、経営者が変革を実施する覚悟をもてるかどうか、ここにかかってくるのではないかと考えます。

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Ⅱ)システム開発は「コスト」ととらえられる

 システム開発(IT投資)は、「戦略を実行する上での方法論の1つ」であると私は考えている。しかしながら、現状の日本はシステム開発や保守などを「コスト」として考えている歴史や風土の要素が大いに存在している。システム開発をすることで”顧客価値を上げて売上を上げる”、”利益構造を生み出して新しい投資をする”といった戦略への実現手段という考え方を、どこまで浸透できるか。次項でもあげている組織として示すことで、企業全体のシステム投資の考え方を改める必要があるのではないかと考えます。


Ⅲ)組織としてCIOやCTOの設置率が少ない(組織から戦略を読み解ける)

 前述でもありましたが、DXを推進するために「新しい部署の設置」は、実施の進捗に大きく関わっている。海外ではおなじみのCIOやCTOといった役割は、まだまだ日本では少ない状況である。大企業では約半数の企業で設置がされているが、専任で任命されているケースは少ない。また、中堅・中小企業では3割程度となり、推進におけるトップダウンの影響力が少ないといった要因もあると考えます(下図は日本企業の経営課題2020:一般社団法人日本能率協会より抜粋)。 

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Ⅳ)顧客における影響

 もし日本でもテクノロジーの導入が進んでいったと仮定した場合に、環境への適応といったメリット以外の懸念事項は無いのか。ビジネスモデルの変化にともなって、提供されるサービスや製品そのものが変わってくることがあるのではないか、この影響について例を基に考えてみたいと思う。
▶最近の変化例:
  ✔ UIが変わってしまった(例:FacebookやYouTubeのビジュアル変更)
  ✔ 購入方法や顧客との関係性も変わった(例:EC取引などのデジタル化) 
⇒別の講義内で「FacebookのUI変更」に関する議論があった。ターゲット層をZ世代へシフトしていくことによる変化と理解しているが、既存で利用が多かった40代の利用者からすると”使いづらい”といった声が出てしまっている。企業が変革をすることで、既存の顧客への影響が少なからず出てくるという懸念も、進まない要因ではないかと考えます。


Ⅴ)既存システムのブラックボックス化

 既存システムの構成が、誰にも分からず「ブラックボックス化」してしまっているのも大きな要因である。これまで開発におけるルールや法則がなかったり、都度対応やトラブル対応などによる開発、納期を優先した開発といった歴史が、つくりあげてしまっているものである。前述でもお話をしたが、既存の顧客への影響を考えると解析できていない既存システムを新しいシステムへ刷新したことによる影響は大きいため、把握するまでのかかる多大な時間やリソースを考えると進んでいないのが現状である。ビジネスモデルの変革にシステム変更は切っても切れないものであると考えるため、刷新するにも基盤整備と把握に時間がかかることが今後も予想されるため、進まない要因になるのではと考えます。従来のウォーターフォール開発ではない、アジャイル開発の選択も含めてスピード感を持った対応が必要です。

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 上記5つの要素を大きく講話いただき(他にもたくさんありましたが)、DXが進まない要因を少なからず理解出来ました。ひとつひとつ解決していくためにも、情報リテラシー(ITリテラシー)をしっかりと把握するためにも、この領域はインプットし続けなければならないと改めて感じました。


 最後に戦略を実現するためのシステムを開発する際に、どういった構成で開発を進めていくべきか、選ぶときの基準について教えていただきました。大きくは2種類「種類1:どこまでを自社で持つか(SaaS⇔PaaS⇔IaaS⇔オンプレミス)」と「種類2:クラウドサービスの利用(パブリック⇔コミュニティ⇔プライベート⇔ハイブリッド)」の組み合わせとなり、企業のビジネスモデルや文化、戦略の方向性、強みや差別化をどこで持つべきかに合わせて選択が必要であることを学ぶことができました。

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 本年もあと残りわずか・・・有志の勉強会やその他ミニセミナーも色々と企画できてきたと思います。年内に「2020年の最後:①IT業界の残り、②起業から出口戦略までの実例」について勉強し、締めくくりたいと思います。


         立教大学大学院ビジネスデザイン研究科   平岩 宗

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