見出し画像

日進月歩 ~Road to MBA~#141

2021/7/2:デザイン経営⑤
 金曜日は、公益財団法人日本デザイン振興会の寄付講座であり、新しい経営といわれている「デザイン経営」を職員でもあります秋元氏から学ばせていただいており、5回目の講義です(前講義#136)。
 本講義は、ゲストスピーカーとして株式会社コークッキング(伊作氏)と株式会社日本環境設計(中村氏)をお招きし、講演をいただきました。

■株式会社コークッキング(伊作太一さん)

 本日は、食品ロス削減のためのプラットフォーム『TABETE』を基に講演をいただきました。閉店間際など、まだおいしく安全に食べられるのに廃棄の危機に面している食事で「店」と「食べ手」をつなぎ、最後まで売り切ることを応援するプラットフォーム(ITを活用)として、社会問題になっている食品ロスに対する解決スキームとしてご紹介していただいた。

◉食品ロスの現状(2020年10月号)
 日本における1年間の食品ロスは、約612万トン(=東京ドーム約5杯分)であり、世界においてはまだ食べられる食糧が13億トン廃棄されている。日本では、日本人1人当たりお茶碗1杯分のごはんの量が毎日捨てられている計算となってしまっている。
※食品ロスが発生する2つの原因
①事業系食品ロス(328万トン):小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外など
②家庭系食品ロス(284万トン):家での料理の作り過ぎによる食べ残しや買ったのに使わずに捨ててしまう、料理を作る時の皮のむき過ぎなど

 このような現状において「①事業系食品ロス」は、食べ手の存在によって救済することができるのではないかという仮説から、食品ロス改善に向けてデザインを取り入れる企業も増えてきており、とても興味深い内容だった。

◉食品ロス市場:他企業の事業例
・生鮮食品にスプレーを降りかけて賞味期限を2~3倍に伸ばす(第2の皮)
・食品ロスの傾向をカメラのAIを使って調べる(IoTゴミ箱)
・気候の変動や需要と供給に合わせてダイナミックプライシング

 ご紹介いただいた『TABETE』は、飲食店・中食店で食品ロスの危機にある食事をユーザーがお得にレスキューできるマッチングサービスとなっており、「生活者(ユーザー)」と「事業者」をつなぐプラットフォームとなる。このサービスを実現するためには、食品ロスに理解のある「ユーザー」と「事業者」を顧客とし、食品ロスに対する取組みとしての相互理解を促進することが重要であり、信頼関係を担保できる”デザイン”が必要となる。この新しい『TABETE』を通して提供できる価値としては、

画像1

があげられ、この企業におけるデザイン経営とは、正解がない世の中において問題を解決していく(企業の存在意義を問い、ミッションドリブンな組織であり続ける)、問題を発見し解決していく能力(=”デザイン”)を大切にしているように感じられた。

■株式会社日本環境設計(中村崇之さん)

 本日は、世界のファッション産業におけるゴミ削減へ向けた取組みとして『BRING』を基に講演をいただきました。服から服をつくること(リサイクル)を目標に、「ケミカル法」という独自のリサイクル技術を編み出し、新しい価値を提供している事例となります。

ファッションの現状
 世界のファッション産業では年間9200万トンのゴミが発生しており、埋立や焼却処分されている。また、服を製造するだけでもCo₂排出量などの環境への負荷は大きいものがある。これからのファッション業界を持続可能なものにしていくためにも、サスティナブルな取組みが必要となっている。

 このような現状において、ポリエステルをサスティナブルにリサイクルすることで、「服から服を生み出す」ことを事業化している企業となります。使われなくなった服を回収し、原料にまでリサイクルし、再び糸・生地・服をつくる循環構造をコア・コンピタンスとしています。内部資源における「技術」という強みを活かして、社会課題をしている事例となります。

画像2

 この企業における大きな特徴としては、面白いビジネスモデルにも表されているような気がします。リサイクルのために服を出したことによって空いたタンスに「新しい洋服」を提供することを付加価値とし、提携してもらった店のクーポンを発行(インセンティブ)し、新しい経済活動を促す(リサイクルだけでない価値)という価値提供をしている。自社だけでやれることは限りがあるため、プラットフォーマーとして様々な企業と連携して取組みを実施することによって、「目指したい世界観」に共感してもらう企業を増やし、マーケティングやブランディングなどを担ってもらっている点においても上手に”デザイン”されているなと感じられました。

画像3


■この事例に関わる”デザイン経営”のポイント

 デザイン経営は、経営トップやマネジメントなどの中枢(意思決定者)における”デザイン”に対する理解や、デザイン業務を担う人材の関与などが重要視されています。しかしながら、それらは根底には「何のための・誰のための経営であるか」、「事業により生じるメリットを誰に還元するのか」といった明確な目的意識や理念が存在してこそ成り立つものでもあります。
 逆にいうと、それらが欠落したままで”デザイン”を方法のように経営へ反映させたとしても、持続性は生まれないということです。なぜデザインが有効なのかといった関係する人々の理解も進まないため、何よりもまず当事者の間に、創造的な経営実践の源となる目的意識や理念の存在が問われます。
 こういった中で、本日の2つの事例は以下のポイントにおいて学んだ講義だと認識している。

➀テクノロジーの「人間化」
 技術をただ単に技術としてでなく、人の想いや感情を軸に使用価値のある
もの・使いやすいものとして昇華させている事例である。
※事例:TABETEにおけるユーザビリティの高いマッチングアプリ運用
※事例:BRINGにおける再資源化技術による高品質アパレルの製品化
②経営資源の「共有化」
自社の理念や強み・固有性を視覚化することによって、組織間での経営資源の共通理解を進めている事例である。
※事例:TABETEにおけるブランド・エクイティなどの制定
※事例:BRINGにおけるオリジナルブランドの構築

 このような社会やユーザーやステークホルダーなどに対する理念提示型の経営のあり方を、最近では「パーパス型経営」とも呼ばれています。企業にとってのパーパスを具現化していくために、テクノロジーや企業メッセージ(理念など)をどのように組み立てれば効果的に広めていけるのか、2つの事例(『TABETE』と『BRING』)から読み取れる面があったのだと認識しました。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?