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日進月歩 ~Road to MBA~#151

2021/7/16:デザイン経営⑦
 金曜日は、公益財団法人日本デザイン振興会の寄付講座であり、新しい経営といわれている「デザイン経営」を職員でもあります秋元氏から学ばせていただいており、7回目の講義です(前講義#146)。早いもので、春学期も本日の講義が最終講義となります。
 本講義は、ゲストスピーカーとしてユニバーサル・サウンドデザイン株式会社(中石氏)とオムロンヘルスケア株式会社(荻原氏)をお招きし、講演をいただきました。

■ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社(中石 真一路さん)

 ソーシャルビジネスのデザインと育て方について、「comuoon(コミューン)」の事例を基にお話をいただきました。世界中の人と人や人と物における音声コミュニケーションをもっと快適なものに変えていこうと、スピーカーシステムによる聴覚障害者の⽀援という新しいビジネス分野を確立させた事例となります(既存のスピーカーでは難聴者の⼈たちを⽀援はできないことを把握できたのがきっかけとなる)。

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 これまで音や声が聴こえにくかった場合に、「音を大きくする」という対応をするのがほとんどだったと思います。しかしながら、聴こえないケースは「こもって聴こえない」というのがほとんどであり、こもった音を大きくしても聴こえにくさは変わらないという現状があります。マイクから入力された音を明確に分解し、聴き取りやすいクリアな音へと変換することで、誰でも「聴こえる」という世界観を目指しているものであります。
 また、ユニークな発想をもっており、難聴者側で補聴器を装⽤し聴こえを改善するのではなく「話をする側で⾳声を聞こえやすくする」という逆転の発想から、卓上型対話支援システムを発明しました。各国において特許を取得するよ動いており、インタンジブルアセットにおける見えない価値をビジネスモデルに組み込んでいる。国の補助金や助成金もうまく活用しながら、社会課題に対する解決方法を人に伝え続けてきた結果が現在にあるという。

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 最後に、中石さんにおける「仕事」とはどういったものか、働く際に気をつけている信条についてもお話いただいた。“会社のため”ではなく“誰かのため”という思いが、強ければ強いほど本物に近づくとお話いただいた。

・仕事とは・・・他⼈のために⾏うもの
・いまの仕事は・・・好きなことではなく、夢中になれる仕事ですか?
・働く=人+重+力(⼈の重きを取り除くことに⼒を注ぐ)


■オムロンヘルスケア株式会社(荻原剛さん)

 デザイン経営とは、『「かた」を見つけて「かたち」にすること』だとお伝えいただいた上で、社会課題を解決するための「ZERO EVENTS」についてご講演いただきました。特徴的であったのは、事業戦略や技術開発をユーザーへのアウトプットから考えていく(仮想カタログを作成し、その内容を基にユーザーの視点にたつことから「かたち」にしていく)ものである。ここで重要となってくるプロセスが、

・仮想カタログ:ユーザーへのアウトプットから思考していく
・UIプロトタイピング:UIを明確にすることで、「かた」を生成する
・オブザベーション:仮説を持たずに利用者を「観察」する
・プロトタイピング:見た目・機能などを定義し、まずは「試作品」を創る
・ユーザビリティテスト:ユーザーが見て分かるかどうかを重要視する

 であり、オムロンヘルスケア株式会社では「デザインビジョンBOOK」を全社員に配布して普及を行っている。ユーザーの本来の姿を社員に周知することを目的としており、本来のユーザーの先にも困っている人がいることを忘れないことであるなど、ユーザーにおける行動の「かた」、思考の「かた」を約40パターン掲載しているものである。

◉Design Story
(1)ウェアラブル血圧計「HeartGuide®」
(2)喘鳴センサ「WheezeScan」/スマートフォンアプリ「Asthma Diary」

 社会の現実と理念の狭間に向き合って何ができるのかを考え、その解決に向けてユーザーの行動パターンにおける「かた」を発見し、デザインを基に解決方法を考えていくことが重要となる。見つけた「かた」から「かたち」に変えてみることで、見えてくるものがたくさんあるとのことである。
 オムロンヘルスケア株式会社では、仮想カタログを技術開発の初期段階で実施することで、ユーザーと同じ視点にたって「かたち」にしてみることで同じ目線で議論することができる。特に新商品においては、どうやったら売れるか?売価はいくらか?コストをどこまでかけるか?など、戦略部門や営業部門、開発部門と議論をするための重要なツールにも成り得るという。
 商品を開発するための4つの壁(タイミングの壁、ノウハウの壁、役割の壁、予算の壁)について、いつもより一歩前の段階からデザインすることがデザイン経営の「かた」となっている。

■デザイン経営とは?

 講師の秋元さんから「デザイン経営とは?」という問いにおいて、振り返りをしていただけました。あくまでも主観的である定義付けになりますが、デザインが活かされた経営の3箇条は以下ということです。

・人を基軸にした経営(人のために何ができるのか、が基本)
・創造的に経営を展開する(アプローチを白紙から描ける)
・経営展開の隅々まで美的な一貫性を保つ(ユーザーとの接点)

 その3箇条を達成するためには「人材」が重要であり、必ずしも意思決定層やリーダー的存在だけが必要ということではなく、目的達成に関わる全てのメンバーにおいて”デザイン”への理解が備わることが望ましいものと考えられる。また、”デザイン”の価値や意義を共有化し、経営への重用や関与をもたらすことも必要になると感じている。

 ここまでの7回の講義を通して、私自身が感じた”デザイン”を基軸とした経営実践とは、人のために目的性を有しており、人を軸として界面≒接点を持たせながら、コミュニケ―ションを通じてともに成長していく手法であると認識しました。また、プロトタイピングを通じて、マーケットとの関係性の構築を実施しながらマーケティングや改良をデザインしているのも特徴である(=MVPの手法と同意義)と感じております。

◉「デザイン経営」における重要なこと
➀現実と理想の狭間を埋めるために、分かりやすく「共通認識」を持たせる手法として”デザイン”が利用できる
➁「個」に焦点をあてる(ヒューマンセンタード・デザイン)
➂プロトタイピングでユーザーに体験価値を与えて、声を聞きながらブラッシュアップしていく(ユーザーエクスペリエンス・デザイン)
④界面≒接点によるコミュニケーションの質(成し遂げたい目的を伝え続けて、ブランドを構築する)
⑤社会問題を解決するための手法として、理念掲示型・課題解決型として”デザイン”が用いられる(あるものを必要な人に届けるなど)

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平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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