見出し画像

日進月歩 ~Road to MBA~#146

2021/7/9:デザイン経営⑥
 金曜日は、公益財団法人日本デザイン振興会の寄付講座であり、新しい経営といわれている「デザイン経営」を職員でもあります秋元氏から学ばせていただいており、6回目の講義です(前講義#141)。
 本講義は、ゲストスピーカーとして一菱金属株式会社(江口氏)と株式会社菅公学生服(平井氏・山田氏)をお招きし、講演をいただきました。

■一菱金属株式会社(江口 広哲さん)

 本日は作り手視点によるデザイン経営(作り手・使う行為・環境にとって最適解である)いうことで、「conte」という新しいブランドについてご講演いただきました。従業員は14名という新潟県の中小企業ではありますが、新しいブランドを創り出すまでの経緯についてお話をいただけました。

◉新しいブランド「conte」の由来について
接頭辞 con~ や com~ ではじまる英単語にはwith~ together~ という意味があり、「conte」は、たくさんの職人の手(hand=Te)と"共に(with hands)"つくり、燕の分業の象徴とも言える"コンテナ(container)"で運ばれ、"長く使われ続ける(continue)"道具でありたいとの願いを込めたものであります(紹介動画もあり)。

 新しいブランドを構築するためには、「商品」と「流通」における”デザイン”が必要になる。そのため、地場産業や外部のプロフェッショナルに協力を仰ぎ、流通のプロフェッショナルとプロダクトデザイナーとメーカー(一菱金属)の3者で構築を始めて実施した事例となります。
 まずは、「商品」における”デザイン”となりますが、ステンレスを利用することで安定感があり倒れない、持った時の手当たりや強度も良い、混ぜやすいなどの機能性を持たせて、差別化している。且つデザイナーと共同製作できたことで、製造者と生活者が快適に使えて「ほんのちょっとずつ幸せになれる世界観」を生み出すことができたものとなります。
※下記写真は「商品」となるが、組合わせによって様々な使い方が可能

画像1

 次に「流通」における”デザイン”としては、商品のデザインをきちんと消費者へ伝えることができるように、まずはお店やバイヤーの方々にも商品を理解してもらうことを大切にした。また、これからこの商品を売って「どうなりたいか」を新しい社屋の空間にデザイン(見に行きたくなる、働きたくなるのが役割)することによって、差別化を生み出している。
※新しい社屋:展示会を兼ねた大きなキッチンが設置され、conteと業務用の厨房道具全アイテムを実際に使用して購入できるようデザインしている。

画像2

 まずはニーズを把握して実際に試してみることで、更なる改良しなければならない課題(本当の顧客のニーズ)が見えてくるものである。新しいデザインを組み入れることによって、新しく見えてくるものがあるということを教えてもらえた事例でもありました。
※感性的・文化的・機能的・社会的観点から”デザイン”を基に意思決定

■株式会社菅公学生服(平井 友和さん・山田 彩加さん)

 本日は作り手視点によるデザイン経営(作り手・使う行為・環境にとって最適解である)いうことで、「カンコー学生工学研究所」という新しいブランドへの取組みについてご講演いただきました。業界における歴史が古く、その時代に沿った価値を提供してきた学生服でありましたが、最近では制服に求められる「価値」も変わってきており、個性の大切さ(=学校の個性を表すもの)として様々な価値を提供するように変化が起きている。
 しかしながら、世の中の人口減少において「作れば売れる時代ではない」ことが課題としてもあげられた。課題を解決するためには謳うだけでない、真の価値を提供することが重要となってきており、消費者のニーズ(子ども・保護者・学校の先生など)をとらえることが本質であった。今回は以下の商品事例を基に、カンコー学生工学研究所がどんなことを実施し、価値を提供しているのかについて考えてみようと思います。

ミエンヌ(分析すると女性の下着が透けるのが気になる)
インフィニスタニットシャツ(分析するとシャツは見た目が気になる)

画像3

 この2つの商品から分かることは、「マーケットイン」の発想によって商品が生み出されているところにあります。学生・保護者・学校の先生などの消費者におけるニーズをとことんヒアリングすることで、学生服に何を求められているのか、本当のニーズを適切に満たせる商品を提供できているのかについて確認しています。商品に価値を創出するためにも、(A)分析機能⇒(B)開発機能⇒(C)検証機能が、継続的に実施されるよう”デザイン”されており、顧客のアンケート内容に応じて設計・開発がされています。
 また、学生たちを見つめる4つの視点に基づき、それぞれの機能がしっかりと”デザイン”され、「学生にとって本当に価値あるもの」を提供できるよう専門機関を設置した事例となります。消費者がきちんと価値や機能を感じているかどうか、未来において理想の学校生活が送れるように課題解決された制服・体操服を世の中に提供していくことが目標となっています。

画像4


■この事例に関わる”デザイン経営”のポイント

 一菱金属株式会社と株式会社菅公学生服は、共に成熟分野とされている業界である中で、新しい事業やブランドを立ち上げる場合において、”デザイン”をどう活用しているかをお聞きできた事例であります。想定されているユーザーのメリットを中核にし、ユーザーにおけるメリットを最大化した事業方針を採っている部分が、特徴的だと感じています。また、その目的を達成するプロセスにおいて、”デザイン”を活用しているようにも思えます。
 ここでの”デザイン”は、構想・計画のレベルだけでなく、個々の商品におけるクオリティ確保やユーザーに与える体験価値(ユーザーエクスペリエンス)づくりといった具体的な側面にまでも応用がなされています。

◉一菱金属株式会社「conte事業」
 拠点となっている新社屋は、販売拠点・ユーザー体験の拠点としてデザインされています。ユーザーに対する価値を提供するとともに、作り手である従業員に対しても接点(ユーザーや地域社会の人々との接触)を通じて、新たな体験をもたらす場所として創りあげられ、新しいビジネスを生み出している”デザイン”であると言えます。
◉株式会社菅公学生服「学生工学研究所」
 ユーザー1人ひとりに最後まで寄り添うという同社ならではの事業の立ち位置に加えて、改めて学生たちの実態に目を向けて深掘りを実施したことがきっかけとなり、これまで見過ごされてきたニーズやシーズを見出すことが可能となった。この行動こそが「新たな提案」に取組みができた源泉であると言え、実現のために”デザイン”を活用した事例と言えます。

 徹底してユーザーに寄り添うことで、そこから汲み取れるもの(ニーズやシーズ)の最大化を目指している中で、独自性の高いブランドが構築されていきます。構築するために”デザイン”を活用し、最大化に向けて促進していくための手段となっていることが理解できる事例となります。新しいブランドの構築のみならず、新しいビジネス(イノベーション)の促進をも生み出していることはいうまでもありません。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?