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<後編>2020 川崎フロンターレをデータで振り返る

まずこの記事は2020シーズンの川崎フロンターレをデータで振り返るの後編です。前編ではチームスタイル、ゴール期待値などの指標や得失点、パスなどのスタッツから今シーズンのフロンターレを振り返りました。本記事は後編となるので前編を読んでいない方は前編を是非読んでから戻ってもらいたいです。

後編となる本記事は、フロンターレのスタッツを各節の変化を見ながら、あの試合はこうだったな~など振り返っていきます。この記事ではかなり多くのグラフが登場します。中にはほとんど触れないデータもでてきます。自分には気づけなかったけど読んでくれた方には気づくことがあるかもしれないので掲載します。ですので何か気づいたことがあったら是非コメントやTwitterで教えてください!

この記事を書くにあたりFootball LABに掲載されているデータを使用させていただきます。

1.ゴールの量と質

まずはサッカーの醍醐味であるゴールから見ていく。

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青い縦棒がゴール数、赤い折れ線がゴール期待値、黒い数字がシュート成功率を表してる。つまり赤い線より上に棒が伸びていると期待値以上のゴールを決めていたことになる。
こう見ると4得点以上決めている試合はほとんどシュート成功率が20%を超えている。そんな中で13節の清水戦は12.8%とこの法則から外れている。憲剛が復帰したこの試合はシュートを39本打っておりシーズン最多を記録している。これは何を意味しているのか。それはゴ-ル期待値をみればわかる。4得点以上の試合はほとんど期待値を大幅に上回るゴールを決めているが、5節横浜FC戦とともにこの試合も期待値とほぼ同じくらいのゴール(さらにこの2試合は4得点以上の試合中シュート成功率が低い2試合)。ただしこの2試合はゴール期待値が最も高い2試合。つまりこの2試合が普通であり、ほかの大量得点は期待値の低いシュートを決めきったことでシュート成功率が上昇。その結果大量得点したと言える。
そう考えると、5節横浜FC戦と13節清水戦はチームで、他の4得点以上の試合は選手個人で得点を増やした試合だと言える。

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これは失点バージョン。今シーズンは3失点以上の試合はない。その傾向として期待値がすべての試合で2点以下ということがある。つまりどの試合でも決定機を作らせなかったと言える。もちろん前線の選手がハイプレスをかけてボールを簡単に運ばせなかったこともあるが、やはりDFとGKがしっかりシュートコースを消したこともあると思う。折れ線グラフつまり被ゴール期待値を見るとシーズン終盤に向かって徐々に上昇していることがわかる。特に27節鹿島戦と28節大分戦は高い期待値を記録している。しかし被シュート成功率は一桁。鹿島戦はシーズンで18本と最もシュートを打たれており、大分戦も12本と打たれている。結果として期待値を積ませることになったと言える。しかし相手の決定力や、フロンターレの選手の守備により失点を抑えられた試合だ。

2.30mとPAの攻防

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水色の棒が敵陣30mに進入した回数で、赤い面が敵のPAに進入した回数を表している。
こうして見てみると30m進入回数が少ない試合の多くは相手チームがゴール前に撤退するのではなく、ある程度前から守備を行ってきたチームだ。最終節のレビューでも書いたが今シーズンは昨シーズンと違い、退かれるよりも前から来られた方が上手くいかなかったとデータでもわかる。
そして目に留まるのは33節浦和戦だ。この試合では浦和の30mに進入した回数が104回とシーズンでダントツの回数を記録している。したがってPA進入回数も多い。しかし30m進入回数の多さにしては少ない。そこでこの試合のレビューを見返してみた。

それでわかったのは浦和のMFラインがDFラインに吸収されることが多く、MFラインの手前(ピッチで言うとPA枠の外)でボールを回すことが多かった。守田の得点もその位置から生まれた。その結果PAに侵入することが難しかった。

ここでPA進入回数が多い方が得点に近づくのか調べてみる。ゴールはシュートを打った人の能力に左右されるので、シュートを多く打てるのかという観点で調べる。

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これは各節のPA進入回数を横軸に、シュート数を縦軸にとった散布図。これを見るにPA進入回数が多いとシュートが多くなっていることがわかる。両データの関係の強さを表す相関係数は0.69と高い数字で、関係があることを示している。やはりシュートを多く打つにはPAに進入することが重要だ。
しかし試合ではシュートを多く打つだけではなく決めきらなければならない。そこで同じく相関係数をシュート数に代わってゴール期待値で計算してみた。結果は0.56とシュート数に比べると低い数字となったが、関係がないわけではなさそうだ。

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次に自陣の30mとPAに進入された回数のグラフ。
45回以上30mに進入された相手チームのうち横浜の両チームと神戸はポゼッション型のチームだ。しかし札幌はボールを持てるチームとはいえ6-1で勝利したが、多く進入されている。これは意外なデータだった。
9節大分戦の被PA進入回数はなんと0回。フロンターレがずっとボールを持っていたのかというとそうでもない。ボール支配率とパス数はどちらも大分の方が高くて多い。疑似カウンターの大分だが自陣でボールを繋ぐだけで、なかなか攻めきることができなかったとわかる。

3.攻撃回数とチャンス構築率

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水色の棒は攻撃回数を、赤い折れ線はチャンス構築率をあらわしている。チャンス構築率はシュート数を攻撃回数で割ったもの。1回の攻撃でシュートを打つ確率がわかる指標だ。攻撃回数が多いということはよりオープンであるということ。フロンターレのようにボールを持ち続けるチームは攻撃回数は少なくなる。
攻撃回数が多い試合の相手を見ると、フロンターレが苦戦した相手が多い。フロンターレが苦戦し、ボールロストが多くなる。しかしボールをすぐに奪い返すことができるので攻撃回数が多くなったとわかる。ただマリノスには苦戦したとは言えない。マリノスは攻撃回数とボール支配率がリーグ1位でボールを奪われてはすぐに奪い返すというハイテンポな試合展開をしている。その相手に合わせた結果この数字になったと考えられる。
13節清水戦は異常なチャンス構築率をたたき出している。シュートを39本打ったことは紹介したが、攻撃回数は平均的なので高いチャンス構築率となっった。

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これは被攻撃回数と被チャンス構築率のグラフ。
4節柏戦と33節浦和戦はかなり低い被チャンス構築率を記録しており、シーズンで相手チームに最も効果的に攻めさせなかった試合と言える。この両チームはフロンターレに対してカウンターを狙ってきたチーム。カウンターを受けてもシュートを打たせずに守ったためこの数字になった。
被チャンス構築率が高い試合はどれも苦戦した試合が多い。特に後半戦の名古屋戦、鹿島戦、清水戦は高い数字になっている。この数字を見ると負けていてもおかしくない。しかしこれまでのグラフと照らし合わせると、被PA進入回数が少なかったり、被シュート成功率が低かったり、被ゴール期待値が低かったりと負けなかった原因がわかる。

4.パスとボール支配率

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水色の棒がパス本数(試行数)で黒い数字はパス成功率、赤い折れ線はボール支配率を表している。
棒グラフと折れ線グラフの変化が同じことから、当たり前だがパス数が多いとボール支配率も高くなることがわかる。さらにパス数が少ない試合はパス成功率も低く、ボールを上手く繋げない試合は自分達のペースにできないためパス数も少なくなるのだと思う。
31節清水戦と33節浦和戦はパスを非常に多く繋いでいる。しかし両試合の結果は正反対。清水戦はギリギリ追いつきドロー。浦和戦はフロンターレペースで試合が運び3-1で勝利した。

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上のグラフは青い棒グラフと数字は前のグラフと同じ。赤い面はシュート1本あたりのパス数を表している。このパス数が多いほどシュートを打つまで多くパスを繋いでいるということ。ここでさきほどの31節清水戦と33節浦和戦を比較してみる。すると清水戦は多いが浦和戦は少ないことがわかる。つまりパス数やボール支配率が同じでも、パスを効率良く繋げているかが試合を分ける。他の試合を見ても12節名古屋戦、24節神戸戦、26節札幌戦、28節大分戦など勝てなかった試合はこのパス数が多くなっている。

5.クロスと成功率

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水色の棒がクロス数で折れ線がその成功率を表している。赤色は被クロスの場合の値。ゴチャゴチャしていて見にくい部分もありますが、ゴチャゴチャしている部分は平均的なデータということでもあります。
フロンターレのデータから見ると、21節仙台戦と30節マリノス戦にクロスを多くあげていることがわかる。しかし両試合とも成功率は低く効果的なクロスを送れていたとは言えない。この2試合を含めたクロスを20本以上記録した試合のスタメンで起用された選手を見てみると、旗手と学のどちらかが出場している場合が多い。どちらもスタメンではない試合もあるので、100%とは言えないが2人がスタメンの試合はクロスを増やしたい狙いがあるのかもしれない。
被クロスが多い10節札幌戦と22節広島戦は既に紹介した被攻撃回数が多い。ボールを奪われる回数が増えたりしてオープンな展開になるとクロスをあげられる回数が多いのかもしれない。

5.ドリブルと成功率

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これはクロスのグラフのデータをそのままドリブルにしたグラフ。ドリブルといえば三笘。ということで三笘がスタメンで出場した試合と途中出場した試合でドリブル回数は違うのかザッと見てみた。すると意外と変わらないことがわかった。スタメンでも途中出場でも多い試合もあれば少ない試合もある。
ドリブルが最も多かった2試合はどちらもマリノス戦。これは完全にマリノスのハイラインを狙っていたということがわかる。実際に両試合とも三笘のドリブルからゴールが生まれている。
最もドリブルをされた試合は26節札幌戦。やべっちスタジアムではルーカスフェルナンデスがドリブル最多と紹介されていた。また、ドリブルでも最多ということで、被ドリブルのグラフを見返すと10節札幌戦が最も多い。ルーカスフェルナンデスが札幌にとっていかに重要な選手かがわかる。

6.タックルと成功率

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これまでのデータは飛び抜けたデータがあったが、タックルのデータではあまりばらつきはない。
ただ、これまでのデータでは同じ試合でも片方のチームが多いという試合が多かった。しかしこのタックルはどちらか一方のチームが多いということはなく、両チームとも多いまたは少ない。つまりタックルが多い試合はよりボールが行き交う展開であったということ。実際に攻撃回数と比較してみると増減が一致しているので、タックルが多い試合はオープンな展開であったことがわかる。

7.インターセプトとクリア

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上のグラフはインターセプト、下のグラフはクリアをフロンターレと相手チームのデータを棒グラフにしたもの。この2つのデータは成功率は存在しないので棒グラフのみ。

この二つのデータに関してはあまり触れませんので、気づいたことがあれば是非ご連絡ください。

8.まとめ

前後編に渡って今シーズンのフロンターレをデータで振り返ってきました。様々なデータを見てきましたが、印象と同じものもあれば違うものもあったのではないでしょうか。また、複数のデータを比べることで見えてくることもあるので複数のグラフを見比べてみると面白いと思います。そして今日の試合でフロンターレは秋田に勝利し天皇杯決勝に進むことが決定。決勝がどんな試合になるのか予想してみるのも良いと思います。

本記事を書いている間に思いついたことなど、このオフ期間にデータに関する記事を書いていこうと思うのでよろしくお願いします。

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