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<前編>2020 川崎フロンターレをデータで振り返る

開幕戦で鳥栖をホームに向かえて始まった今シーズン。シュートもかなりの本数を打ち一度はゴールネットをゆらしたものの、今シーズンから導入(コロナ後は見送ったが)されたVARに取り消されてしまい結果としてはスコアレスドロー。今シーズンもまた引き分けを見ることになるのかなあと不安があった。そんななか新型コロナウイルスの影響でJリーグは中断を余儀なくされてしまった。そして再開後は10連勝と12連勝を達成。憲剛が復帰戦と誕生日にゴールを決め引退を発表。その後チームは勝ち点を落とすことが増えたが、1位と2位の直接対決となるホームガンバ大阪戦で優勝を決めた。

コロナ渦という気分が落ち込んでしまう世の中で過密日程にもかかわらず、強さを維持しファンサポーターに元気をくれた川崎フロンターレに感謝しかない。そんなドラマもたくさんあった今シーズンをデータで振り返ろうというのが本記事の目的。本記事は前編と後編に分かれており、この前編では今シーズンのフロンターレのスタッツをJ1リーグの平均値と比較して強さの原因を探っていく。そして後編では毎試合のスタッツをグラフにし各節のデータの変化とともに試合を振り返っていく。前後編ともに難しそうなデータ分析というわけではなく、単純にデータはどんなことをあらわしているのか?という視点で見ていこう思うので是非どちらも気楽に読んでいただきたいです。

後編はこちらです。

この記事を書くにあたりFootball LABに掲載されているデータを使用させていただきます。

1.チームスタイル

ここで使用するデータは12/5までのデータとなっており、最後の3試合のデータは含まれていませんが、シーズンの傾向としては31試合分のデータで十分なので使用します。

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これはチームスタイルの指数をレーダチャートにしたもの。各項目にあたるプレーの指数が高いとそれがそのチームの得意なプレーだと思います。
まず最も指数が高い項目はやはり敵陣ポゼッション。これはフロンターレの代名詞と言えるプレーではないだろうか。敵陣でボールを回しながらじっくり攻めるのがスタイル。また、自陣ポゼッションの指数が低いということから自陣でポゼッションする時間帯が少なく簡単に敵陣にボールを運べたこともわかる。
攻撃において次に高いのが左サイドと攻撃セットプレー。今シーズンはやはり三笘がいたので左サイドでの攻撃が多くなる。家長が左サイドまで出張してくることもあるのでなおさら。そして攻撃セットプレーも今シーズンの武器。後述するがセットプレーから17点決めており総得点の19.3%にあたる。スローインもゴールに結びつくように設計されており、セットプレーでも得点できるのも今シーズンの強さの秘訣ではないだろうか。
そしてハイプレスも高い指数を記録している。敵陣ポゼッションとともにハイプレスもフロンターレの代名詞と言えると思う。個人的に2018シーズンにはハイプレスでボールを奪い得点を決めることが多かったが、2019シーズンはそれが少なかったなと感じていた。しかしそれが今シーズン戻ってきたこともまた強さの理由。実際にハイプレスの成功率は2019シーズンに減少し、今シーズンまた上昇した。指数とともに成功率はリーグトップの数字。
このハイプレスとともにショートカウンターの指数も高い。ハイプレスの成功率が高いことがショートカウンターも増加させていることがわかる。ハイプレスはボールを奪いそして高い位置からシュートを目指すことが目的。その目的を果たすことができたのではないだろうか。

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次に各項目のゴール率とそのリーグでの平均値を見ていきたい。赤色が平均値で水色がフロンターレ。まずすべての項目で平均値を上回っている。どんなプレーにおいてもゴールを奪うことができる、それがフロンターレの強さ。
まずロングカウンターは平均値からかなり差をつけている。チームスタイルの指数としてはロングカウンターは低い数字。そもそもロングカウンターが少ないのはフロンターレが敵陣でボールを持つことが多いからだが、ロングカウンターのチャンスが生まれた時にはそのチャンスを確実にものにしている。その象徴といえるプレーはホームマリノス戦のAT三笘のドリブルだ。三笘や家長のような一人でもっていける選手のおかげでこの数字は高いのだと思う。
攻撃セットプレーのゴール率が高い要因はやはり今シーズンのセットプレーの豊富さ。自分もセットプレーについて記事を書かせてもらいました。戸田コーチが練り上げたセットプレーの豊富さがゴールの確率を上げたと言えると思う。

2.得失点と期待値

まず期待値とは何か。

期待値とは「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率」を0~1の範囲で表した指標

Football LABには書かれています。ですので数値が高ければ高いほど得点に結びつくシュートであったということです。

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これは期待値と実際のゴールを1試合平均にして棒グラフにしたもので色はさきほどと同じです。まず赤色のリーグ平均の期待値とゴール数がほぼ同じであることから、この期待値の精度の高さがわかります。

フロンターレはどちらにおいてもリーグ平均以上の高い数字。得点はもちろんですが期待値においても圧倒的な攻撃力があったことがわかる。得点も期待値も連勝中にはこれ以上に高い数字を残していたが、シーズン終盤の得点減少によりこの数字に。しかし得点に結びつく確率が高いシュートを打ち続けたことが大量得点の要因。そして注目すべきは実際のゴールが基地値を上回っている点。これからわかるのは確率の低いシュートもゴールを決めていたことがわかる。量と質どちらも良いパフォーマンスだったということだ。

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これは被ゴールバージョン。被ゴールつまり失点のこと。失点においてもフロンターレは期待値より少ない失点。期待値の高いシュートもソンリョンのセーブやDF陣のブロックにより失点を防いでいることがわかる。そしてやはり平均よりも少ない失点と期待値。守備においても量と質ともに良いパフォーマンスだったとわかる。

3.得失点のプレー割合

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上の円グラフは今シーズンフロンターレがリーグ戦であげたゴ-ルをプレーごとに分けたものです。
最も多く得点しているのはショートパス。これはもう特に何か言う必要はないでしょう。次に多いのはセットプレー。これまでも述べてきたようにセットプレーで苦しい展開の中でも得点をとれてきたからこそ、他のオープンプレーでも得点を量産できた。来シーズンにはどんなセットプレーが見れるのか楽しみだ。
後述するがフロンターレはペナルティエリアに進入した回数がリーグで最も多い。その分PKももらいやすくなるのでPKからの得点も多い。そして最も注目しているのはこぼれ球。こぼれ球からの得点はダミアンや悠が貪欲にゴールを狙った結果。他の選手がシュートを打った時点でこの二人がゴール前に飛び出しているのを何度も見た。

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続いては失点。最も失点しているのはクロスとショートパス。それでも7失点なので悪い成績ではない。さらにショートパスは最も得点しやすいプレーなので失点として多くなるのも普通だ。全体として失点数が少ないので、どのプレーが弱点だったとは言えない。逆に注目したいのが失点していないプレー。このグラフには消えてしまっているが、ロングパスでの失点はしていない。さらにドリブルもたった2失点のみ。この二つが示してるのはDF陣がいかに堅かったか。スピードがあり対人にも強いDF陣がいたことでロングパス1本で失点や、ドリブルで抜かれてしまい失点などがなかったということ。安心できる頼もしいDF陣がいたからこそ、攻撃陣が力を発揮できた。

4.スタッツ

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これはFootball LABに掲載されている今シーズンのスタッツを抜粋したもの。
もちろんゴールとシュートは1位。これは納得の数字ではないだろうか。それにともない枠内シュートも1位。シュートをたくさん打っているのに枠に飛ばないなんてチームもあるので、やはり量と質ともに良い成績を残すのは難しい。
スタッツにもフロンターレのスタイルが表れている。30mラインとペナルティエリア進入回数が2位と1位(その立役者は三笘でPA侵入回数がリーグトップの数字を記録した)ということで、ただボールを持って攻撃するのではなく、しっかりとボールを前進してチャンスに繋げてることがわかる。補足をすると攻撃回数はボールを奪ってから奪われるまでを1回と数えるので、フロンターレのように1回の攻撃でボールを持つ時間が長いと、その分攻撃回数は減る。それに対してボール支配率はボールを持っていた時間なので53.9%で3位という数字になっている。
また、ペナルティエリアに侵入しさらにシュートを打つ本数も多いとなると、必然的にコーナーキックも多くなる。他チームからしたらシュートを打たれてなんとかブロックしたとしても、得意なコーナーキックを与えてゴールを決められるのだからたまったもんじゃない。
そして守備面のデータを見てみるとクリアは13位。これはそもそも攻められていないのだから少なくなるのは当たり前。攻められてるチームにとってクリアが少ないのは良くないし、解釈が難しいデータだなと感じた。しかしそれ以外のタックルとインターセプトは3位と4位。これもフロンターレのスタイルを表している。ハイプレスでボールを取りに行くのが上手くいっていた証拠だと思う。

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これは攻守におけるフロンターレがボールプレーしたエリアを表している。画像に書いてあるとおり、リーグ平均よりも多くプレーした場所は赤で少なかった場所は青になっている。これは守備でボールに触れたプレーも含まれているが、フロンターレはそもそもその回数が攻撃に比べてかなり少ないためこの図は攻撃時のプレーと考えても良いと思う。こうしてみるとやはり敵陣でプレーしたことがわかる。さらに言えばサイドでプレーしていたことが多い。WGを中心にサイドでトライアングルを入れ替えながら攻めるフロンターレのスタイル。

5.パススタイル

スタッツであえてパスについては触れなかった。1試合平均で619本のパスを繋いだフロンターレだが、そのパスついてもっと深掘りしたいと思う。

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まずはパスの長さを見てみようと思う。黒い数字はそれぞれのパスタイプの成功率。ショートパスが最も多いのはもちろんだがミディアムのパスも使用していることがわかる。さらにミディアムのパスの成功率は87.6%と高い数字。短いパスだけでなく、中距離のパスを精度高く使用していたこともわかる。短いパスだけではやはり手詰まってしまう。そこで中距離のパスを使うことで相手の守備ブロックを揺さぶることができる。

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次はパスのエリア別。ピッチを横に3分割して前から1st.2nd.3rdとした。フロンターレがグラフを右から左に攻めていると考えるとわかりやすいと思います。
すべてのエリアで成功率が80%を上回っている。さらに言えば中盤の2ndエリアでは89.1%と約9割は成功していることになる。また、自陣より敵陣方がパスを多く繋いでいることがわかる。同じポゼッションをスタイルとしているチームでも、大分トリニータなどは真逆の結果になるのではないだろうか。

簡単にパスのタイプとエリアを見てみた。印象と似たようなデータだったと思う。このデータに関しては後日J1のデータ分析として散布図を使って記事を書く予定なのでそちらも是非。

6.まとめ

今シーズンのフロンターレをいろいろなデータを使い簡単に振り返ってみました。いかがだったでしょうか。複数のデータを組み合わせることで新しいものが見えてきたり、印象に確実性を持たせることができたと思います。また、読んでいただいた方がグラフを見て築いたことなどがあれば、コメントやtwitterで是非ご連絡ください。

さて、前編はシーズン全体のデータを振り返ってきましたが後編では試合ごとの変化に注目して見ていきたいと思います。

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これは自分がシーズン中に試しに作ったグラフです。何を示しているかは後編のお楽しみということで。だいたいこんな感じのものを作ろうと思っているので、後編も是非読んでいただきたいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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