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433川崎フロンターレへの対策と来季への改善点そして3バックを考えてみる。

川崎フロンターレは2020シーズンに圧倒的な攻撃力を武器に優勝した。そして2021シーズンには勝負強さを武器に優勝した。こうして武器は違えど連覇を達成した。自分の応援しているチームではあるが、どちらのシーズンも2位との勝ち点差を考えると独走と言えると思う。しかし独走とは言えシーズン終盤には勝ち点を落とすことが多く、対策されているなと感じる試合も多かった。そこで川崎フロンターレへの対策を考えてみようと思う。自チームの対策を考えるなんて傲慢だと思われてしまうかもしれない。確かにそうだが本来の目的は、その対策を考えることで来シーズンに向けての改善点が浮き彫りにすることだ。まだわからないが、鬼木監督はすでに来シーズンのことも考えており、3バックになることも想定しているかもしれない。そこで来季3バックをやると仮定してどんなチームになるのかも考えてみたい。

1.433川崎フロンターレの弱点と対策

まずは2020シーズンから始めた川崎433の弱点を考えてみる。個人的に川崎433の弱点はハイプレスとビルドアップにあると考える。特に相手チームがハイプレスを仕掛けてきた時のビルドアップには深刻な問題を抱えている。この2シーズンでコンディションが良いにも関わらず苦戦した試合は、2020シーズンの第26節ホーム札幌戦、第32節アウェー鳥栖戦、そして2021シーズンの第16節アウェー湘南戦、第34節ホーム浦和戦、第35節アウェー鳥栖戦などで、どれもインテンシティ高くハイプレスをかけられた試合だ。川崎は中盤から先でのボール保持や崩し、自陣での撤退守備そしてトランジションではかなり強いが、ハイプレスやビルドアップに付け入る隙があると思う。

・ビルドアップ
どのチームもある程度のミドルプレスやハイプレスはかけてくるものの、インテンシティ高く90分間通して続けられた相手は多くなかった。その中でも上記の試合ではフロンターレをしっかり対策してハイプレスをかけてきた。

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川崎の基本的なビルドアップは上の通り。川崎のビルドアップのキーポイントは中盤3枚と家長になる。多くのチームがミドルプレスをかけてくる中で、アンカーが相手の2トップの間や1トップの後ろにポジショニングすることで、彼らの注意を引き付けてCBに時間を与える。さらにIHがハーフレーンを上下することで相手の中盤を引き出そうとする。川崎がプレスを突破できる試合はこの中盤3枚へのマークが緩かったり個人で突破できることが多い。しかし先述したような苦しんだ試合ではこの中盤3枚に対してマンマークでかなりインテンシティ高くプレッシャーをかけてきた。さらに川崎2CBに対しても激しくプレッシャーをかけてきた。そして川崎の2CB(谷口とジェジエウ)はビルドアップが特別上手いわけではないため、前に運ぶドリブルや体の向きと違う方向にパスを出してプレスを回避することができない。2CBが個でハイプレスを突破できないならチームとして対策する必要がある。

ここに川崎のビルドアップにおける問題点がある。まず中盤3枚と2CBという中央の選手をマンマークではめられた場合にズレを作ってビルドアップをしようとすることがあまりない。2CBに対して2トップでプレスをかけてきた場合後ろを3枚にしてビルドアップすることが必要かもしれない。

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後ろを3枚にするためには大きく分けて2パターンある。まず1つめがアンカーなどの中盤の選手がDFラインに落ちて3枚を作るダウンスリーと呼ばれる形。2つめは片方のSBが中央に絞って2CBが横にズレる片上がりと呼ばれる形。
しかし川崎はどちらも決まり事として持ってないように見える。中盤の選手個人がその瞬間の判断で降りてくることはあるが、特に2021シーズン後半にはアンカーが2CBの間に降りる形は全く見られなかった。おそらく鬼木監督は中盤の選手がDFラインに落ちた状態でボールを失ったときのリスクを考慮してダウンスリーはしていないのかもしれない。そして片上がりに関してはこれまで全く見られなかった。しかし2021アウェー鳥栖戦の後半20分ほど3バックにしたが、それは左SBの登里が左WBになり右SBの山根が右IB(インサイドバック:3バックの両端)に絞る左片上がりだった。マンマークではめられた時に3枚にしてズレを作るという対応策を明確にやったのはこれが初めてだと思う。

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ただマンマークではめられた時の対応策はズレを作るだけではない。ほかの対応策はまた別の選手の質に頼ることだ。例えば中盤3枚がマークしてくる相手選手をターンで交わしたりすることだ。そして川崎にとって最も大きかったのは家長の存在だ。家長が右サイドから自由に動いてボールを受け取ってタメを作り、前向きでボールを受けれる後ろの選手に渡すことでハイプレスを回避できる。これはダミアンにも同じことが言える。こうして上手くレイオフを使っていくと回避できる。しかし2021アウェー鳥栖戦ではこの両選手がいなかった。このようにマンマークではめられた場合に突破するには、車屋や山村をCBにして、閉まった相手CFの脇を運ぶ(上の画像左サイド)か家長や中盤3枚に頼る(上の画像右サイド)という個の能力に頼るしかなくなる。しかし先述した試合では彼らが封じ込められてしまったため苦戦した。

・ハイプレス
ハイプレスに関してはビルドアップほど問題ではないが対策されてきている印象がある。

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フロンターレのハイプレスはWGが相手CBに外切りでプレスをかける。しかしこの時にパスコースが切れていなかったり(上の画像左サイド)、ボランチを経由されてフリーのSBに出されてしまう(上の画像右サイド)。これが川崎ハイプレスにおける構造上の弱点だ。SBに出された時はIHが中央から追撃する。そうするとちょうどハーフスペースにスペースができる。また、IHが追撃できないとSBにそのまま運ばれてクロス(川崎はクロスからの失点が9点で最も多い)をあげられてしまう。このようにフリーのSBに出されてしまうことが多かった。しかしここは修正されることがなかった。

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ただこれに関してはWGが高い位置に残れるハイプレスの構造による弱点なのでトレードオフで考えると鬼木監督はこの弱点よりもポジトラでWGを活かせる利益(上の画像左サイド)の方が大きいと考えている可能性もありビルドアップほど問題ではないかもしれない。ただ最近は相手ボランチをダミアンがマークするのかIHがマークするのかあいまいでボランチにターンされることも多い(上の画像右サイド)。このようにいくつか綻びが出てくるとハイプレスでボールを奪えなくなる。そうなれば高い位置のWGも活かせないためハイプレスの効果がなくなってしまう。

・433川崎への対策
このように川崎相手にはビルドアップに対してマンマークではめてインテンシティ高くハイプレスをかける。そして川崎のハイプレスに対しては落ち着いてSBを経由して外回りでボールを運ぶことが効果的だと思う。2021アウェー鳥栖戦では金監督が川崎に対してリスペクトしすぎずに試合に臨むと語っていたが、まさに攻守で川崎に真っ向勝負で挑まれた方が川崎としては苦戦することが多い。

2.来シーズンへの改善点

次にこれらの川崎への対策を踏まえて来季への改善点を考えていきたい。この改善点では来シーズンも433を継続した場合について考える。

・ビルドアップ
まずはビルドアップについて。川崎ビルドアップの弱点は配置を変えることが少なく選手個人の能力に頼っている点。そのためまずは配置を変えて相手との噛み合わせをズラしてボールを運ぶことが手っ取り早い来シーズンへの改善点となる。

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先述したように4枚から中盤の選手を落とすダウンスリーで3枚にしてビルドアップすることを鬼木監督はあまり好まない。従って片上がり型の可変でズレを作りたい。例えば湘南時代に右IBをやっていた山根を内側に入れて左SBの登里を高い位置に上げる左肩上がりの形。ただこの場合には左WGにマルシーニョのように幅を取ることが得意なタイプではなく、遠野のような内側に入ることが得意な選手を起用する必要がある。もしくは左SBを車屋にして右片上がりにする形もある。このようにIBに運ぶドリブルができる車屋や山根を配置することも重要だ。

可変システムで相手の噛み合わせを外す以外にもビルドアップを改善することができる。それはSBのポジショニングとGKの積極的なビルドアップへの参加だ。まず、川崎SBは低い位置からのビルドアップで外に開くことが多い。しかしこのポジショニングだとパスを受けても縦のWGもしくは低い位置に降りてきたIHやアンカーにしかパスコースがない。そしてSBがボールを持った時はたいていWGと中盤の選手はマークにつかれており、そのまま相手の同サイド圧縮にハマってしまう。これは冨安が内田との対談で話していたはハメパスの概念と同じだ。

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しかしSBが少し内側でボールを受けることで外側のWG、中央のIHやCF、やり直すためのCBとパスコースが増える。そのため相手チームは次のパス先が予測しづらく同サイド圧縮をかけづらい。このようにSBのポジショニング一つでビルドアップを改善できる。

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また、GKが積極的にビルドアップに参加することで相手より1枚多い数的優位でボールを回すことができる。近年ソンリョンは足下の技術が向上しており、技術的にはGKを含めたビルドアップも問題ないと思う。あとは細かなポジショニング(同サイド圧縮にハマった時に逃げ所としてPAの端でバックパスを受けるなど)を仕込むことができればさらに安定してビルドアップを行うことができる。来シーズンからの加入が内定している桐蔭横浜大の早坂選手は中距離のパスを得意としており、細かいパスを繋いで相手を引き出して、スペースのあるライン間に低弾道のパスを通すことができる。彼が台頭してくることも非常に重要だ。

・ハイプレス
次にハイプレスについて。ハイプレスに関してはビルドアップよりも完成度が高いため、大きな改善点などはないが、433でハイプレスをかける場合の構造に弱点がある。WGを高い位置に残してポジトラで彼らを活かしたいという意図がある以上、構造上の弱点をなくすことはできない。そのためハイプレスの質の向上が求められる。

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例えば先述したような相手ボランチへの対応だ。ダミアンが相手のCBやGKにプレスをかけた場合にIHが縦スライドしておらず相手ボランチをフリーにしてしまう現象がある。相手がSBを使ってサイドから攻撃してきた場合にIHはサイドに追撃するタスクもあるためボランチに必ず縦スライドすることを要求するのは難しいかもしれない。それならばダミアンに相手ボランチをマークさせて、相手CBやGKにはWGがプレスをかけることでこの現象を確実に防ぐことができる。とは言えダミアンの猛烈プレスもチームにとって武器であり難しいところだ。

ただやはり2021シーズン後半になると浦和戦や鳥栖戦、マリノス戦のようにSBやボランチを使われてハイプレスを突破されるシーンが多くなった。来季も433を継続するなら改善する必要があると思う。逆に言えば改善できないもしくはしない方が良いのなら433のメリットは半減してしまう。だから鬼木監督は3バックを考えているのかもしれない。

3.来シーズン3バックの陣容

ここまで書いてきたビルドアップとハイプレスの弱点を解決する策として3バックが挙げられる。3バックと言っても、大きく343と352に分けられる。鳥栖戦で見せたのは352だったが今回は343のメンバー構成についても考えてみたい。ここでは先述した433でのビルドアップとハイプレスの改善点がそれぞれどのように改善されるのかという点で考えていく。選手の移籍に関してはまだ何もわからないので新卒選手以外は今季と同じメンバーで考えます。

・3バックのメリット
先述したような433での弱点を3バックでは改善することができる。まず先述した4バックからの可変と同じで3枚にすることでビルドアップが安定する。また、ハイプレスではおそらく343でも352でも五角形を利用したプレスになるはず。するとWGのシビアな外切りプレスではなく、組織的な中切りのプレスになる。マリノス戦のようにフリーのSBを起点に一気に突破されることは少なくなる。

・3バックのデメリット
メリットがあればデメリットもある。まず433で活かしてきたWGを使えなくなる。攻撃時に幅を取るのは基本的にWBとなる。そのWBにWGタイプを配置すると撤退守備で最後尾まで帰陣する必要がある。それに伴いポジトラではWGタイプを起点にボールを運ぶことができない。チームとして見るならば3バックのメリットが大きいが、WGタイプの選手にとってはデメリットの方が大きくなってしまう。

・352

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352の予想メンバー構成はこちら。黒く囲われている選手はIBとWBのどちらかで、白く囲われている選手はWBかCFでプレーすると予想される選手。こうして見るとIBとWBどちらもこなせる選手が多く、このような選手はSBもプレーできるため4バックとの可変も可能だ。しかし、ドリブルを武器とするようなWGタイプの選手が352だと活きにくく、CFかWBのどちらが適正か見極める必要がある。そして2トップになることで豊富なCFを多く起用することができる。ダミアンや知念のようなポストプレータイプと、小林、遠野、五十嵐の動き回るタイプの共存が可能だ。その一方で余剰戦力なのがアンカー。おそらく松井はシーズン当初から試合にからめると思うので、橘田をIHにすることもできるがそれでも人員多寡なのは否めない。

・343

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ほとんどのポジションに3枚ずつとなりバランスが良い。黒く囲われてる選手は532と同じで、白く囲われている選手はWBとシャドーのどちらかでプレーすることが予想される選手。352と同じくWGタイプは悩ましいがシャドーを外に張らせることで解決できるかもしれない。343で最も悩ましいのは脇坂だ。上の画像ではボランチに置いたがシャドーの方が良いかもしれない。シャドーでプレーすることになればよりフィニッシュに関わることが求められる。

・352と343どちらが良いか
もちろん343と352でも細かい違いはあるが長くなってしまうので割愛。個人的には豊富なCFと中盤3枚のユニットを活かすことができる352の方がよりフィットしやすいと思う。ただ343の方が5レーンやピッチ全体に選手がバランス良く配置されておりビルドアップも安定する。チェルシーのように流動的にすることができれば343の方が爆発しそうではある。問題は2ボランチの脇をIBが前に出て潰さなければならないがジェジエウが負傷していること。これを考慮すると352の方がローリスクではあると思う。チェルシーが343でCLを優勝したりと343を見てみたい気持ちも大きいが難しいかもしれない。

4.まとめ

今回は2020〜21シーズンの433川崎フロンターレの弱点とその改善策、また来季3バックにした時の人選を考えてみた。実際に3バックをやるかどうかなんてわからないが、あれこれ考えてみるのも面白い。念願であるACL制覇と3連覇に向けて鬼木監督はどのようにチームを作っていくのか楽しみだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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