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J1第5節 ヴィッセル神戸対川崎フロンターレ データレビュー

ノエスタでの試合は良いイメージがあまりないフロサポも多いはず。もちろん私もそのうちの一人。いつも試合前はどんなサッカーを魅せてくれるかわくわくするのだが、前節の試合内容のこともあり不安要素があるなかで迎えたアウェー神戸戦。
前節同様今節も相手の守備に苦しみ、前半からなかなか上手くボールを繋ぐことができない。後半にはダミアンのスーパーゴールで先制したものの、試合終盤にオープンな展開になり菊池に攻撃でもやられてしまい1-1の引き分け。前節も言ってしまえば三笘の個人技から。チームとして崩しシュートをする場面はあったのだから決めきりたかった。

1.スタメン

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2.前半~神戸の同サイド圧縮守備に苦しむ~

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昨シーズンにボール支配率が50%以上だったチームのPPS平均は41。神戸は60でフロンターレは77.3とお互いPPSは60超えでポゼッションを得意とするチームにしては高い数字となっている。ただその原因は両チームでは違い、解釈の仕方も変わってくる。
キックオフ直後のロングボールからもわかるように神戸は昨シーズン同様フロンターレに対してビルドアップで真っ向から勝負というよりはロングボールを比較的多く使ってくる。パス総数が506に対してロングパスが83という数字にも表れている。そのためシュートを打てるかどうかはロングパス先でのボール奪取に依るのでシュートは多くならない。その結果PPSは高くなる。
一方でフロンターレはビルドアップからショートパスを使って攻めていく姿勢は貫く。しかし後述する神戸の守備に苦しみパスを繋ぐことに精一杯となりパス数が多くなった結果PPSは高くなった。

パスヒートマップを見るとお互いに左サイドが多い。フロンターレの武器でもある三笘のサイドにボールが集まればチャンスは多くなるはずだったが、今節は山川と菊池に封じられてしまった。
神戸はバイタルエリアと両ハーフスペースに4本パスが入っており、これはフロンターレの45分間平均で通されたパス数を上回っている。ロングボールで裏をちらつかせて間延びしたライン間にパスを送るよことで効果的にパスを回していた。
フロンターレのEPP45分平均は50.5で前半ではだいたい平均どおりの数字を残している。しかしフロントエリアとファジーゾーンというポイントが低い2つのエリアでのパスが多く前半だけで90分平均と同じ数字となっている。特にバイタルエリアには2本しか入っておらず、ダミアンを中心として中央での崩しができなかった。

・フロンターレを苦しめた神戸の同サイド圧縮守備

前節同様フロンターレは相手にハイプレスをかけられて苦しんだ前半。ただ柏と神戸のハイプレスの仕掛け方は違う。柏は中央は絶対にパスを通させないようにSBに追い込むことで、フロンターレが無理に入れた楔のパスをボランチが刈り取る守備を行っていた。

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32分20秒のシーン。試合開始から時間が経っているシーンですがこれが一番わかりやすかったので。

フロンターレがSBに出すと神戸は一気に同サイドにスライドして逆サイドに振られないようにする。これが前半はとても速くたちまちフロンターレは同サイドに閉じ込められて繋ごうとしてボールを失うことが多かった。
柏はSBに対して縦切りでプレッシャーをかけたが、神戸は矢印のように中切りでプレッシャーをかける。このとき左SBの旗手は元々アタッカーでありさらに利き足が右足の逆サイドにおかれているので、中から走ってきた古橋の逆をついて中に切り込んだり、それをちらつかせて三笘へパスなど個人突破ができる。
しかし逆サイドの山根は利き足サイドに置かれているため、中に切り込んだときパスが出せるのは左足。その結果効果的に楔のパスを通せない。また家長が出張することも多く縦にパスもだせず詰まることが多かった。12分50秒や14分55秒のシーンがそう。これが右ファジーゾーンにパスが入らなかった原因。実際に山根はパス成功率80%だが今節は64.4%にまで落ちた。

柏はシミッチを2トップでケアしながら中央を塞ぐやり方だったが、神戸はシミッチにボールが入れさせないような守備は行わない。前節と比較して45分間でシミッチのボールタッチが10回とパスが7回も増えていたことからもわかる。しかし上図を見るとわかるように山口がシミッチに対してプレッシャーをかけられる位置にいて、さらにドウグラスもスライドして逆サイドに展開させないポジショニングをしている。そのためシミッチにパスが出ても同サイドに封じ込めるように守備をするため逆サイドに展開ができない。
こういう神戸の守備に苦しんだが31分30秒のように、フロントエリアを使い逆サイドに展開できるとある程度は押し込むことができた。ただ撤退守備でも同サイドに人を集めていて崩すことは多くなかった。

・フロンターレの弱点をつく神戸のGK

ここからは神戸の攻撃について。フロンターレハイプレス時の弱点はご存じのとおりWGが中央高い位置をとるので相手のSBやWBが浮いてしまう点。そこをGKの前川が浮き球で狙うことが多かった。右サイドでは山根や碧がこのパスを逆に狙ってインターセプトを試みることが多かった(16分や31分50秒)が、浮き球なので難易度は高い。このパスがロングパスにカウントされているかはわからないが前川のロングパスは1試合平均で27.8本だがこの試合は10本多い37本だった。

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WG裏のSBを使われてシュートまで打たれたシーンが25分30秒。前川から浮き球で山川にパスが出ると、IHの脇坂が出て行き空いたスペースをサンペールに経由されて古橋へ。そこから最終的にドウグラスのシュート。
このシーンのように神戸はSB→中央→サイド裏という攻撃が多く、そのためパスヒートマップで裏が6回という回数を記録し、PAに侵入した回数8/9がサイドからの侵入だった。

浮いたSBへは基本IHの碧と脇坂が出て行く。取り上げたのはフロンターレの左サイドだが多かったのは右サイド。家長が攻撃時に出張することも多く、定位置に戻るのも遅いため酒井に浮き球で通されてそのまま縦へということが多かった。これがパスヒートマップで神戸の左ファジーゾーンが多かった理由。
このようにIHが出て行くとシミッチ脇のスペース(緑の四角)ができてしう。こうして上のシーンも突破されてしまった。このとき映像を観るとわかるが三笘は前方に守備のベクトルが向いていて、シミッチはバランスを取るように後方にポジショニングしている。これによって神戸ボランチのサンペールと山口がフリー。柏戦ではシミッチも前に行ってしまうことでライン間が間延びしてしまったのでシミッチは良いとして、IHが相手SBに出て行った時にはWGが相手ボランチを見て、下げさせるなどいったんリセットする必要があると思う。
リセットせずにその後バックパスをさせてたとしてもフロントエリアを使われてサイドチェンジされてしまう。40分のシーンはネガトラ時ではあったが左サイドでIHが外に出ていって空いたフロントエリアを使われて、家長が出張していたため右サイドを使われてゲーゲンプレスを回避するルートを与えてしまった。

3.後半~オープンな展開になったメリットどデメリット~

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前半は両チームでボールロストが178回だったのが後半は214回と増え、オープンな展開となった。そんな展開の中でボールを握る時間が多かったのはフロンターレ。そうなるとやはりPPSは減少する。オープンになりスペースができることで、少ないパス数でもシュートをうつことができるようになるからだ。神戸も減少しているがフロンターレは77.3から33.2と大幅に減少している。前半は左サイド中心だったが後半はどちらのサイドも11回と均等になった。
神戸はライン間に全くパスが入らなかった。ボールを持つ時間が減ったこともあるがフロンターレが押し込んだことでクリアや裏へのロングボールが多くなり、ショートパスでライン間をとって攻めるという本来のスタイルがでなかった。実際前半はロングパスが36回でクリアが4回だったのが後半は47回と10回に増えた。

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黒い数字がそれぞれの場所でシュートを打った回数で回数が多いほど濃くなっています。そして矢印の横にある赤い数字はその方向からPAに侵入した回数を表しています。この図はちょっとわかりにくいとおもうのでご意見いただきたいです。
フロンターレは合計9本打っていますがそのうち6本はエリア外から。ダミアンのゴールもそう。右サイドからPAには3回侵入したがPA右でのシュートは0。あくまでもサイドで崩してシュートを打つのは中央ということがわかる。対する神戸はロングボールでのカウンターやCKが多かったのでPA中央でのシュートが多い。そういう意味ではよりゴールに近かったのは神戸と言える。

・神戸の同サイド圧縮守備をすり抜ける方法

後半になっても神戸のやり方は変わらずに攻撃では浮いたSBを使い、守備では同サイド圧縮守備。攻撃ではフロンターレも対策できず59分20秒のようにスペースを与えてしまった。しかし神戸の同サイド圧縮守備を突破するようになってきた。

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56分15秒のシーン。旗手から谷口へバックパスした時シミッチがプレッシャーから避けるためにDFラインに落ち、浮き球で脇坂へ出したシーン。DFラインに落ちるシミッチはあまり見ないが中長距離のパスを出せるシミッチが配球することができればこのように前進することができる。このシーンは同サイドであったが、例えば同サイド圧縮守備をかけられてるときにシミッチがクロースロールでSBとCBの間から逆サイドにサイドチェンジできると一気にスペースができる。まだシミッチを完璧に活かせていない気がするので、今後どうなっていくかワクワク。
そして後半神戸の守備がワンテンポずつ遅れるようになり緑の四角形のように、前線4枚の後ろのスペースが開き始めた。そこを使ってプレス回避したのが以下のシーン。

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66分30秒のシーン。結局はボールを奪われてしまうが同サイド圧縮守備を突破したシーンだった。左サイドでボールを回すフロンターレに対し神戸は人数をかけて左サイドに閉じ込めようとする。しかし1つ前のシーンでも紹介したように緑の四角形のスペースが生まれる。ここに碧が顔を出して旗手からダイレクトでパスが出たことでプレスを回避できた。
このように後半は神戸の同サイド圧縮守備がワンテンポずつ遅れ、スペースも生まれるようになりフロンターレが攻めることができた。それは既に紹介したデータに表れている。
試合終盤92分15秒のシーンは神戸が完全に同サイド圧縮守備ができていない。これは疲労や交代で入った選手の戦術理解度の影響があったかもしれない。このシーンと前半で紹介した同サイド圧縮守備のシーンを見比べると、かなり違うことがわかると思います。

このようにオープンになったことで攻撃しやすくなったが、一方でボールを奪った後に攻め急ぎすぎてボールを失うなど攻撃に重心を置いてしまった。その結果相手にCKを与え失点してしまった。昨シーズンであれば憲剛が落ち着かせてくれていたのに...

4.まとめ

結果としては1-1の引き分けとなった。前半はビックチャンスを決めきれず、後半良くなったとは言え自分達の修正ではなく神戸の同サイド圧縮守備が機能しなくなったのが原因。もちろん交代で入った選手が良かったので、次節はターンオーバーしてまたフレッシュなフロンターレのサッカーを見てみたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

5.データ引用元


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