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J1第26節 アビスパ福岡対川崎フロンターレ データレビュー

プレビューでは昨シーズンも26節以降に失速してしまったので今節しっかりと勝って調子を取り戻したいと書いたがついに負けてしまった。リーグ戦では30試合、公式戦では42試合無敗という記録だった。個人的には各チームの実力が拮抗しているJリーグで無敗優勝はほぼ無理でいつかくると思っていたので無敗が止まったことについては気にしていないし、そういうファンサポーターも多いはず。ただフロンターレが2分1敗というここ3試合でマリノスは14得点で3連勝している。そしてついに勝ち点差は1となってしまった。
これまでのプレビューでは失点しない安定した堅いチームになったと書いてきたが、前半に複数あった決定機を決めきれないとこういう結果になってしまった。連戦による疲れはもちろん、ベンチに流れを変えられる選手がいない選手層などピッチ外のことも敗因としてあげられると思う。負けてしまったとは言えプレビューで書いたような柏戦と広島戦の問題点は改善されていたので今回はそこはメイン。

以下文中にでてくる独自の言葉です。詳しくはリンクをクリックしてください。

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EPP 独自に計算した効果的にパスを繋げたかを示す指標で相手守備ブロックの中にパスを送れると高くなる。
PPS パス/シュートの値でシュート1本に対して平均的に何本のパスを繋いだかを示す。
パスヒートマップ 上図の各エリアにパスが入った回数を示しており、パスの本数が多いほど濃い色になる。

1.スタメン

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広島戦後に悔し涙を流していた旗手が負傷で前半に交代したのは痛かった。軽傷を願っています。

2.前半~柏戦と広島戦からの改善点~

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前半は完全にフロンターレがゲームをコントロールしていた。ボール支配率は福岡23%で川崎77%、福岡のパス数は97本でシュート数は0本というスタッツだった。そのため福岡のパスヒートマップの色も薄く、PPSは97と高い数字に。さらにEPPは9.7というかなり低い数字。これは今シーズンフロンターレが対戦してきた中で最も低い。
一方のフロンターレはEPPが52.1と45分間平均を上回り、さらにPPSも32.4と低い数字でかなり効果的にパスを回しシュートに繋げていたこともわかる。パスヒートマップを見ると左右差はあまりない。柏戦では家長が中央や左サイドに出張してくることで左サイドに偏っていたが今節はよりピッチを広く使うことができていた。そして後半と比較する上で注目しておきたいのがバイタルエリアとフロントエリアの2つ。それぞれパスが9本と8本入っている。特にバイタルエリアへの9本パスは多く前半だけで90分平均を上回っている。

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次はシュートについて。黒字はそのスペースで打たれたシュートの本数で、赤字はそのスペースからPAに進入した回数です。PAに進入した方向は中央が最も多く6回。柏戦と広島戦は90分間で4回だったのでより中央を崩すことができたと言える。その原因は後ほど。そしてPA進入は左右両サイドで偏りはないが、PA右ではシュートを打てていない。一方のPA左では4本シュートを打っている。右サイドからのサイドチェンジで宮城がシュートというシーンが何回かあったのでこのような数字になった。
前半はシュートを10本打ったがそのうち9本がエリア内だったが枠内に飛んだのは3本のみ。やはり決めきりたかった。

・幅と深さを使った柏戦と広島戦からの修正点

柏戦と広島戦はミスも多くフロンターレらしくない試合だった。その原因は選手がより中央突破にこだわりビルドアップでも無理にライン間に縦パスを入れてボールロストしたり、崩しの段階でも狭いライン間にパスを入れるなどピッチを広く使えていなかった。また、ゴールに向かって直線的に裏に走ってそこにボールが出てくることが広島戦の後半に数本しかなかった(それで得点)。さらに先述したように家長も出張してくるためサイドチェンジもできない状態だった。良い時のフロンターレは家長も幅を取ってフィニッシュに絡める時。しかしそれがこの2試合ではできなかった。このように今までできていた幅と深さを使えなかった2試合だった。

そして広島戦後に鬼木監督が「自分達がやってきたことを取り戻すだけ」と話したインタビュー(細かいワードはうろ覚えですがそういったニュアンスでした)を見かけた。これはちゃんと幅と深さを使った攻撃が期待できると思っていた福岡戦。個人的にはパスヒートマップにも表われているようにちゃんとピッチを広く使っていたため改善してきたと思った。なので前半だけ言えば95点だと思う。残りの5点はもちろん決定機を外したこと。

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これは13分40秒のシーン。福岡の守備は442のゾーンでフロンターレがビルドアップする際は高い位置から2トップが2CBにプレッシャーをかけていた。さらに杉本も高い位置をとっていた。そのためシミッチをフリーにすることが多く(フロントエリアには8本のパス)、このシーンのようにプレスがはまらずに運ばれるとシミッチには時間ができた。そのシミッチから宮城が裏に走りスルーパスが出てGKと1対1に。決めきりたかったがまさにここ2試合でなかったゴールへ直線的に向かう裏への動きでフィニッシュまでいったシーンだった。

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これは18分20秒のシーン。右バイタルハーフで橘田がパスを受けるとライン間でダミアンとワンツーをして逆サイドの宮城へパスが出たシーン。まさに5レーン理論で崩したようなシーンだが、そもそも福岡のライン間が広がっていた。フロンターレの選手が裏を狙うことが多かったため福岡DFラインとしては裏への意識がありラインが少し低めだったかもしれない。実際に旗手が裏を狙う動きをこのとき見せている。そして左サイドで幅をとっていた宮城というように深さと幅を両方つかえたことでチャンスになったシーン。やはりピッチを広く使おうとすることで相手の守備ブロックはコンパクトに保てなくなる。それでやっと中央突破が可能になる。

このように柏戦と広島戦では幅(特に右サイド)と深さを使わずに中央突破をしていたが、それだと相手も守備ブロックをコンパクトにすることで対応できてしまう。それを福岡戦の前半では裏への動きや大きなサイドチェンジもあったことで守備ブロックが広がり中央でのパス交換も可能になった。それが先述したバイタルエリアへのパス本数の違いに繋がった。また、旗手の負傷で悠が右WGに入り家長がIHに入ったが悠は前半しっかりと幅を取っていたし(それが悠の使い方として正しいかは別)、家長も自由になったことで右サイドがスッキリした。脇坂でも良かった気はするけど。

3.後半~両チームの修正策~

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前半はフロンターレが試合をコントロールしていたが後半になるとボール支配率は72%と依然として高いものの試合をコントロールしていたのはおそらく福岡。フロンターレは前半のEPPが52.1だったが後半は半減し25.8という数字で効果的に攻撃できていなかった。多分これは今シーズンで最も低い。パスヒートマップを見ても全体的に薄い色が多い。前半多くパスが入っていたフロントエリアとバイタルエリアにはそれぞれ2本と1本のみだった。ただ右バイタルハーフに7本、右ファジーゾーンに6本と多くボールが入っていた。これはのちほど。
その試合をコントロールしていた福岡だが後半のパスは110本でシュートは8本という非常に効率の良い展開でPPSは13.8というかなり低い数字。こんな数字はなかなか見れない。パスヒートマップを見て分かるのは裏へのパス数が最も多く5本。福岡は二アゾーンランで裏に走ってマイナスのクロスなどの手段で攻撃しシュートを打っていた。このようにボールを握らせて少ないパス数でシュートを打ちゴールを決めてしまった福岡だった。

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後半になると効果的に攻めることができずPA進入回数もシュート数も減った。ちなみに枠内シュートは0本。右サイドから3回進入してるがこの内2本はクロス。そして左サイドから進入できなくなってしまった。これは長谷川がではなく攻撃がパスヒートマップで見たように右サイドに偏ったから。

・福岡の中央を閉じる修正策

前半の福岡はある程度前から奪いに行く意識があったためシミッチなどがボールを受けれることが多かった。しかし後半になるとミドルゾーンにブロックを敷くようになった。さらに2トップが2CBにプレッシャーをかけずシミッチを挟むことで中央を割らせないようにしていた。このためフロントエリアとバイタルエリアにはパスが入らなくなった。しかしこれに対してフロンターレの2CBの車屋と山村は2トップの脇を運ぶことができる。しかし運んだ後にどうするのかがフロンターレには明確でなかった。

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これは49分30秒のシーン。山村が福岡2トップの脇をしっかりと運び右バイタルハーフの悠に縦パスを入れた。しかし福岡としては他のパスコースはないので悠に入ることを読んで志知が強く当たれたため悠はバックパスを選択した。このように右サイドでは悠が内側に入り山根が大外を上がるという循環が上手くいきこのようにバイタルハーフにパスが入るシーンが多かった。しかし先述したようにその後どうするかがフロンターレとしてイメージがなかったように思える。逆に言えば福岡は2トップをに中央を閉じさせることでサイドに誘導させることができた。

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これは59分のシーン。右サイドでは先述したとおりだったが左サイドでも車屋が運べるシーンが多かった。しかしこのシーンのようにフロンターレのIHが二人とも降りてきてしまい左バイタルハーフ(赤い四角形)に人がいなかった。そのため車屋は運んだは良いもののそこから先に選択肢がなかった。その結果車屋は一人で福岡のFWとMFのラインを超えることができた。これを良しとするかは人によると思う。しかし車屋がMFラインを超えた時にダミアンも悠も宮城も誰もゴールへ動こうとしなかった。悠が一瞬手を上げたため車屋はそっちを選択したが、ここはダミアンと宮城には裏へ走ってもらいたい。他チームの選手を出すのはあれだが上田綺世なら走っていたと思う。前半できていた深さを使う攻撃が後半はできなくなっていた。

このように左サイドでは車屋の上手い運びが目立ったがそこから先にパスの出しどころがなかった。上手くいったのは51分20秒くらい。シミッチがボールを受けれないので橘田が低い位置に降りていくことが多かったが、低い位置では家長も受けにいっていたし橘田はライン間にいても良かったかもしれない。そういう意味ではライン間でテクニックを発揮する脇坂が欲しかった。コンディション不良の可能性ももちろんあります。

・鬼木監督の久しぶりの迷采配

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最後は個人的に思った久しぶりの鬼木監督の迷采配について。73分に知念と遠野を投入した鬼木監督。しかしこれによって右ファジーゾーン(緑の四角形)に人がいなくなってしまった。ここに人がいないと福岡はサイドを捨てて守備ができてしまう。実際にそれが起こったのがこの76分30秒。
この交代前は悠が幅を取っていたのでおそらく鬼木監督の指示で2トップのような形にした。しかしそれなら遠野に幅を取らせるべきだったと思う。こういうことはあまりやらない鬼木監督だけに珍しかった。

4.まとめ

今季初の敗戦となったが柏戦と広島戦の改善点が見られた。しかし前半に決定機を決められず1発決められてしまった。マリノスとの勝ち点差は1ということでもう負けられない。アウェー連戦続きでけが人も出てきついと思うが次の札幌戦こそ勝利したい。

5.データ引用元


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