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J1第34節 柏レイソル対川崎フロンターレ プレイヤーレビュー 家長昭博選手

ついに今シーズン最終節。前半は苦しい試合展開だったが家長と三笘の投入でビルドアップがスムーズになり逆転勝利。接戦も制してきた今シーズンのフロンターレを象徴するような戦いぶりだった。いつもそうだが今シーズンは特にシーズン終了が寂しい。本当にいろいろあったシーズンであった。
そして前節に続き今節もプレビューと同じような展開に。やっぱりオルンガは怪物だった。来シーズンは海外に挑戦した姿も見てみたい。そんな中で逆転に導いた家長と三笘は圧巻。この二人に頼りすぎている気もする。ただ後半の旗手は家長の後を継げるようなプレーぶりだったし、長谷川もコンディションがあがっていけば三笘のように活躍してくれそうだ。MOFには2ゴールの家長を選出。

1.スタメン

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この試合憲剛はベンチ外。前節のインタビューでリーグ戦最後と語っていたので、もともと中2日の今節は出場なしと決まっていたのかもしれない。その分天皇杯で魅せてほしい。その他にもフロンターレは何人か入れ替えた。
対する柏はやはりオルンガがスタメン。彼を止めることができるのかが注目だった。

2.柏のカウンターに対する対応

プレビューでも取り上げた柏のカウンターとそれに対する対応をもう一度確認。まず柏はロングカウンターの58%でロングボールを使っている。そしてその先はもちろんオルンガ。パスレシーブや敵陣空中戦のポイントを使って紹介したがオルンガにボールを集め、そこから展開して、フィニッシュもオルンガという形。その整備された柏のカウンターを止める対応策は2つ。1つ目はまずボールを奪われたら即時奪回でロングボールを蹴らせないこと。2つ目はロングボールの先でオルンガから先に展開させないこと。これをどれくらい上手くできるかというところに注目して試合を見ていた。そんな中の先制点は見事にカウンターでオルンガが決めた。

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おそらくフロンターレも一番に狙うのは即時奪回。得点シーンの数秒前にコーナーキックからカウンターを受けそうになった時、クリスティアーノを田中碧とノボリが挟み込んでボールを奪った。これは上手くできたシーンだった。しかしそのまた数秒後にボールを奪われてロングボールを蹴られた後のシーンが上の図。
この試合はオルンガへのロングボールが多かったものの、失点シーンはクリスティアーノへのボールだった。このときジェジエウはノボリのカバーをするため矢印のように動いた。その隙をついたオルンガが上手く抜け出して山根を突き飛ばしてゴール。おそらくオルンガとまともに戦えるのはジェジエウのみ。そのジェジエウがノボリのカバーに引っ張られたのが痛かった。このように失点シーン以外にもジェジエウがつられてオルンガがフリーというシーンがいくつかあった。

自分はプレビューでオルンガとジェジエウのデュエルでどれだけ勝ち、その先に展開させないようにできるかと書いた。ここはまだ自分が甘かったなと感じたところ。この失点シーンのようにオルンガ以外の選手にロングボールを蹴りジェジエウを引っ張り出すというオルンガを経由しないカウンターについては考えられていなかった。今書いても後の祭りだがジェジエウをオルンガにマンツーマンで守らせることで対応できたかもしれない。ただその場合はオルンガ意外にも良い選手がいるのでジェジエウが負けた瞬間にピンチになる。やはりやっかいなチームだなと思う。だとするとやはり即時奪回をしたい。実際に即時奪回できたシーンもたくさんあったので勝ったから言えるが2失点はしょうがないのかなと。

3.前半見事な柏の守備ブロック

柏の守備は江坂が守田をマンマーク。これはかなり意識高く行っていたし守田は簡単にプレーさせてもらえなかった。そうするとたいてい守田はCB間に降りてボールを受ける。この試合もそれをすることは多かったが常にやっていたわけではない。その理由としておそらく最終ラインからのパスの入れどれどころがなく、自分が落ちても柏の最終ラインへのプレス人数を増やすことに繋がってしまうと判断したからだと思う。

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ではなぜパスコースがなかったのか。これは36分5秒のシーン。簡単に言うと柏のゾーンの守備ブロックが上手かったから。MFラインの選手がちゃんと連携してスライドをする。その時人につくのではなくゾーンなのでフロンターレの選手が動いてもギャップができない。まさに目の前に壁があるようなイメージ。
さらに選手間の距離が狭く縦パスも入らないので旗手が降りてきてパスを受ける。鬼木監督は何度も旗手に降りるなと叫んでいたが、降りてしまうと柏の選手が後ろからガツンと当たれてしまうしその時にDFラインを押し上げるのでライン間のスペースもなくなる。
ブロックの間にパスが入らないのでサイドを中心に攻めようとするが、サイドにボールが入ると柏のSHと両ボランチが囲んできてボールロスト。ここで家長だとタメを作ってくれるので空いたスペースにフロンターレの選手が飛び込んでいけるが前半はそれができなかった。

こうなるとフロンターレは浦和戦同様に左右に揺さぶりたい。しかし江坂が守田をマンマークしているため中盤経由でサイドチェンジができない。さらにオルンガも江坂と一緒にスライドするので図にもあるように内側に入った山根にもパスができない。
そこで両CBが一発でサイドチェンジをすることがあった。しかし柏のスライドが速い。上図のシーンも実は5秒ほど前までは右サイドにボールがあった。そこからジェジエウがノボリへサイドチェンジして落としたボールを山根が持っている。それでも柏のスライドが間に合っている。
このように前半は柏の見事な守備ブロックとカウンターにやられてしまったフロンターレだった。

4.家長と三笘によって生まれた時間と柏の変更

後半になってフロンターレは両WGの長谷川と学に替えて三笘と家長を投入。これによってフロンターレは前半に比べてビルドアップがスムーズになる。後半の柏は前半に比べて守備ブロックに穴が空くことが多かった。原因は精神的なことじゃないかなと思う。後半すぐに追加点をあげたがすぐに交代で入った家長に決められてしまった。しかも失点したのはセットプレー。プレビューでも書いたが柏はセットプレーから14失点している。その苦手なプレーで失点したことで無意識に消極的になってしまったのかもしれない。

それによってスライドが遅れ、さらに簡単に飛び込めない家長と三笘がサイドに入ったことで前半できていたサイドに追い込んでSHとボランチで囲むことができなくなる。するとサイドで余裕を持ってボールを持てるためフロンターレが徐々に自分達のペースを取り戻した。そこで柏は変更を加えてきた。

柏は60分前くらいから442から541に変更。おそらく狙いとしてはスライドが遅れ始めたMFラインを助けるために5バックにして、スライドが間に合わないとWBを前にスライドするため。さらにライン間にボールが入る事が多くなったので、ライン間の選手を潰せるようにするためでもある。

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実際に上の60分40秒のシーンのように柏はスライドが遅れるとWBが前に出てくる。このように柏は5バックに変更して対応してきたわけだが、フロンターレとしてはよりボールを回しやすくなる。まず守田番をしていた江坂が左SHに移動し、守田がフリーでボールをさばけるようになった。さらにこれまでは2トップで中盤を経由したサイドチェンジをさせなかったが、1トップになったことでオルンガの周り(緑の円)でボールを回しサイドチェンジもできるようになった。

結果的に柏は541に変更したことでフロンターレにビルドアップを楽にさせてしまった。柏としてはそれを許容するかわりに最後のところを5バックで守ることでシュートを打たせないつもりだったかもしれない。ただそれは家長や三笘の個人技やフロンターレのコンビネーションに負けてしまった。フロンターレとしてはゴール前を固められるよりも、前半のように高い位置からパスコースを限定されていった方が嫌だった。

5.まとめ

昨シーズンはゴール前に人海戦術をやられて崩しきれなかったフロンターレだったがそれを克服して今シーズンは得点を量産した。しかし一方で負けてしまった試合のほとんどはマンツーマンだろうとゾーンだろうとパスコースを限定されてしまっていた。ビルドアップは来シーズンの課題かなと感じた試合だった。

今シーズンから始めたこのレビューも最終節となりました。毎節書くことはできませんでしたが自分の成長に繋がったと思います。こんな文章ですが読んでいただいた方々ありがとうございました。オフシーズンにはデータ分析系の記事を書く予定なのでよろしくお願いします。ではマッチレビューはまた来シーズンに。

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