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川崎フロンターレのここまでと昨シーズンをデータで比較する

川崎フロンターレはリーグ戦を10試合消化し現在はACLを戦っています。このリーグ戦中断期間中に、ここまでの10試合と昨シーズンをデータで比較していきたいと思います。

1.攻守のスタッツ

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2022/86/2021/86/
すべて1試合平均のスタッツ

まずは攻撃のスタッツから。こうして見てみると多くのスタッツで2021シーズンの方が好成績を残していることがわかります。
特にシュート数を攻撃回数で割ったチャンス構築率は12.2%から9.8%へ大幅に低下しています。チャンス構築率はその計算方法からもわかるように、1回の攻撃でシュートを打つ確率を表しており、どれだけ効果的に攻撃することができたかを表しています。この値が低くなったということは攻撃に問題を抱えていることがわかります。
またゴール前でのスタッツに注目するとシュート数も2本ほど減少しており、それに伴いゴール数も1試合平均で0.7点減少しています。そして最も注目すべきなのはゴール期待値です。昨シーズンは1.71でリーグ2位のスタッツでしたが、今シーズンは1.105でリーグ12位の数字となっています。つまりチームとしてゴールの確率が高いシュートシーンを多く作れていません。

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2022/86/2021/86/
すべて1試合平均のスタッツ

次に守備のスタッツ。守備のスタッツは攻撃以上に悪化してしまっています。まず被シュート数は1試合平均で約2本多く打たれており、その成功率も7.7%から10.5%と高い数字になっています。つまり多くシュートを打たれた結果そのシュートを決められてしまう率も高くなったということです。
ここで被ゴール期待値を見ると0.924から1.16に増加しており、ゴールの確率の高いシュートシーンをつくられてしまっています。実際の失点は1.2なのでだいたい期待値通りの失点をしていることになります。
ここからは私の予測ですが、失点期待値と実際の失点が同じくらいなのに、被シュート成功率は10.5%で高めの数字ということは、被シュートの内ほとんどが期待値の高いシュートだということだと思います。

2.チームスタイル指標

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2022/86/2021/86/

次にチームスタイル指標を大きく変化した攻撃に絞ってみていきます。

チームスタイル指標とは
データスタジアムが保有するプレーデータから各試合のそれぞれの攻撃を分類し、攻撃の試行回数を素にした指数

チームスタイル指標とは https://www.football-lab.jp/pages/team_style/

まず攻撃セットプレーから見ていきます。ほとんどの攻撃でシュート率が低下している中、攻撃セットプレーは21%から22.7%に上昇しており指数自体も52から58となっています。実際に今シーズンは既に4点決めています。苦しい試合が多い中セットプレーで得点を奪えているのは好材料です。
次に注目するのは中央攻撃です。まず指数が61から70と大幅にアップしており、昨シーズンよりも中央を攻撃する意識が高いことがわかります。しかしシュート率は35.8%から25.7%と約10%も減少しており効果的には攻撃できていないことがわかります。これは右サイド攻撃にも同じことが言えて指数は6アップしていますが、シュート率は6.5%のダウンとなっています。攻守のスタッツで攻撃に問題を抱えていると書きましたが、その主な原因は中央と右サイドにありそうです。
最後に注目するのは敵陣ポゼッションです。これもここまでと同じ傾向で指数自体は79へ大幅にアップしたものの、シュート率は21.1%から10.7%へと低下しています。
まとめると敵陣でポゼッションをしても昨シーズンのようにシュートへ繋げている攻撃は左サイドのみで右サイドと中央であまり機能しておらず、セットプレーでなんとか得点を奪っているというのがここまでの川崎だと言えます。

3.チャンスビルディングポイント

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2022/86/2021/86/
すべて1試合平均のスタッツ

チャンスビルディングポイントもチームスタイル指標と同様に見ていきます。

CBPとは、「選手(またはチーム)が試合を通じてどれだけチャンス機会を構築することができたか」を独自のロジックにより数値化した指標です。

チャンスビルディングポイントとは https://www.football-lab.jp/pages/cb_point/

パスやシュートとゴールそして奪取のポイントは1.0程度減少しましたが、リーグ内の順位はあまり変わっていません。しかしクロスとシュートは4位と2位から12位と14位へ大きく順位を落としました。リーグ内順位の話なのでクロスやドリブルなどのサイド攻撃を重要視したチームが昨シーズンより増えたのかもしれません。
そして守備ポイントは12.45から14.46へ約2.0も増加しました。この守備ポイントは低い位置であればあるほど高いポイントが付与されるので、低い位置での守備が多くなったと捉えることも可能です。

4.プレースタイル指標

ここでは何人か同じ選手の昨シーズンとの比較や、同じポジションの別の選手をプレースタイル指標で比較していきたいと思います。プレースタイル指標は1~20までランク付けされています。

・今まで定性的に語られていた能力をわかりやすく見える化すること
・選手個人の特長を分かりやすく把握できること
この2点をポイントとし、データスタジアムが保有する多くのデータを偏差値化、規格化することで、分かりやすく直感的に選手の特長を理解できるよう心がけています。

プレースタイル指標とは https://www.football-lab.jp/pages/playing_style/

まずはチームスタイル指標で取り上げた右サイドの選手から。
脇坂はほとんどの項目であまり変化していませんが、パスチャンスという項目が19から14へと大幅にダウンしました。

家長はパスレスポンスが16から12へ、ドリブルが11から8へ、パスチャンスが19から13へと大きく減少しました。最近家長のパフォーマンスがあまり良くないように見えますが、データにも表れています。

そして右サイド最後は山根。山根もいくつかの項目で低下していますが、注目はクロスが11から9へ、パスチャンスが13から10へ低下していることです。

ここまで右サイドの3人のプレースタイル指標を昨シーズンと比較してきましたが、3人ともパスチャンス低下していました。最も大きな影響があるのはやはり家長でしょう。パスレスポンスとパスチャンスともに大幅に低下していました。

では次に左サイドを見ていきましょう。左サイドはマルシーニョがまだデータの蓄積がなく、IHとSBは昨シーズンと出場している選手が違うので、単純な優劣ではなく変化に着目していきます。

まずはチャナティップと旗手を比較します。パスチャンスとビルドアップを比較するとチャナティップそれぞれ16と14なのに対して、旗手は14と8という数字で、ここはチャナティップに軍配が上がります。しかしパスレスポンスとドリブルはチャナティップが7と4なのに対し、旗手は13と11という数字です。これらのデータからチャナティップの方が低い位置でパスの出し手としてプレーしているのに対し、旗手の方が高い位置でパスの受け手としてプレーしていたことがわかります。

次に登里と佐々木を比較します。この2人を比較すると佐々木の方が空中戦やカバーエリア、守備などの項目で高い数字を残しています。しかしクロスを比較すると佐々木は3なのに対して、登里は7という数字です。たしかに最近の試合では試合終盤になると、山根が上がって右方上がりの3バックのような形になり佐々木が低い位置にいることが多い気がします。

こうして選手別のデータを見てくるとある一つの仮説が生まれます。それは左サイドでの攻撃に専念するあまり、右サイドでの攻撃が機能していないということです。シーズン序盤の数試合のレビューでも書きましたが、チャナティップが低い位置でプレーしたがるため、左サイドのライン間に人がおらず家長が出張して来ます。そうすると右サイドにボールが移っても幅を取ってる人がおらず山根がパスの出し所に困ってしまう。このようなシーンが散見されます。この仮説がデータを見てもある程度証明されると思います。
また山根と佐々木の両SBがクロスであまり貢献できていないことも不調の原因の一つです。

5.トラッキングデータ

https://www.football-lab.jp/comparison/team/2022/86/2021/86/
すべて1試合平均のスタッツ

最後にトラッキングデータを少し見たいと思います。1試合の総移動距離に関してはあまり変化していません。それは相手との差においても同じです。しかしスプリント数は10回増えたにも関わらず、リーグ内順位は6位から14位に下がっています。ここで相手との差を見ると昨シーズンは+6.1回だったのに対し今シーズンは-4.7と相手よりも少なくなっています。つまり昨シーズンに比べて今シーズンはよりスプリントするチームが増えたということです。その波に川崎は乗っていないことになります。

6.まとめ

今回は昨シーズンと今シーズンの10試合をデータで比較してみました。大きく分けて2つのことがわかりました。
1つ目は川崎自体の変化です。左サイドはメンバーが変化したものの攻撃のデータにあまり変化ありません。しかしそれは右サイドの選手が左サイドをサポートしているからで、その代わり右サイドが停滞していると考えられます。それはプレースタイル指標でチャナティップが低い位置でプレーしているようなデータだったり、佐々木のクロスの少なさからもわかります。
2つ目はリーグとしての変化です。CBPやトラッキングデータであったように、川崎自体の数字はあまり変化していないのにリーグ内順位は落ちていました。スプリントが増えクロスやドリブルなどのプレーが増えたことから、よりインテンシティ高くサイドを使って攻撃するチームが増えたと予想されます。しかしここまでの川崎はその波に乗っていません。トレンドの波に乗ること自体が良いこととは限りませんが、三連覇を目指しておりそれを阻止してくる他チームの波に乗れないと苦しくなるのは明らかです。
ACLが終わっても連戦は続くため厳しい試合は続きますが、今後ここで紹介したデータがどのように変化していくか楽しみです。データプレビューも再開しますのでよろしくお願いします。最後までお読みいただきありがとうございました。

7.データ引用元&参考元


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