<後編>データで見るボランチとチームの攻撃においての関係性~その結果から見えた特殊なチームとは~
この記事は前回の記事の後編です。まだ前半を読んでいない方は先に読んでから今回を読んでいただけると幸いです。
前編ではボランチとチームの攻撃においての関係性を分析しました。前回使用したデータから導き出された答えは関係はなさそうでした。
今回はチームの攻撃データを別のデータを使って分析しました。すると興味深い事がわかりました。
1.データ
今回の前回との違いはチームの攻撃データです。前回はAGIというデータを使用しましたが、今回はチャンス構築率というデータを使用します。
この2つのデータの説明です。
AGI 攻撃の際に相手ゴール近くでボールを保持した時間やPAに行くまでにかかった時間などを考慮した各チームの攻撃ポイント
チャンス構築率 攻撃の際にシュートを打てた割合
2つのデータの違いは簡潔に言うと、各チームの戦術によって解釈が異なるかどうかです。AGIは相手ゴール近くでボールを保持した時間が長いほど、PA内にいくまでにかかった時間が短いほど高いポイントがつきます。
しかし、相手ゴール近くで長時間ボールを保持していてもシュートを打ち、ゴールを決めなければ意味がありません。逆に相手ゴール近くで時間をかけずにゴールを決めることができれば、効率良く攻撃ができたと言えるでしょう。
このようにAGIはポイントが高ければ良いというわけではありません。
一方で、チャンス構築率はシュート数を攻撃回数で割った値です。つまり、1回の攻撃でシュートに至る確率です。これはどういう戦術を使用していようと、高い方が良いです。
今回はそのチャンス構築率と前回と同じパスCBP、ビルドアップ力、パスチャンスの3つを使いボランチとチームの攻撃における関係を調べていきます。
2.分析方法
分析方法は前回と同じです。
1.各チームにおいてボランチ3名もしくは2名の各データ(上の3つ)をそれぞれ平均化し、その値をボランチの能力値とする。
2.各チームのチャンス構築率とボランチの能力値の関係を調べるため、散布図を作成し、相関係数を求める。
3.予想
チャンス構築率は戦術に影響されないデータなので、今回こそは予想通りボランチのパス能力はチームに影響すると思います。
4.分析結果
1.チャンス構築率とパスCBPの関係
相関係数 0.656
2.チャンス構築率とビルドアップ力の関係
相関係数 0.481 (大分を除いた場合 0.84)
3.チャンス構築率とパスチャンスの関係
相関係数 0.699
5.考察と結論
とても興味深い結果になりました。
まず前回との共通点は大分が異様な場所に位置していることです。しかし、2番目のビルドアップ力以外の2つは前回よりは他チームに近いところに位置しています。
大分はAGIとチャンス構築率ともにリーグ最下位です。しかし、ビルドアップ力はリーグトップです。そのため、このような散布図になりました。
前回とは異なる点もあります。それは相関係数です。すべての場合において(2番目は外れ値の大分を除く)相関係数は上昇しています。どの値も相関関係があると言えます。
前回は相関関係はなさそうという結果でしたが、今回は相関関係はあるという結果でした。使用するデータが違うと正反対の結果がでてしまいました。では、どちらが正解なのでしょうか。私の考えではチャンス構築率を使用した今回が正しい分析結果だと思います。なぜなら、先述したように各チームの戦術に影響されないデータだからです。
結論として、私のデータ分析ではボランチのパス能力はチームの攻撃に影響する。つまり、ボランチのパス能力が高い方がチームの攻撃も強い。
6.まとめ
2回にわたって分析したボランチとチームの攻撃においての関係ですが、やはりゲームメーカーや司令塔と呼ばれるだけあってチームにおいて重要なポジションだということがわかりました。
しかし、ボランチの能力が高いチームほど順位が高いというわけでもない。これがまた興味深いです。
今後も興味深い分析結果が得られれば記事にするつもりなので、よろしくお願いします。次回は大分トリニータのデータ分析です。ありがとうございました。