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J1第24節 柏レイソル対川崎フロンターレ データレビュー

今節の相手は前半戦にホームで戦い苦戦した柏レイソル。そのときは442のミドルプレスが効果的でそれにフロンターレは苦戦してたため、今節もアグレッシブに来るとプレビューでは予想した。しかし実際は532でブロックを敷くのが基本。ただそれでも柏の守備に苦戦したのは今節も同じ。とは言え決定機も何度かつくった上でキムスンギュのスーパーセーブに止められてしまった(プレビューでは攻守でゴール前が課題って書いたのに...)。これで24試合目にして初の無得点となったが1シーズン戦っていればいつかは訪れるものだと思うし、リーグ戦では負けないことも大事なのでそこまで気にすることでもないと個人的には思います。また、宮城の活躍もあり不安要素よりも伸びしろの方が大きいかもしれない。

以下文中にでてくる独自の言葉です。詳しくはリンクをクリックしてください。

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EPP 独自に計算した効果的にパスを繋げたかを示す指標で相手守備ブロックの中にパスを送れると高くなる。
PPS パス/シュートの値でシュート1本に対して平均的に何本のパスを繋いだかを示す。
パスヒートマップ 上図の各エリアにパスが入った回数を示しており、パスの本数が多いほど濃い色になる。

1.スタメン

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2.前半~左サイドを突破するためのオーバーロード~

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フロンターレは前半の特に序盤はなかなかボールを繋ぐことができず苦戦。実際に前半柏のインターセプト数は14回でこれは柏の90分平均と同じ。さらにフロンターレのボールロスト数は83回と45分平均より10回多い。それでも徐々に柏のプレスをいなすようになりEPP41.3とPPS43.3はフロンターレの平均的な数字。そこでパスヒートマップを見てみると明らかに左右差がある。左サイドではファジーゾーンとバイタルハーフともに9本のパスが入っているが、右サイドではファジーゾーンに3本でバイタルハーフに4本と左サイドの半分以下。これは家長が左サイドまで出張していたため。そしてそれが前半にうまくいかなかった原因でもある。詳しくはのちほど。

一方の柏は前半ボール支配率が40%である程度ボールを持っていたためEPPは高くはないが32.6。ただなかなかシュートまでたどり着けずPPSは62.7と高い数字に。カウンターやロングボールのターゲートはクリスティアーノが多く、試合を通して地上戦が6/14回で空中戦が5/12回勝利していた。そのクリスティアーノと戦っていたのはノボリ。ノボリは地上戦で8/10回勝利しており気持ちよくプレーさせることはなかった。それでも突破されるシーンは脅威だった。

・柏の守備を攻略しようとしたオーバーロード

柏はフロンターレに対して532のブロックをミドルゾーンに敷いてプレッシャーをかけてくる。前節の大分は532の1種である5212でハイプレスをかけてきた。両チームのプレスのかけ方は違うが使うべきスペースは同じでサイドのスペース。532だとMF3枚とFW2枚の横にスペースができる。たいていはWBが縦スライドして対応してくるが柏は中盤3枚のスライドが速いためWBは出てこない。さらにボールホルダーへのプレッシャーも強いためフロンターレの選手はなかなかボールを握れない展開が続いた。

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これは8分20秒のシーン。なかなかボールがつながらないときにフロンターレがよくやるのがオーバーロード。オーバーロードとはあるスペースに多くの人数を配置すること。フロンターレは足下の技術があるので狭いスペースでも突破することができる。ボールがなかなか繋がらないなら距離感を近くして技術で突破だ!という理屈。そしてこのシーンでは左サイドに6人がポジショニングしている。しかし柏の中盤3枚のスライドが間に合っておりパスコースの切り方も上手い。なのでボールを回すことができても決定機を創れない。しかし右サイドでは家長と山根が三丸に対して数的有利になっている。なのでなるべく速く右サイドに振ることができればチャンスになる。しかし同サイドでの突破にこだわったり、家長も左サイドに出張することが多かったためそもそも右サイドに山根のみというシーンもあった。このように左サイドでオーバーロードをつくることが多かったため左サイドのパス数が多くなった。

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その速いサイドチェンジでダミアンのシュートに繋がったのがこの27分15秒のシーン。右サイドで山根がボールを持った時そのまま攻めようとするが判断を変えてジェジエウにバックパス。するとジェジエウは谷口に速いパスを出した。それによって柏のスライドがギリギリで守備ブロックが整わずノボリに時間ができダミアンにスルーパスを出すことができた。また、46分35秒のシーンでも右サイドから左サイドへのサイドチェンジからダミアンのシュートに繋がった。ただ左サイドから右サイドというのはあまりなかった。それは先述したように家長も左サイドにいてサイドチェンジ先がなかったから。

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そしてオーバーロードでよくあったのがダミアンがバイタルハーフに侵入してきて相手CBを背負ってポストプレー。上のシーンは15分40秒。このシーンではダミアンがスローインを受けてポストプレーをすると後ろから旗手と脇坂がダミアンの裏のスペースにランニングをした。最近多いプレーがダミアンがポストプレーをしてフリック。二人ともおそらくこれを狙ったいたのだと思う。このシーンは上手くいかなかったが5バック相手には裏をとってマイナスへのクロスが有効なので良い手だったと思う。ダミアン以外にも28分40秒のように脇坂でエメルソンをつり出すこともできていた。そしてこのダミアンのポストプレーが多かったのが左サイド。実際にヒートマップに表れている。

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このように左サイドのオーバーロードで上手くいきそうなシーンもあったが、もっと左右に揺さぶってサイドのスペースを使っていくべき前半だった。

・オーバーロードによる守備の弊害

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4分50秒のシーン。柏のビルドアップに対して古賀に家長がプレスをかけると古賀は武藤へのパスコースが空いているのをみ見逃さず縦パスを入れた。この試合はこのシーン以外にも何回か柏のDFラインから武藤に直接パスが入るシーンがあった。本来ならこのパスコースは脇坂が塞いでいるはずだが攻撃時にオーバーロードのため左サイドにいたので埋められなかった。おそらく脇坂としては椎橋を捕まえてた感覚だと思うが、その椎橋はフロンターレの攻撃時にスライドしていたわけでやっぱりオーバーロードは多少守備に影響を与えていると思う。
このシーンの他にも何度かライン間に縦パスを入れられるシーンが多かった。状況は違うが37分45秒のシーンも右バイタルハーフにパスを入れられている。鬼木監督が「怜央そこ閉めろ!」と叫んだシーン。感覚だが最近のフロンターレはオーバーロードにかかわらずライン間にフリーでパスを通されることが多い気がする。実際に前半では両サイドのバイタルハーフに11本パスが入っており多めの数字。

3.後半~532ブロックを崩すには?~

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後半のボール支配率はフロンターレの73%となり、特に上島が退場してからはフロンターレが一方的にボールを持つ展開になった。得点こそ奪えなかったもののシュートは11本打ったためEPPは51.1に増加。PPSも32.8と低い数字であることから効果的にボールを回してシュートすることはできた。パスヒートマップを見ても左右差はあまりない。フロントエリアへのパスが2本と少ないが、柏が1人少なくなったことで1トップになりその周りでシミッチがボールを受けることが多かったため。それに対して柏は守備の時間が長いためEPPは19.7とかなり低い数字。パスヒートマップを見てもパス数は少ない。

・柏の532ブロック(上島退場後は531)を崩すには?

上島が退場した後は531のブロックを敷いた柏に対してフロンターレはボールを持ち決定機も作れたが、キムスンギュのスーパーセーブが多く(セーブ数7はかなり多い)ゴールを奪えなかった。そのため悲観視はしていないがもっと決定機をつくるにはどうしたら良かったのか。

先述したように532守備を攻略するためには速くサイドチェンジをしてサイドのスペースを使うことが有効。大分戦でもそれで先制点を奪ったように今節もサイドのスペースをSBが使うことはできていた。実際に71分20秒のシーンなんかは大分戦と全く同じかたち。問題はそのSBから先。5バックは人数が多いため前に出る守備がしやすい。そのためフロンターレがライン間にボールを入れても後ろから当たられやすい。それでもフロンターレはライン間に入れてコンビネーションで崩そうとするシーンが多かった。

前に強い5バックを崩すには後ろからが効果的。つまり背後のスペースからチャンスメイク。特にマイナスのクロスは有効。なぜなら5バックは後ろに人数がいる分、その前のスペースには人が少ないから。また、ボールと相手選手を同一視野に入れることができない。その裏をとってというシーンをいくつか紹介。

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78分35秒のシーン。右サイドから素早いサイドチェンジでノボリが中盤3枚の横で受ける。このハーフレーンの高い位置でパスを受けることが山根もノボリも非常に多かった。それはヒートマップにもあらわれている。

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そしてこのノボリに対してスライドが間に合わなかったためエメルソンが潰しに来た。エメルソンは中盤3枚のスライドが遅かったり、その間を縦パスが入ると前に出て潰すことが多かった。特に前半にも書いたようにダミアンのバイタルハーフでのポストプレーなど。このエメルソンの動きもヒートマップに表われている。

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こうして裏をとったダミアンは切り返してのシュートを選択したが、ここでGKとDFの間へのグランダークロスやマイナス方向へのクロスを入れれば先述したように柏DFはボールとフロンターレの選手を同一視野に入れられないためチャンスになった可能性がある。このシーン以外にも76分20秒は家長に食いついたエメルソンの裏を宮城が狙った。このようにエメルソンをつり出してその背後というシーンをもっと創りたかった。

もう一つの5バックの攻略法としてWBに対して数的優位をつくる方法がある。そこからは様々な選択肢がある。例えば62分45秒のように宮城が縦にドリブルを仕掛けて深い位置に進入すればマイナスのクロスを上げることができる。83分55秒の宮城の惜しいシュートもサイドチェンジでノボリと宮城で高橋峻に対しての数的優位から宮城が良い形で仕掛けてシュートだった。90分に車屋がクロスを上げたシーンも高橋峻に対する数的優位から。しかしこの試合はクロスが全くあわず、5/23回の成功だった。

このように後半はサイドチェンジでSBにできた時間とスペースを上手くつかうことができ(91分の車屋のシュートなども)、5バックに対する攻略法の糸口も見えた。ただそういったシーンが増えたのは残りの約15分。上島が退場する前からこういったシーンを増やしたかった。

4.まとめ

結果としては0-0だったがその内容も悪いわけではなく決定機もあった。ただ前半のような同サイドの突破にこだわりすぎてしまうと難しい展開になる。もちろん同サイドでのオーバーロードで上手くいくこともあるのだが、適度にサイドチェンジを混ぜていきたかった。そんな中で決定機を生み出した宮城はスタメンでも見てみたい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

5.データ引用元


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