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J1第33節 川崎フロンターレ対浦和レッズ プレイヤーレビュー 守田英正選手

ホーム最終戦となった今節。またまたドラマチックな展開となった。前半はPKで失点。しかし後半守田のJ1初ゴールから、三笘の新人最多得点タイ記録、そしてシーズン最多得点85点目は憲剛から悠へのホットライン。今シーズンはコロナ渦ではあったが感動的なシーズンとして記憶に残るに違いない。
個人的には試合前のデータプレビューと全く同じ試合内容だったので驚きました。PKも警戒点としてあげていましたし、フロンターレの攻撃においても予想していた形でした。試合後に読んでも面白いと思うので是非ご一読ください。

そしてMOFにはJ1初ゴールを決めた守田を選出。憲剛にするか迷ったが、この試合における守田の活躍が大きかったので決定。移籍の噂もあるができればこのままフロンターレに残って一生フロンターレでプレーしてほしい。

1.スタメン

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フロンターレは憲剛をスタメンに。悠も先発にしたのもホーム最終戦でホットラインを見せたいという鬼木監督の気持ちもありそう。記録がかかっている三笘は今節もスタメン。
浦和では高卒ルーキーの武田が初スタメン。去年の選手権で等々力でプレーしていたのを見に行っていたのでなんか嬉しい笑。浦和を4231と表記するサイトも多いですがほとんどの時間を守備時の442でプレーしていたので442とします。

2.浦和の攻撃におけるフロンターレのふわっとしたプレス

この試合フロンターレはパスをかなりつなぎ、フロンターレペースで進んだ試合だった。しかしフロンターレが守備時において上手く対応していたかというとそうではないように見えた。チームとして上手く連動して奪うシーンは少なく、むしろ浦和のミスや守田などの選手の個の力でボールを奪う事の方が多かった。

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これは前半の33分20秒のシーン。橋岡がGK西川にバックパスをすると悠がパスコースを切りながら西川までプレス。しかし図のとおり阿部が完全にフリー。西川はそこにつけてプレスを回避した。
浦和のビルドアップにおいてボランチの阿部と柴戸は縦関係になり、阿部が低い位置でボールを受けようとする。それに対してフロンターレはハイプレスをかけるのだが、なんかふわっとしたプレスのかけ方だった。例えば上のシーンであれば普段なら憲剛が低めの阿部をマークして脇坂が柴戸。守田がバランスを取る中盤の構成。しかしこのシーンでは阿部をフリーにしてしまった。後半にも49分50秒と56分20秒に浦和ボランチをフリーにしていた。試合を通して何故ここまでボランチをフリーにすることが多かったのか正直わからない。そもそも中盤3枚と浦和は2枚で数的優位なのだから人につかないともったいない。こうしてふわっと入ったフロンターレの守備の結果浦和にPKを与えてしまった。プレビューでも書いた通り浦和はこういう特別な何かを持っている。

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次は50分50秒のシーン。GK西川からフロンターレの2ライン間にフィード。それを武藤が阿部に落とした。この時も阿部はフリー。この後の浦和の攻撃が続かなかったため危険なシーンには至らなかったがフロンターレとしては対応ができなかった。50分から52分までの間に西川からフロンターレの2ライン間へのフィードが3回あった。このような攻撃を浦和がもっと積極的に精度高く行ってきたらフロンターレとしては怖かったがそこは浦和のミスに助けられた。

以上の2つ紹介したシ-ンはすべてフロンターレの対応は遅れたが、浦和がその後効果的に攻撃できなかったため危険ではなかった。しかしこれをもっと質の高いチームに狙われていたら確実に失点していた。では何故浦和は効果的に攻撃できなかったのか。それは後ろの押し上げができていなかったから。試合中大槻監督が何度も怒鳴っていたが浦和が攻撃できるチャンスでも後ろが押し上げてこない。するとシュートまで至る前にボールを奪われる。プレビューでも取り上げたようにカウンターのシュート率が低いのはこのため。実際に77分20秒の攻撃では後ろから前に選手が出ていかずボールロスト。その後77分20秒に映ったシーンでは前4人と後ろ6人が完全に分裂していた。この後ろが押し上げずに前と後ろで分裂したまま攻撃するとネガティブトランジションでプレッシャーがかからず、分裂したスペースを相手に使われてしまう。攻撃と守備は一体だとわかる悪い例だ。

3.フロンターレのビルドアップにおける工夫

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フロンターレのビルドアップはこの試合では守田がダウンスリー(CB間に落ちる動き)で浦和の2トップに対して数的有利をつくる。浦和はハイプレスをかえてくるわけではないので、守田は落ちなくても良い気もしたが守田が落ちたことで浦和2トップがプレッシャーにいけなかった。ビルドアップでは守田が最終ラインにいるので憲剛が浦和のフロントスペース(FWの後ろMFの前)でボールを引き出すことが多かった。すると右のハーフスペースにノボリが移動する。こういう形でビルドアップすることが多かった。
それに対して浦和は442で守備。基本的にはハイプレスではなく中盤にボールを入れさせないようにミドルゾーンでブロックを形成。プレビューではこの守備ブロックがかなり間延びすると書いた。しかし前半はそこまで間延びせずに上手く守れていた。

じゃあどうするのか。その答えはプレビューにある。浦和は横方向にコンパクトに守る(14分45秒では浦和の右サイド半分に全ての選手が入っている)。そのコンパクトな守備ブロックを左右に揺さぶって、それによってできたギャップにボールを入れる。5分50秒のシーンでは左から右に振ったことで浦和の2ライン間にスペースができて山根からそのスペースの悠へボールが入った。悠がボールをコントロールできず奪われてしまったが、効果的な攻撃だったと思う。

時々フロンターレは同サイド攻略に執着してしまいなかなか上手く攻め切れないことがあるが、今節ではちゃんと左右に揺さぶって上手く攻めることができていた。その揺さぶる段階で守田が展開役となっていた。下のツイートがそれを証明している。


4.浦和の揺さぶられてできたギャップを使って生まれた得点

これまではビルドアップでの話をしてきたが、崩しの段階でも左右に揺さぶるのは効果的。

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これは16分50秒のシーン。左サイドから右サイドの家長に展開してきたシーン。左右に揺さぶるとギャップができるという話をしたが、崩しの段階では浦和の2ラインが潰れて赤い円のように最終ラインの前後にギャップができる。さらに2ラインが潰れることでMFラインの前のスペース(緑の長方形)ができる。そこに山根や守田がボールを受けにいくことが多かった。実際にこのシーンではここから図の矢印のように緑のスペースでボールを繋いで逆サイドに振り、さらにできたギャップを使ってフィニッシュまで至った。

そして1得点目も上と同じ状況。同じようなシーンなので図は省きますが浦和が左右に揺さぶられて潰れた2ラインのギャップでパスをもらいシュート。これがきれいに右下に吸い込まれた。そして得点シーンよりも取り上げたいシーンが66分。

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守田の凄いところは守備面での活躍やボールの散らしもそうだが、スペースを見つけると飛び込んでいけること。エヴェルトンと橋岡の間のスペースを見つけると飛び込み、そこに家長から浮き球のパスがきたシーン。シュートまではできなかったが守田の特徴が出たシーンだった。時々こういう動きをする守田。もっと頻度を多くしてほしいが、リスク管理の観点からアンカーがあそこまで出て行くのは危険なので試合の流れなどを読んでやっているのだと思う。ただ守田がこういうのをできるのもベテランの憲剛が低い位置でバランスをとってくれているから。こういう面でもやっぱり憲剛の存在は大きいと感じた。

今回プレビューで予想したとおり浦和の守備ブロックを上手く壊すことができた。浦和の守備がギャップをたくさん作ってしまう原因はコンパクトで左右に揺さぶられた影響はもちろんそうだが、選手がボールウォッチャーになっていて、スペースを埋める意識がないからだと思う。試合を見ていても選手一人一人が他の選手との連携なしにボールに向かっていってしまい、それをカバーする選手もいないので間延びしたりギャップが生まれる。そこに相手選手が入ってきてパスを回される。すると後手にまわってボールを奪えず攻撃できないという悪循環。良い守備ができないと良い攻撃ができない。

5.まとめ

やはり守田はこのチームに欠かせない存在だと再認識できた。今回は攻撃面にフォーカスしたが、もちろん守備面でも即時奪回や最終ラインのカバーなど欠かせない。

ホーム最終戦を3-1と勝利で飾ったフロンターレ。とはいえまだあと1試合残っている。三笘の得点で勝利して新人最多得点と最少敗戦数を更新してほしい。次節もデータプレビューが的中してほしいなー。

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