見出し画像

J1第32節 サガン鳥栖対川崎フロンターレ プレイヤーレビュー 田中碧選手

プレビューに引き続きこちらも久しぶりの投稿となります。なかなかレビューを書くモチベーションがあがらない筆者ですが、ここで書かなければ負けだ!と思って書くので読んでいただけたら嬉しいです。この試合は昨シーズンにタイムスリップしたような印象。ここ数試合勝ちきれない試合が続いており7試合で2勝のみ。連勝していたころの勝ちきる強さはいったいどこに行ってしまったのか。個人的には対策されてきたのもあるがそれ以上に選手の疲労かなと感じた。怒濤の連戦はなんとか乗り切ったがその疲れがシーズン終盤の今響いている印象。実際に戦術や構造以前に、そのパスずれなければ良いだけだよね?みたいなシーンが多く見受けられる。ただそれを言ったらレビューとして終わりなのでいったん置いておこう。
MOFにはプレビューでも注目選手に選んだ碧を選出。

1.スタメン

画像1

フロンターレはまたもガチガチのスタメン。期待されている大卒ルーキーや原田はなかなか選ばれず。記録を意識してのことだと思うが、連勝中は記録は意識していなかった鬼木監督が記録を意識し始めてから不調な気が...。
鳥栖はプレビューで取り上げた中野は6試合連続のスタメンならず。ただそれでも松岡をはじめアカデミー出身選手の若手が多い。

2.鳥栖のハイプレスに対するフロンターレ

基本的に鳥栖はプレビューどおりハイプレスを敢行。ハメ方としては本田が守田にマンマーク。レンゾロペスがCBにプレッシャーをかける。ただ前半多くはジェジエウに小屋松が一列前まで出てプレス(山根にパスが出ると内田が縦にスライド)。レンゾロペスはジェジエウから谷口への横パスが通らないようにポジショニング。レンゾロペスは両サイドでかなりこの意識が高かった。鳥栖としては守田を抑えてレンゾロペスがCB間を切ることでサイドで取りたい意図があったと思う。それがわかるシーンが14分10秒のシーン。

画像2

本田が守田にマンマークしてレンゾロペスが谷口ジェジエウ間を切ることで、逆サイドに振られないようにする。これでフロンターレの左サイドにサイドに誘導完了。あとはボールを奪うだけ。そのためボランチの松岡がマークすべき脇坂とスペースを捨ててサイドに圧縮。
すると図の赤い丸のように鳥栖CB原に対して脇坂と小林で数的有利。小林と脇坂は二人とも裏に走ってしまったが、一人は裏で一人は松岡がいたスペースに入ることで谷口からのパスコースができる。ここでパスが通れば原川は碧がいて動けないのでエドゥアルドが前に出るしかない。エドゥアルドが前に出るとDFラインにずれができて碧や小林が裏に走ることができる。

このように鳥栖はフロンターレをサイドに押し込むとボランチが出てきてボールを奪おうとする。上のシーン以外でも右サイドで36分35秒にも松岡が中央のスペースを空けて、そこに守田から脇坂へのパスがあった。右サイドばかり取り上げるのは左サイドではIHの碧が低い位置まで降りてくるので上図のようにフリーになることはなかったから(21分15秒など)。一方で右サイドでは述べたように脇坂が高めの位置をとるのでCBに対して数的優位を作りフリーになれていた。しかしそこにボールが入る回数が少なかったのが残念。

3.前半右サイドの鳥栖の問題点

前提としてフロンターレのハイプレスはいつも通りのかたち。

画像3

上図は後半開始時の配置を少しいじった状態。フロンターレはトップの小林がCBに両WGがCBとSBの中間ポジション。両IHが両ボランチを監視。アンカーの守田がバランスをとる。これがフロンターレのやりたいプレスのハメ方。皆さんご存じの通りこのやり方をすると相手によく使われるのがSB。今節も特に後半の左SB中野にフリーでパスが渡ることが多かったが、中野は一人で運んで行くわけではないのでそこまで脅威にならなかった。

前半は比較的鳥栖があまりボールをつなげず、フロンターレがボールを支配する時間が多かった。しかし後半は鳥栖がボールを繋げるようになり試合を支配されてしまった。前半の鳥栖はスタッツにも出ていた通り、右サイドからの攻撃がほぼなかった。その理由が12分35秒のシーンにでている。右SBの森下が旗手と一対一をしかけてクロスをあげた。シュートまで至った良いシーンに見えるが森下個人に頼ったシーンでチームとして上手くいったシーンとは言えない。

画像4

森下がボールを持ったときフロンターレのアンカー(このシーンだと碧)の脇に人が居ない。もしここに人がいたならば、谷口か三笘がケアする必要がある。そうするとCB一人をつり出すまたは松岡をフリーにすることができる。このようにアンカー脇に人がいることが大切。
このシーンはビルドアップの段階ではないが、このフィニッシュに向かうシーンでアンカー脇を使う意識がないならばビルドアップの時にも人がいなかったはず。そこに人がいないと433相手では上手くビルドアップが進まない。これが右サイドでの攻撃が少なかった原因と考える。

4.後半の鳥栖のビルドアップ

それが後半になるとそのスペースを使うようになる。57分35秒のシーン。

画像5

森下からハーフスペースに流れたレンゾロペスへ斜めのパスが通ったシーン。これはさっきのシーンとは違ってビルドアップでアンカー脇を使えたシーン。このシーンでは碧と守田がポジションチェンジをしている。なのでこのシーンは鳥栖にアンカー脇(赤いスペース)を使われたと言える。これと似たようなシーンが46分ちょうどにもあった。このようにアンカー脇を使えるようになったことで鳥栖のビルドアップが上手くいくようになった。

これまで右サイドでの話をしてきたが左サイドではどうなのか。左サイドでは小屋松が内側のスペースを使う意識があったがそこまで効果的ではなかった。しかし後半になるとそれが効果的になる。

画像6

これは70分ちょうどのシーン。小屋松がダミアンの後ろそして中盤ラインの前でボールを受けたシーン。前半まで小屋松はアンカー脇のハーフスペースを狙っていた(16分45秒など)。それが後半になるとアンカー脇よりもさらに後ろまで降りてボランチのようにボールを受けることが多かった(69分から70分の1分間で3回)。それによって73分55秒のように碧が小屋松を意識すると、他のマークがずれて鳥栖ボランチがフリーになる。他にも50分50秒と82分30秒でも同じように小屋松をフロンターレIHが気にして前に出て行けず原川がフリーになっている。

これまで紹介した、アンカー脇で受けるレンゾロペスとボランチとして受ける小屋松の影響でアンカーの守田やIHが鳥栖のボランチをフリーにしてしまう。そのフリーの原川から逆サイドへの展開や得点シーンに繋がった。
これまでフロンターレハイプレスの弱点はWGの外にいる敵のSBが主だったが今回は中央をやられてしまった。
もし自分が監督でこれを修正するならばトップの小林とダミアンにCBまでプレスをかけさせずボランチにつかせCBにはボールを持たせる。そこから配球されても中盤では数的優位なのでセカンドボールを拾える。そもそも鳥栖はGKとCBの3枚でビルドアップしてくるため必ず数的不利になってしまう。ならば割り切ることも必要だと感じた。

5.碧のお得意インターセプト

MOFに碧を選出しておきながら何も具体的に書いていなかったので最後に碧が得意としているインターセプトの紹介。60分5秒のシーン。エドゥアルドがボールを持っていると、碧は後ろのライン間に本田がいるのを確認。わざとパスコースを消さず、エドゥアルドがパスを出した瞬間に足を伸ばしてインターセプトした。これが碧の得意なインターセプト。おそらく攻撃側の選手だったらどこにパスを出したいかを考えて守備をしているのではないかなと思う。

6.まとめ

札幌戦で連勝が止まってからなかなか勝利できていないフロンターレ。残りリーグ戦2試合と天皇杯をどう戦っていくのかも、もちろん重要だが個人的には今シーズンの終盤に顕在化した課題を来季にどう改善して繋げていくのかが気になる。憲剛が引退し主力の若手が流出する可能性もある中でどうマネジメントしていくのか鬼木監督の手腕が問われる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?