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J1第25節 川崎フロンターレ対FC東京 プレイヤーレビュー 中村憲剛選手

ルヴァンカップのリベンジとなる多摩川クラシコ。こちらも名古屋同様にリベンジを果たした。後半に攻められる時間帯はあったもののほとんどフロンターレペースで試合が進んだ。パスは731本でシュートも27本ということからもわかる。ただもちろん東京もそれはわかっており選手全員が守備に走っていた。そんな両チームの中でヒーローとなったのが中村憲剛。復帰戦でゴールを決めたと思えば今度はバースデーゴール。やはりサッカーの技術だけでなく何かを持っている。そんな男をMOFに選出。

1.スタメン

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フロンターレのスタメンは予想通り。プレビューでも取り上げたとおり先制点を狙いに三笘がスタメン。あとは東京のカウンターを警戒して守備面で働ける碧をIH。東京は中村帆高をスタメンに。これはおそらく三笘対策。あとはやはり強力な前線の選手達。

2.フロンターレのビルドアップ

フロンターレはいつもよりはポジションを変えながらビルドアップ。それでも大きな形自体は変わらない。いわゆる可変システムのように機械的に変えるのではなく、その場での選手が考えて行っている。それが顕著だったのが左サイド。

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憲剛がCB谷口とSBノボリの間に落ちて(クロースロース)、ノボリがハーフスペースに侵入。すると三田がノボリを気にして一瞬絞る。こうすることで三笘へのパスコースができてスペースもできる。このように憲剛はビルドアップの段階では落ちてゲームメイクをすることが多かった。
この流れが上手くいったのが28分30秒からのシーン。落ちた憲剛から三笘へパス。その間にノボリが二アゾーンラン(ハーフスペースから裏に走る動き)をして三田を押し込む。そして空いた内側に三笘が侵入。そこからノボリにパスをしてノボリがクロス。家長のミスキックシュートになってしまったが完全に崩し切れたシーンだった。

右サイドは家長が左サイドに出張することが多く山根が常に高い位置で幅を取っていた。そうするとジェジエウと山根の間が開いてしまいサイドチェンジがしにくい。そこで左サイドにボールがあるときに碧がジェジエウと山根の間にいることが多かった。しかしそうすると右サイドのハーフスペースに人がいなくなってしまう。後述するがこれによってサイドチェンジができないことが多かった。

もう一つビルドアップの段階で上手くいっていなかったのが中盤3人が全員東京のMFラインの前でボールを受けようとしていたこと。東京がMFとDFのライン間をかなり狭く守っていたのでIHの憲剛と碧が2人とも降りてきてしまうことがあった。35分20秒には鬼木監督が碧に前にポジショニングするように指示を出していた。ただそれでもサイドに突破力のある三笘がいるのでサイドから運ぶことができていた。

3.フロンターレの崩し

今節もやはり左サイドに人を集めて崩そうとする意図が感じられた。これは他のレビュアーのかたも書いているが今シーズンのフロンターレは同サイドに人を集めて崩しきろうとすることが多い。それが上手くいく場合もあれば上手くいかない場合もある。では今節はどうだったのか。自分は微妙だと思う。崩せたシーンもあったし崩せなかったシーンもあった。

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8分10秒のシーン。家長がいつもどおり出張してきているのに加えて碧までも出張。さらにダミアンがDFラインと駆け引きをしている。フロンターレの選手が7人も左サイドに固まっている。それに対して東京も左サイドに圧縮しているがマンツーマンディフェンスではないのでフロンターレは数的優位を保ちながらボールを回すことができる。ただボールを回すことはできるが突破がなかなかできない。だめだったら図の緑のエリアがあるように逆サイドにもっと振ってもよかった気がする。ただ逆サイドに振ろうとしても中継地点になる選手がいなかった。オーバーロードを作ること自体は悪くないが、それを同じサイドでやり続けるのは苦しい。サイドを変えながらやる方が相手としても守りにくい。
実際1つ前に紹介した左サイドでの崩しは右サイドからサイドを変えてあの状況になった。さらに言えばあの崩しは3人で行っている。サイドを変えながらやれば人数をかけなくても崩せるをいうことだ。

憲剛引退、、、

ビルドアップの段階でも述べたがFC東京はかなりライン間を狭く守っていた。またフロンターレのIHが二アゾーンランをしたらボランチやサイドハーフの選手が必ずついて行くことが徹底されていた。逆に言えば二アゾーンランをすればボランチかサイドハーフの選手を押し込むことができる。ビルドアップで紹介した28分30秒からのシーンもノボリが三田を押し下げることで空いたハーフスペースを三笘が使って崩した。

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38分25秒のシーン。碧が二アゾーンランすることでアルトゥールシルバを押し込む。するとアルトゥールシルバがもともといた緑のエリアが空洞化する。そこに守田が後方から入り込んでパスをもらった。その守田から三笘へそして三笘から碧にスルーパス。その碧がグランダーのクロスでダミアンが三笘に落としてシュートにまで至った。

4.東京の守備に対するフロンターレ

東京は前半の442から後半は343に変更。これはおそらくフロンターレの左サイドでのオーバーロードに対応するためのDFライン人数補充と二アゾーンランについていく選手をはっきりさせるため。システムを変更して得点は取っているのである程度は成功したと言えるかもしれないが守備面ではどうなのかなと思う。後述する東京の弱点が守備時に5バックになることでより弱点になった気がする。

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これは前半のシーンだが、家長から三笘の裏にパスが出て東京のDFラインを押し下げてマイナス方向にクロス、憲剛がシュートしたシーン。プレビューで書いた通りマイナス方向へのグランダーのクロスへの対応は難しい。しかしこのシーンの画角には両サイドハーフが映っていない。カウンターをしようとしていたところを奪われたのもあるがグランダーのクロスへの対応ができていない。DFラインは下がるだけでボールウォッチャーになっている。憲剛の得点シーンも5枚のDFラインとツーボランチ全員がボールウォッチャーになっていて憲剛がフリーになっていた。

東京は前半からライン間と裏への警戒がかなり集中できていた。ただライン間を埋めるのに意識しすぎてボランチが下がりすぎて4+4の2ラインがグチャグチャで1ラインのようになってしまっている時があった。これが守備時5バックになることでさらに後ろに重たくなる。そうするとデコボコのラインの手前でフロンターレの選手が前向きでボールを受けれる。東京DFとしては裏を警戒しているのでむやみに前向きの選手に飛び込めない。これを利用して東京のグチャグチャラインの前で左右に揺さぶることができればもっと崩すことができたかもしれない。

5.コーナーキック

今節はまた新しいコーナーキックの形が見られた。

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選手が密集していて見にくくてすみません。

これまではペナルティーマーク付近から走り込む形を紹介してきたがこれはまた新しい形。選手6人がゴール前に密集を作る。ただ2つのグループに分けるのは同じ。ヘディングに強い3人を二アサイドに配置し、相手の意識をゴール前の二アサイドに集中させる。こうすることでペナルティーマークあたりにスペースができる。そこに左利きの家長が回り込む。そこに憲剛がグランダーのクロスを供給。ゴールにはならなかったがまた新しい形を見られた。

6.まとめ

やはりプレビューで書いたとおり横方向への攻撃をもっと増やせれば良かったのかなとも思う。実際そうやって攻撃したシーンは決定機だったので。

この記事を書いている間に憲剛の引退会見が。動揺して後半的外れなこと書いていたらすみません。これだけ活躍している選手が引退するのは名残惜しいが、今シーズンでの引退が一番かっこいいのかなとも思う。自分がいない間に若手が成長して独走状態に持って行った。もう自分が居なくても大丈夫だと思ったのかもしれない。実際は前から決めていたっぽいけど。
憲剛が見れるのもあと十数試合。素晴らしいプレーを目に焼き付けようと思う。

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