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死刑にいたる病(ネタバレ)


公開 2022年 日本

監督 白石和彌

出演 阿部サダヲ 岡田健史(現・水上恒司) 岩田剛典 宮崎優 他

陰キャ大学生の元に、24人を殺した連続殺人鬼から手紙が来て「1人だけ僕が殺してない子がいる。真犯人を探してほしい」だってさー!

「凶悪」とか「彼女がその名を知らない鳥たち」とか、胸糞悪めの映画を撮ることを生業としている監督・白石和彌の最新作。原作は「ホーンテッド・キャンパス」シリーズの櫛木理宇。当時は「チェインドッグ」というタイトルで、のちに改題されたみたい。

元にした事件がありそうな雰囲気の映画。でもそんなことはない。阿部サダヲの気味悪さを楽しむトンデモストーリーだけど、それなりに結末が気になって中弛みもないので飽きずに見れた。スーパーの店員の子可愛い。以下ネタバレ。

1.絶対犯人じゃないだろお前

常に囁き声の大学生・筧井雅也(岡田健史)。最近祖母が死んで喪中の彼のもとに、ある手紙が届く。手紙は24人の少年少女を殺した連続殺人犯・榛村大和(阿部サダヲ)からで、「久しぶり。覚えてる?ちょっと頼みがあるから面会に来てくんない?」というものだった。
葬式やらお通夜で決めて決めて病の母親・衿子(中山美穂)とやたら感じの悪い父親(辻仁成ではない)に会ってゲンナリしているところだったので、会ってみっか!となる。大学では中学の同級生・加納灯里(宮崎優)と再会。キョロ充となりいかにもな連中とつるんでいる彼女に、雅也は露骨に軽蔑の眼差しを向けた。軽蔑の眼差しは雅也の得意技なのだ。

榛村大和は7年間にわたり、自身の経営するパン屋兼カフェに訪れた客をはじめとする24人の少年少女を拉致し拷問の上殺害した。被害者はいずれも17か18歳で、真面目そうな黒髪。マフィンをサービスしたりストーカーしたり自転車を盗んだりして信頼関係を築き、自宅横の小屋で拷問。爪を剥いだり爪を剥いだり爪を剥いだりした。剥いだ爪は瓶に入れてコレクションした。たまに自分の切った爪を集めてるキショい奴がいるが、あれのサイコ版である。ていうか吉良吉影だ。爪を剥いだあとは殺した。横着して拘束せずに睡眠薬だけ飲ませて目を離したスキに逃げられて、その子が通報して御用となった。きっとアニャ=テイラー・ジョイジェニファー・ローレンスである。

拘置所の榛村(変換できないので以下殺人パン屋)に会いにやってきた雅也。雅也は実は中学時代殺人パン屋が経営する殺人カフェの常連だった。塾に行く前にカウンターでBLTサンドを食べ、帰る前にテーブルを拭いてくれたよねと当時を振り返る殺人パン屋。自分も標的の一人だったのかと尋ねる雅也に「いや中坊はタイプじゃないンゴ」と殺人パン屋。一体何で呼び出したんだと思ったら、「立件された9件の殺人のうち最後のやつは僕じゃない」と。君が真犯人を見つけてくれと。うーん暇だしやってみっか!

拘置所の帰り道、ロン毛の変な男に話しかけられる。待合室でも見かけた男だ。
優柔不断で面会するかどうか迷ってるんですよ。ちょっとあなた決めてくれます?
何だこいつ。
すいません変なこと言って。
変すぎるだろ真犯人ですか? てか岩ちゃんだし。

2.まさか…父さん?父さんなのかい?

殺人パン屋の指示のとおり弁護士に会いに行き、事件の資料を見せてもらう雅也。ここで見るだけにしてくださいって言われてるのにガンガン写メを撮り、現代っ子感を見せつけていく。

ここで、被害者紹介。

久保井早苗(川島鈴遥)

17歳。バイトしてるスーパーで常連になる→バイト前に行くカフェで偶然のふりして声かける→「この前カフェで会いましたね」顔→犯行

宮下陸(大原由暉)

18歳。自転車泥棒→それ僕の自転車です!→間違っちゃったテヘ→レトロ映画館で会う→あ!自転車の!→こいうの好きなんだ僕も好き→犯行

根津かおる(佐藤玲)

26歳。帰社後行方がわからなくなり26日後に殺人パン屋の自宅からだいぶ離れた山中で死体で発見


根津かおるの死体が発見された山にやってきた雅也。ぼっけえ、きょうてえな地主に案内され、花が供えられている場所に手を合わせる。そして、長い髪で地味な服の女性が最近まで来ていたという話を聞く。

爪がすべて揃っていたこと、それまでと比べると殺人の間隔が短いなど、根津かおるの事件は殺人パン屋のこれまでの犯行パターンと異なっている。また彼女にストーカーがいたことや、彼女が事件当時不潔恐怖症だった情報も手に入れた雅也。殺人パン屋にそのことを話すと、やたらと褒めてくる。このくらい警察もつかんでるんだからね/////////////

実家で祖母の荷物整理をする母親。広げられた段ボールをなんとなく漁っていると、一枚の写真が。園児服の子供達と職員らしき大人が並んでいる写真。よ〜く見たら後列左の二人、若い頃のお母さんと殺人パン屋じゃね?
どういうこと?
パン屋髪型キモ!

写真後列真ん中に映るのが榛村桐江という女性で、殺人パン屋の義理の母。人権活動家らしい。19歳の殺人パン屋を養子にし、パン屋開業も手伝った。彼女のボランティアグループに所属していた竹内という男に話を聞くと、殺人パン屋と一緒にボランティア活動をしていたという竹内は、彼は当時から問題のある子供を操るのが上手だったと話す。実家で見つけた写真を見せ、母親を指し「この人のことは覚えてますか」と聞くと、彼女も桐江さんの養子で、殺人パン屋と仲が良かった。彼女は問題を起こして施設を追い出された。妊娠してしまったのだと。
いや…え?まさか…

また面会にやってきた雅也。なんかもう看守を懐柔してるっぽい様子の殺人パン屋。早速聞いてみる。

are you my father?(あなたは私の父親ですか?)

否定しない殺人パン屋。

マジかあ…

3.まさか…犯人?犯人なのかい?

根津かおる殺害現場の近くで殺人パン屋の姿を見たという目撃者がいる。金山一輝という男で、彼は10歳の時髪型がキモかった若かりし殺人パン屋と関係があった。公園で遊んでいた彼と彼の弟と仲良くなり、二人を刃物で切り合わせていた。雅也はこれが事件として扱われていないにも関わらず、裁判で刑事訴訟法157条の5(証人と被告人を遮蔽する、証人が被害者である場合が多い)が適用されていることに疑問を抱く。
金山一輝の元同僚に話を聞くと、彼は顔のアザを隠すための長髪を過剰にイジってきた上司を今すぐ殴って会社を辞めたという。劣等感で鬱屈した毎日、抑圧的な父親。いつ爆発してもおかしくない。そして、根津かおるの勤務先とも取引先としての関係があった。
彼が真犯人なのではないか。雅也はそう思った。

ある雨の日の帰り道、雅也は歩きスマホのサラリーマンと肩がぶつかった。気をつけろと言われてその場は謝った雅也だったが、よく考えたら向こうが悪いじゃねえか。俺は殺人パン屋の息子だぞ、となりサラリーマンを追いかけ傘でボコボコにした。首を絞め殺す直前で我に帰ると、逃げるようにその場から走り去る。部屋に帰ると加納灯里が待っていた。灯里は先刻切って血まみれの雅也の手を舐めだす(何で?)。それを見て興奮した雅也は灯里にキスをする(何で?)。行為のあと金山一輝の同僚から「金山の写真があった」とLINEが来ていた。早速見てみる。
こいつあれじゃん。
岩ちゃんじゃん。
いや薄々わかってはいたけど。薄々ってか。完全に。

ガンちゃんの写真を見せにぼっけえ、きょうてえの元に向かった雅也。
そうそうこの人、とぼっけえ、きょうてえ。岩ちゃんは殺害現場に何度も来ていたのだ。
手を合わせて帰ろうと思ったら、岩ちゃんとエンカウント。しかも「僕が殺したんです」とか言ってる。咄嗟に逃げる雅也。追いかける岩ちゃん。捕まる雅也。「違うんだ!」と岩ちゃん。

4.お前もか


雅也は面会に来ていた。これが最後の面会だ。
「根津かおるを殺した犯人がわかりました」と雅也はいう。
岩ちゃんは犯人ではなかった。その昔岩ちゃんとその弟は殺人パン屋に刃物で切り合いをさせられていたが、正確には「切られる方を二人に決めさせていた」のだった。
一方で根津かおるは版を押したように規則的な生活を送っていた。それを知っていた殺人パン屋は、彼女がいつも通る道に岩ちゃんを呼び出し、「誰と(誰を)遊べば(殺せば)いいか」と訊ねた。岩ちゃんは咄嗟に通りかかった彼女を指差してしまった。次の犠牲者を決めさせられたのだ。

根津かおるの潔癖や偏食は、殺人パン屋が負わせたトラウマによるものだった。殺人パン屋はその時殺せなかった彼女を殺すだけでなく、彼女と繋がりのあったガンちゃんも利用して苦しませ、さらに事件を調べさせる名目で雅也を操ることで悦に入っていた。もはや変態殺人パン屋である。

雅也の母親はボランティアグループ時代、妻子持ちの男の子を孕んだ。生理不順で妊娠に気づかずマットレスの上で出産、胎児は死んだ。その時死体の処理を手伝ったのが変態殺人パン屋だった。つまり、変態殺人パン屋は雅也の父親ではなかった。あーよかった。

雅也にすべてを見抜かれた変態殺人パン屋はいじけたように「もういいかな。じゃあね」と言って面会室を出ていく。

それから、灯里といい感じなリア充生活を送っていた雅也。行為の前にふと「爪綺麗だね」と言ってみたら「剥がしたくなる?」と返してきたので飛び退くと、その拍子に灯里のバッグから封筒が出てくる。見覚えのある字だ。恐る恐る裏を見ると、「変態殺人パン屋」と書いてある。青ざめた顔で灯里の方を見ると「好きな人の一部を持っておきたい気持ち、わかるなあ」だって。キモ〜


感想

スーパーの店員の子可愛い。

ガラスを通り越して手を握るとか首を掴むとか向かい合う二人の体がガラスに映る姿と重なって異形の人間みたいになるとか面会室の奇妙演出が鬱陶しかったけどそれなりに面白かった。

やっぱなんか「ありえないだろこんなん」ていう話だから逆に安心してエンタメとして見れるのはあるかもしれない。

激キモラストはちょっと雅也くんが可哀想でした。

追記:岡田健史君は2022年8月以降、事務所との契約終了を機に本名の「水上恒司」として活動している。へー知らなかった。

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