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選手たちの一人歩き2/2


日本サッカーは市場競争ができていない。


 
Jリーグにお金が入ってこない。
これが貿易なら、破綻するチームが出てこないのが不思議なくらいだ。
日本のプロチームで黒字のチームはあまりに少ない。
 
やりがい搾取ならぬ、人材搾取が起きているに日本サッカー。
そこを競わずに今のJリーグを認めることは、停滞と足踏みの現状をよしとすることになる。
投資マネーがサッカー界に入り始め、お金はあるところにはある。
それを手に入れる機会はそこら中に落ちている。
 
お金がなくても選手の育成や強いチームを作ることができる。
しかし問題は質だけではなく、スピードだ。
10年かけて築き上げるものを3年で仕上げるヨーロッパ。
日本が周回遅れになるのも当然である。
 
そしてヨーロッパサッカーは下位のチームもしたたかだ。
1:資金力が乏しい代わりに育成機関としてトップオブトップチームの若手を安くレンタルで引き受ける。
序列が上がらない選手が、再び他のチームへレンタルされる際には移籍金が発生する等、複雑に複数のチームが所有権を取得する。
比率で権利が変わる株と同じような取引が行われる。
 
2:トップオブトップで活躍できずに市場価値が下がった選手を買い(レンタルまたは完全移籍)、より高く売る。
 
3:まだ目を付けられていないサッカー市場で原石となる選手を発掘し、育てる。
「安く買って高く売る」を徹底する現実的な市場競争を繰り広げるのは基本の戦略。(トップオブトップチームは、そこそこ高く買ってさらに高く売る戦略までやってのける)
 
以上のような特徴が主に挙げられるが、そこで皮肉なことも起きている。
昨今の資金力格差によって、同じリーグの競争相手のはずが、下位チームがトップオブトップチームのBチームのようになっていることがあるのだ。
まさに大企業と中小零細の構図だ。
 
 
日本サッカーの起爆剤とは
 
Jリーグを盛り上げたのは何か。
 
それは海外選手だ。
ジーコ、ストイコビッチ、リトバルスキー等を筆頭に数々の外国人選手がいたから日本のサッカーは盛り上がったという側面がある。
今もそれは大して変わらないのではないか。
 
ではなぜJリーグは足踏みしているのか。
お金がないからに他ならない。
 
選手が人生をかけて戦っているなら、経営陣はそれ以上に競わなければいけないはずだ。
育成は選手だけではない。
フロント陣こそ活躍する選手たちに見合う人材を生み出さなければ、選手はいつまでも海外に流れてゆくことになる。

以下に、抜粋した日本人選手の海外への推定移籍金を記す。

遠藤→シントトロイデン(不明)→シュトゥットガルト→2億4000万(+レンタル慮2000万)リヴァプール40億

南野→ザルツブルグ1億1000万→リヴァプールFC12億円→モナコ25億円

吉田麻也 →VVVフェンロ なし →サウサンプトン 3億3千百万 サンプドリア、シャルケ、LAギャラクシーなし

板倉 →マンチェスターシティ1億4千万→ボルシアMG8億2千万

三笘 →ブライトン3億9千万→90億(2023年8月時点の市場価値)
 
旗手 →セルティック2億3千万
 
内田 →シャルケ 1億5千万 

富安 →シントトロイデン 1億1千7百万円 →ボローニャ10億→アーセナル27億

伊藤純也 →ヘンク2億7千万→スタッド・ランス13億5千万

菅原 名古屋→AZ2億2千万

稲本潤一 →アーセナル3億8千万

久保建英(久保のFC東京の年俸は700万)
→レアル・マドリッド→マジョルカ→レアル・マドリッドはなし→ビジャレアル1億8000万→ヘタフェ1億8000万→マジョルカはなし→レアル・ソシエダ9億2000万

鎌田 →フランクフルト2億2千万→ラツィオなし
 

以上の推定値だけでも、いかに安く買い叩かれているかが伝わる。

 

日本人選手は技術が凄いと言われても、それで勝てないのだから選手は海外に打って出る。
そして海外からは助っ人外国人を呼ぶという現状があるわけで、現在の日本代表が殆ど海外組だと嘆くことは、Jリーグの現状に目を背けているだけなのではないだろうか。
 
実力がないのに呼ばれることほど惨めなことはない。
特にA代表チームは結果を出す場所であって育成機関ではない。
 
 
日本人は、実は超自己中心主義的な人種。
 
日本人のサッカー選手はよく、真面目とかチームワークがいいなどと言われたりするが、その割には戦術や監督選考に長期的な一貫性がなく、自己変革に乏しい。
逆を言えば、外部のアイデンティティに染まりやすい体質を持っているのが日本人なのではないか。
 
そう考えると辻褄は合う。
戦中戦後の反動で、国民が皆そろって右を向くように、生真面目にせっせと働くことで得た経済的成功体験の歴史と文化が日本のサッカーシーンにも影響を与えている。
 
つまりもともと日本人は、そんなに真面目でもない。
だからこそ規律を重んじられて、本来の気質が封印されているのではないか。
 
海外挑戦してある程度成功した選手たちは、ステレオタイプの日本人とはどうも違う。
ずる賢くなりふり構わず、勝負に徹しているように見える。
しかしそれは元々ではなく、彼ら自身が海外での経験を経て、後天的に身につけている。
いや、解放されているといってもいい。

“「技術」ではなく「勝負」の文化”が違うということに、海外選手たちは気づいた。
 
ドイツのように国外の選手の起用人数が大幅に変わったらどうなるだろうか。Jリーグにも多国籍集団のチームができるのは間違いない。
多少資金力と野心のあるスポンサーがつくことがチームにとっては絶好のチャンスにつながる。
 
選手個々は危機感を感じ、日進月歩の歩みを止めていない。しかしJリーグの体制が全く追いついていない。
 
選手が必死になって海外で闘い、活躍した選手を世間は海外組と呼んでもてはやす。その上でさらに、J1リーガーは日本代表には選ばれないのかと文句を言っても、それは負け惜しみではないのか。
それだけJリーグが勝負の世界で遅れを取っているということに目を向けないと、おそらく早晩、赤字で撤退・消滅するチームが多数出てくることになる。
かつて世間を騒がせた、横浜フリューゲルスの消滅で学んだ教訓はどこに行ったのだろうか。
 
今度は選手だけではなくチームが買い叩かれる。
横浜Fマリノスのようにシティグループの一員としてチームの強化をはかるのは一つの策だが、Jリーグを変革するほどの力はまだない。
マリノスというチームは確かに強いが、何か劇的に変わったかと言われれば、難しい。
プレーの強度は確かに上がったが、「Jリーグのサッカー」から脱却できていないのだ。
 
プレシーズン中のヨーロッパ強豪国が調整のために試合に訪れていることが、悔しいと感じるのは一部の人間だけなのだろうか。
悔しい理由、それはつまりこれが「遠征」ではなく、あくまで「ツアー」という意味だからだ。
 
ツアーで来日しているチームから得点して(まれに)勝利している姿を見て、一番複雑なのは選手のはずだ。
チケット代の高騰で空席が目立ち、さらには金銭的な利益など日本にとっては微々たるものであるこのツアー。
 
そこに本物のサッカーの熱狂があるのだろうか。
興行の面が強すぎて、真剣勝負がどこにもないのだ。


 
シーズン明けから故障者が頻発するヨーロッパのトップオブトップ
 
ヨーロッパでは23-24シーズンが幕を開けた。
そして選手の故障が続出している。
昨シーズンが終了し、ほとんど休む間もなく世界中をツアーで回り、疲労というよりもはや疲弊している選手たち。
サッカーの財産である、才能あるトップ選手たちが潰れている。
大きな時差のある国まで赴く興行に、サッカーの未来はあるのだろうか。
 
海外進出が増えている日本人選手も例外ではない。
活躍し、ステップアップする選手ほど危険だ。
 
今後再び、日本代表選手が大きな怪我で選手生命を棒に振る事態が起きるにちがいない。

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