個人開発アプリのプロダクトとしてのポテンシャル
Somatoは5月頃にリリースした、100枚/秒で写真を閲覧できる超高速写真ビューアーアプリ。
Somatoが解決しようとしている「スマホやデジカメの普及により写真をたくさん撮るようになったものの、一生振り返る暇がない」という問題自体にはある程度普遍性があると考え、多くの人に使ってもらえるポテンシャルがあるのではという期待があった。
しかし、いろいろ試行錯誤したものの、全然伸びなかった。
TOTOCは先週リリースした、AIで人やペットを認識して自動で動画を撮影開始/停止するアプリ。
監視・見守り分野だと需要もあるかもしれないが、僕がつくりたかったのはあくまで思い出としての動画を撮影する用途であり、当初は「また需要のないニッチアプリをつくってしまった」と思っていた。
が、公開してみるとTwitterでもFacebookでも想像以上の反響があった。
よく考えてみると、TOTOCはSomatoよりもさまざまな面でプロダクトとしてのポテンシャルがあるなーと思ったのでそのあたりのメモ。
継続性
Somatoは今でもとても良いアプリだと自負している。
「大量の写真、いつ振り返るの」問題の解決手段はまだ見つかっていないと思っているし、その問題に対して「超高速に見る」という解決法は一見トリッキーだが確かな効果がある。
しかし何度も繰り返し使うものではない、とも自覚している。撮って以来振り返る機会のなかった数百〜数千枚の写真が入ったアルバム群(トータル数万枚)を見返す良い機会にはなったが、もう数年は見返さなくていい。
卒業アルバムみたいなものと思っている。大事な体験を提供するものではあるが、日々の生活の中で定期的に手に取るものではない。
一方でTOTOCは、動画を撮影するアプリだ。しかも、「できるだけ全部撮っておきたい」という動機から開発したものだ。繰り返し使うことを意図しているし、実際に自分は繰り返し使っている。子供がいると、使うたびに「TOTOC仕掛けといてよかった〜」という動画が撮れる。
TOTOCは(Somatoと比較すると)繰り返し、継続して用いられるポテンシャルがあると思う。
拡散性
Somatoは大量の写真を超高速に見るアプリだ。エモい体験になるので、一見すると「シェアしたくなる体験」に思われるかもしれない。しかし実際にはそうでもない。言語化しにくいが、超高速閲覧している画面を録画しても、その動画自体にはエモさは宿らないのだ。
当初は画面録画ボタンを置いていたが、ほとんど使われてなさそうなので取り外してしまった。
一方でTOTOCは、アウトプットは動画だ。良い動画が撮れればSNSで、あるいは家族や友人にシェアしたくなる可能性がある。
子供の動画であれば、たとえば「みてね」等にアップされるのではないか。
そうするとアングル的に、あるいはシーン的に普通に人がカメラを構えて撮るのとは違う類の動画になるので、「これどうやって撮ったの?」という話になるのではないだろうか。
マネタイズポイント
いろいろ悩んだが、結局Somatoは「広告非表示」課金しか入れられなかった。
本当は機能を開放する系のマネタイズもどこかしらでやりたかったのだが、誰も使わない機能を課金ポイントにしても誰も買わないし、「写真を超高速に見る」というまだ世に理解されてない体験を提供している関係上、機能に制約を設けて課金ポイントにするという選択は取れなかった。
一方でTOTOCは、「AIによって自動で動画を撮れる」というわかりやすいコア体験があり、そのコア体験を邪魔しない課金ポイントがたくさんある。たとえば撮影品質の切り替えや、撮れた動画を「まとめて書き出す」機能がそう。これらなしでもコア体験を邪魔することはないし、コア体験を良いと思ってちゃんと使うとなると欲しくなる機能だ。
わかりやすさ
Somatoの「超高速で写真を見る」ことの価値はなかなか伝わらない。写真をあまり撮らない人や、振り返り体験に興味のない人にはそもそも刺さらないし、iPhoneやiCloudで写真を管理していない人にはすぐに体験してもらえないし、「超高速で写真を見ても結構エモい」という体験はSomato以外ではできないので、想像では伝わらない。
一方でTOTOCはわかりやすい。
AIで人やペットを認識して自動で動画を撮影開始/停止する
子供が突然やる仕草やおしゃべり、撮りたいと思ってカメラをかまえても大抵もう遅いので、いっそのことカメラを置きっぱなしにして全部撮っておきたいな〜と思ったのが着想のきっかけです。
これでだいたい「それいいね」と言ってもらえる。
数値的な証拠として、TOTOCは(Somatoよりもかなり)コンバージョン率が高い。ストアのページを見てスッと「良さそう」と思ってもらえているということだと思う。
最新技術のプレイグラウンド
Somatoではこういう機能を入れたが、
正直実用的ではなかった。「大量の写真を高速閲覧」というコンセプトと、MLは相性が悪い。100枚/秒での閲覧と機械学習処理は共存できないし、数百〜数万枚の写真を対象としているので前もって処理するのも厳しい。
一方でTOTOCは、動画撮影アプリなので、最近Appleも力を入れているオンデバイスML機能を素直に導入できる。
最後まで読んでいただきありがとうございます!もし参考になる部分があれば、スキを押していただけると励みになります。 Twitterもフォローしていただけたら嬉しいです。 https://twitter.com/shu223/