【朗読台本】星夜(せいや)と旅人(4~5分程度/ファンタジー/物語)
使用方法
作品のどこかに
”@RiRiO_358”
”おかリナ▽Works”
いずれかのクレジット表記をして頂く。(文字でも声でもキャプションでも可)公序良俗に反するコンテンツでは使用しない。
自作発言をしない。
商用の場合は一度ご相談ください。
性別を変えて読んでいただいても大丈夫です!(固有名詞なども変更OK)
上記を守っていただければどなたでも使用可能です!エンジョイ朗読!
もし使用報告頂けましたら作品をこちらでもご紹介させて頂きます!(もちろん作者様の許可のもと)見たい、聴きたい。
ジャンル
ファンタジー/物語
長さ
4~5分程度
想定人数
1人
今夜は星が降る。
海と風を混ぜて出来た夜空に、月女神のドレスの裾から零れる雫。
それを流れ星、と呼んだ。
小高い丘の上、焚火を星見の友とした旅人が、その火で沸かした珈琲をカップに注いでいる。
薬缶とカップのかち合う軽くて硬い音、焚火が燃えるぱち、ぱき、かき、という鳴き声。その他には時折さわ、と通る風に揺れる葉の囁き。
ここで聞こえる音はそれだけ。
じんわり、じんわりと旅人を照らす焚火が、柔らかく暖かに彼を守っている。まろやかな明るさと温度に安堵して、旅人は珈琲を口に運んだ。
ゆわり、湯気を立てる珈琲にふ、と吐息を吹きかけてすする。
じっくりと喉、胸、腹へと広がっていく珈琲が、旅人の体を芯から温めた。
口の中に残るほろ苦く、それでいて深い香ばしさが舌の根を労わる。
ああ、と思わず旅人は極楽の声を漏らした。
その時、一条の光の線が夜空を駆ける。
星が降り始めた。
しゃら、しゃら、と耳奥をくすぐる心地の良い音が、光の尾から降ってくる。旅人は夜空を見上げた。
規則性はなく、ただ自由に星は夜空を走った。
一時は川の流れを思わせる無数の線。一時はぽた、ぽたと零れる乙女の涙。
月女神の雫は、何を気にすることもなく降るのだ。
本当に何かがこちらに降ってくるわけではない。
ただ、光る雫が空一面をしゃらしゃらと駆けていく。
流動する宝石箱の輝きのように、それは夜空にいくつもの軌跡を残した。
流れ星は夜明け前まで続いた。
東の空が緑の輝きを帯びる頃、控えめになった星の音はやがてゆっくりと止む。
見届けた旅人は、何杯目かの珈琲をカップに注いだ。
そうしてまた、ゆわり、湯気を立てる珈琲にふ、と吐息を吹きかけてすする。
ああ、と思わず旅人は極楽の声を漏らした。
珈琲を飲み終えたら、今日はどちらへ向かおうか。
夜明けの風も、旅人の前髪を揺らしては子どものように問うていた。
今日はどこへ向かうの、と。
END
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?