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【2021年夏 那覇市議選のすすめ】畑井モト子さん〔上〕 仲村之菊

 今年の夏は那覇市議会議員選挙が行われる。7月4日告示、7月11日投開票の予定である。
 本誌読者の多くは沖縄の選挙への関心が高いと思うが、今夏の那覇市議選はコロナ禍ということもあり、前回の那覇市議選をめぐる情勢や争点とは傾向を大きく異にしている。
 「自分が選挙に出るなんて想像もしていなかった」という新人立候補者予定者に共通する立候補の決意の理由の一つは、「コロナによる経済打撃の回避」というものであり、それがそのまま彼らのマニフェストとしても掲げられている。
 観光客数の減少により那覇市のメインストリートである国際通りは閑散とし、「昼間でも深夜のようだ」と地元の人々は表現している。それでも人々は踏ん張りながら、また支え合いながら今を過ごしている。
 そうした情勢のなかでコロナ対応をメインとする独自のマニフェストを掲げた立候補予定者が続出している今夏の那覇市議選。立候補予定者、特に新人の立候補予定者には注目されたい。
 今号から3回に分け、今夏の那覇市議選に立候補を予定している新人立候補予定者を紹介したい。また、選挙終了後にはその結果もお伝えする予定だ。彼ら新人立候補予定者のコロナ禍への痛烈な声やマニフェストに注目し、沖縄訪問の折にはぜひ注目、応援していただきたい。

 ご紹介する方は、畑井モト子さん(41)。「はちさん」との愛称で親しまれている。無所属。新人。選挙に立候補すること自体初めてだそうだ。
そんなはちさんこと畑井さんのプロフィールを簡単に紹介したい。

●1980年奈良県生まれ。2009年から現在まで那覇市在住。
●大阪モード学園ファッションデザイン学科卒業。セクシャルマイノリティー、LGBT当事者。
●現在の職業はTP・Webデザイナー。資格は動物福祉検定初級。
2014年より任意団体「TSUNAGU OKINAWA」を設立し、犬猫の殺処分ゼロを目指す活動を始める。犬猫を取り巻く現状を知ってもらうため、フリーペーパー「つなぐマガジン」を年2回発行。また、犬猫の譲渡を行うイベント「つなぐフェス」を毎年開催し、動物好き以外の人にも興味共感を広げ、地域の繋がりも生み出している。
●沖縄県内の動物愛護団体で構成されている「一般社団法人 琉球わんにゃんゆいまーる」の代表理事も務め、地域住民と共に飼い主のいない猫(野良猫)のTNRや保護、譲渡活動を行ないながら、自治体や行政への要請や提言、並びに講演会などを行っている。
※ TNRとは、Trap Neuter Returnの略。野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術を行なった後に、元の場所へ戻すこと。
●2020年より那覇市の商店街の有志3人と共に、商店街に活気を取り戻そうと「マチグヮーストア」をオープンする。「マチグヮーストア」は商店街の商品を手軽にネット注文が出来るオンラインストアとなっているため、ユーザーが便利なだけではなく、新型コロナウィルス感染症の影響を受けて、商店街から客足が遠のく状況に、わずかではあるものの困窮回避に繋がればと考えたそうだ。
●幸せを感じる瞬間は、いうまでもなく猫とゴロゴロしている時とのこと。

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はちさんこと畑井モト

はち(はたいもとこ)は市政に挑戦する覚悟を決めました!
 7月11日(日)は那覇市議会議員選挙です。
 わたし、はち(はたいもとこ)は市政に挑戦する覚悟を決めました!
 沖縄にきて12年。
 ご縁をいただき那覇のマチグヮーでたくさんの人々と関わりながら、仕事や生活を営んできました。
動物愛護のボランティア活動
 中でも力を入れて積極的に行なってきたことは動物愛護のボランティア活動です。飼い主のいない猫(野良猫)の不妊去勢手術や保護をし里親さん探しなどをおこない、人も猫も住み良いまちにするためのお手伝いをしています。また、啓発活動や行政へ問題提起もしてきました。
活動を通して見えたきた社会問題
 7年間のボランティア活動を通して、様々な人と関わっているなか、孤立や孤独、高齢者、生活困窮者など社会的弱者という立場である方が社会的な繋がりを失っていることが活動を通して見えてきたのです。
 犬猫の問題という表面的に見えるその奥に貧困や孤立孤独が、地域コミュニティの衰退などの社会問題が繋がっている。問題の本質に社会全体で目を向けていくべきだと考え始めました。
LGBTQの当事者として
 また、わたしは性的マイノリティ、つまりLGBTQの当事者です。
小さい頃は青色が好きでスカートが大嫌いでした。男の子とサッカーをして遊ぶ方が楽しい。そして、初めて好きになった人は同性の女の子でした。『自分はおかしいんだ』と思いながら思春期を過ごし、中学校ではクラスに馴染めずに引きこもりになった過去があります。
 どんなジェンダー(性別)でも、どんなセクシャリティー(性的自認や性的指向)でも、どんな障がいを抱えていても、どんな人種であっても、幸せに生きたいと望むことは無理難題な要望ではありません。しかし、現実にはこの社会の中で、LGBTQも含めて、マイノリティー全般にイジメや差別を受けて孤立してしまう人も非常に多く存在しています。
  ※マイノリティー(少数)
  ※マジョリティー(多数)
 自分には関係がないことだと思っている人も、人は環境が変われば、いつ自身がマイノリティーになるか分からないし、身近に人知れず苦しんでいる人たちがいるかもしれません。
沖縄の人々に恩返しがしたい
 沖縄で出会った人たちがありのままの私を受け入れてくださり、また社会問題に向き合う機会と挑戦、新しい人生を与えてくれました。自分が経験したことが誰かの役に立つかもしれない。今度は私が沖縄の人々に恩返しをする番です。
 仕事とボランティア活動をやりながら、限られた時間の中で地盤なし、看板なしでの挑戦。手探りで何からはじめたらいいのかも分からない状況ですが、家族がいない沖縄で支えてくれている友人に感謝いたします。
多様な個が大切にされ自由に生きられる社会にしたい!
その想いのもと、全力で突っ走っていきますので応援いただけたら幸いです😺
2021.4.17 はち(はたいもとこ)
※私はこどもからお年寄りまではちという愛称で呼ばれています。
応援よろしくお願いします🐱

 こうした畑井さんのプロフィールや出馬の決意表明の記事を読むだけでも、畑井さんの熱意や思いが窺われる。
 そのため蛇足となってしまうが、わたしから畑井氏についての魅力を紹介し、推薦としたい。
 わたしは幼少期から生き物が大好きなのだが、「大好き」の反対側で起きている「虐待」や「飼育放置」の問題について、なかなか携われずにいた。そのため自分が講演会などをする機会があれば、そこで発生する収益の半分(残り半分は開催地域に還元)を犬猫や生き物を保護する活動をしているグループなどに寄付したいと考えていたが、沖縄で講演会を開催する機会に恵まれたので、主催者に「信用のある犬猫の団体を知っていたら教えて欲しい」と尋ねたところ、間髪を容れずに出てきた名前が「はち」だった。はち、つまり畑井さんのことである。
 畑井さんについての詳細を聞くと、有志で私費を出し合い猫の保護活動をしているということで、わたしと活動内容は違うが身銭を切るスタイルが似ているなあと思い興味を持ち、その日のうちに畑井さんが代表理事を務める「一般社団法人 琉球わんにゃんゆいまーる」へ収益の半分を寄付すると決めた。それをきっかけに、畑井さんとの交流が始まる。
 畑井さんから話を聞けば聞くほど「命を預かる、繋ぐ」ということの大変さを思い知らされた。何よりも、畑井さんの姿勢は真っ直ぐで、だからこそ今わたしが懸念していることは、もしも選挙中に猫の相談があったら、畑井さんは自分の選挙よりも猫の相談を優先してしまうだろうなということ。しかし、その判断は、畑井さんとして至極真っ当であり、そんな畑井さんが人としてまた生き方としてもおおいに尊敬と信頼が出来るところである。

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犬猫の保護活動をする畑井さん(畑井さんの note より)

 また、畑井さんは自身が公言しているように、LGBTQの当事者である。そのため畑井さん自身が過去に経験した辛い思いは、同じ経験をした人だけが共感を持ってようやく分散されるような痛みであってはならないし、そもそも痛みを感じることがおかしいのだという認識が広く共有されるべきである。そうした観点からも、畑井さんは「ただ普通に生きたいと願うことは、決して無理難題を要求しているわけではない」という単純明快なことを掲げている。それでもまだまだ、この単純明快なことが理解出来ない人も多く存在するため、畑井さんの立候補予定の表明は、「周知」という意味でも希望が持てる。
 プロフィールにもあるように、畑井さんは那覇のマチグヮー(市場)に携わっているが、コロナにより苦しんで居るマチグヮーを支えるため、「マチグヮーストア」というネットショップを有志と共に立ち上げた。
 心に思うだけで留まってしまう人が多いなかで、考えて実行に移せる人はそうはいない。しかし、そのことを「わたしは周りに恵まれているから出来るんだよ」と答える畑井さんが那覇市議選に立候補する予定と聞いた時、それはむしろ名案だと思った。
 わたしが通っていた沖縄の居酒屋もコロナにより二店舗が閉店しており、ただ事ではないと感じている。無利益無報酬で商店街の人々に「がんばろう」「乗り切ろう」と言葉だけをかけて乗り越えられる状況ではない。経済が回らない中で、どう「がんばれ」といえるのか。物理的にも精神的にも困難を極めた商店街の中で、実際に行動し、わずかでも経済の循環を作ろうと努力している畑井さんの姿は、「がんばって」というエールが無責任だとさえ感じてしまう行動力ではないだろうか。
 犬猫については、沖縄には独自の事情もある。「やんばる3村」と呼ばれる国頭村、大宜味村、東村のやんばるの山々では、生息するヤンバルクイナやオキナワトゲネズミなどの希少種が犬猫による捕食被害を受けており、本来の生息域で生きることが難しい現状がある。畑井さんは、犬猫が希少種などを捕食してしまうことは犬猫を捨てる人間の無責任がそうした悪循環をつくっている原因であり、それをこれまでの知識と経験、啓蒙で食い止めたいと言う。
 畑井さんは政治家の家系の生まれでもなく、沖縄出身でもない。政治資金が潤沢にあるわけでもなく、後ろ盾もない。地盤看板鞄がものをいう選挙では、圧倒的に不利である。しかし、沖縄や那覇、そしてそこに住む人々と命ある全てのものを大事にしている気持ちがとても強い。そのことはわたしがよく知っている。二言目には「地域に恩返しがしたい」と言っていた畑井さんが、それを体現するため那覇市議選へ立候補を予定したことは何の不思議にも思わなかった。
 陰ながらではあるものの、わたしは畑井さんを全力で応援したい。那覇市に限らず、全国から応援と注目をお願い致します。

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猫を見守る畑井モト子さん(畑井さんの note より)

●畑井モト子さんの決意表明
https://note.com/hachi_hatai/n/n37070732c904

●マチグヮーストア
https://machigwastore.stores.jp/
個人的にはマチグヮーストアの島とうがらしのりがおすすめです。

【執筆者:仲村之菊、「神苑の決意」第54号より】


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