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とにかく、あれこれやってみる〜ザッポス伝説とモモ

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これも胸熱だった自叙伝。

ザッポスのCEOであるトニー・シェイによる『ザッポス伝説』。

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お世話になっている偉大な魔法使いがよく「伝記を読みなさい」とすすめてくださるので、意識して伝記、自叙伝系を読んでいる。

トニー・シェイはアレックス・バナヤンの『サードドア』で知って気になっていたこともあって、いい流れ、ご縁。

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『サードドア』でのトニーはポーカーフェイス(実際、ザッポスのCEOになる前にいろいろやったことのひとつがポーカーとその研究だったりもする)で表情を変えない、クール?で何を考えてるかわからない的な印象だったけど、本書でみせるその顔はまったくそんなことはなく(そもそも表紙がスマイルだ)、ビジネスに関する本としては非常にカジュアルかつユニーク。

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そして大変エキサイティングで面白く、また深い内省の機会にもなった。

「はじめに」でトニーが書いているように、本書はゴーストライターを使わずに(それをわざわざ宣言するということは、それぐらい当たり前なのか)トニー本人が書いていること。

そのせいで英文法的には「高校の英語の先生をうんざりさせるような」ものらしい。(日本語訳ではそれが味わえないのがちょっと残念だけど)

そしてそれは意図的になされているとのこと。

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そんなこともあってか、読みやすいし彼が過ごした、経験してきたことからなる世界(本書の)にじつにすんなりと入り込めて(深い変性意識状態に)、面白いしエキサイティングだし、ハラハラもし、ドキドキもし、ときに痛み、そしてエクスタシーも感じられるエンターテインメントを味わえた。

トニーだけでなく、ザッポスに関わる(役員や社員だけでなく、取引先、資金調達先、ザッポスの顧客等)さまざまな人の肉声が入っていることも、本書を複層的に編み上げたタペストリーのようにするのに功を奏している。(だから、トニーが言うように完全な社史や自叙伝とは違う)

それと、とくに大事なのはコア・バリュー(ザッポスをザッポスたらしめる企業文化の核となるもの)のひとつ「楽しさとちょっと変なものを創造する」がスパイスとしてグイグイ効いてるところかな。(変なところたくさん)

まぁ、とにかく面白かった。

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ザッポスはネット通販で商品を売っている、それがビジネスなわけだけれども、実際には(彼らにすると)それ(ものを売る)が彼らの仕事、ミッションではなく「カスタマーサービス」こそがそれなんだと。

カスタマーサービスはもの、商品を売るにあたって発生する付属的なものという印象(理解といってもいい)だけれども、それを彼らはひっくり返して、そしてそれで唯一無二のユニークな存在として大成功している。(それはたんに金銭面での利益をあげるだけでなく、ハピネスという形にならない、だけれども一番大切なもの「体験」を提供して)

1ライン・サンプリング、1ライン・エッセンス、1ライン・レビュー(『遅読家のための読書術』)でいえば、1ライン・エッセンスは「とにかく、あれこれやってみる」で、1ライン・レビューはモーフィアスの「道を知ることと実際に歩むことは違う」かな。(後者の引用は実際にトニーが本書でしているのも面白い)

そしてもう一冊はミヒャエル・エンデの『桃』じゃなくて『モモ』。

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彼の名と著作はあまりに有名なので(映画もされてたり)知ってはいたけれど、実際の作品には触れてなかったなぁと。

小学校高学年以上が対象(だから俺が読んだっていいのだ)とは思えない、そして今読んでもまったく色あせていないワールドを深く濃く堪能。

主要キャラクターたちのなかでもグンバツな存在感、役割を果たしているのが表紙イラストにも描かれている亀のカシオペイア。

最後ももちろん、彼(の甲羅)がしめくくってます。

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表紙、挿絵、どれもエンデ自身の手によるものだということも知り、さらにふかーくそのワールドを味わえて感無量。(でも、ついさっきメルカリで売れちゃったんだけどね、ドナドナ的な)

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