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ミッキーマウスやミニーマウスの指は4本です。
鉄腕アトムの指は、後に5本に変更されましたが、当初のアニメでは4本でした。
実は鉄腕アトムだけでなく、怪物くんも不二家のペコちゃんも、アニメキャラはほとんどが4本。後に5本に変更されたキャラも多いのですが、今でもアメリカのアニメキャラは4本です。

これ、なぜなのか? というお話です。

はじまりは、ミッキーマウスから…

アニメキャラが4本指なのは、ウォルト・ディズニーの「蒸気船ウィリー」に登場したミッキーマウスが4本指だったからですね。
とは言え、その後のアニメキャラがウォルト・ディズニーへの敬意を表して的なオマージュとして4本指になったわけではなく、そこには合理的な理由がありました。

動きのあるアニメでキャラの指を5本にすると…

動きのあるアニメで、キャラの指を正確に5本にしてしまうと、指が6本に見えてしまうことがあるんですね。4本にしておくのがもっとも自然に見えるからということなわけです。
当時のアニメは、今のように録画できるわけでもなく、放映されたらそのまま消えてしまうものでした。そのため、そのほうが自然に見えて都合がよかったんですね。

手塚治虫は、「わが人生・わがマンガ」(1988年、『手塚治虫 ぼくのマンガ道』新日本出版社)の中で次のように述べています。

みなさんみてもらうとわかるけど、ミッキーマウス、ドナルド・ダック、それから、ミニーとかいろいろ、ホーレスとか、いろんなディズニーのキャラクターってのは、人間以外みんな指が四本なんです。人間も四本だったんです。

なぜ四本かっていうことは、ぼくが大人になって、アニメーション作り出してからはじめてわかったんだけど。ディズニースタジオに行って聞いてみたら、四本で描かないと、あれ、動いてるでしょう、アニメっていうのは、動いてるけど、スムースに動かない。ぎくしゃく動くってわけなんだけど、指が五本に見えるんだそうです。四本でちょうど五本に見えるんだって。

それで、五本描きまして動かすと、六本に見えるときがあるそうです。アニメーションっていうのは、連続してる絵じゃなくて、一枚一枚描きますからこうぎくしゃく動くんだけど、残像現象で、前の指が残ってて、ちょっと動いた指がまた目に映って、というような形で、ずーっとつづけて映像を見ると、五本が六本に見える時があるんだ。それで四本描くと、動いてると、ちょうど五本に見えるってこと聞いたことがある。そういう意味で、「レオ」なんか、四本指なんです。

後に別の問題が発生して…

日本でもアニメのキャラは4本指が主流になりましたが、これは1960年代の話です。
ところが1980年代になると別の問題が発生します。差別の問題です。

江戸時代の身分制度の最下層とされた「穢多」(えた)は、当時動物の死体処理などに携わるという意味で「よつ」(四つ足)という蔑称が存在していました。
そして差別に対する問題意識が高まると、「よつ」という言葉だけではなく、テレビなどでは4本指を立てることなどもタブーになっていきました。

私もかつて某公共機関で、イラストのある仕事を取り扱ったとき、こんなことがありました。
印刷が刷り上がって、納品した後、先方の担当から突然呼び出され、「これは問題ですね!」と指摘されたことがあります。もちろん、その担当もそれまで何回もチェックしてたにも関わらず、なんで「今さらかぁ」とは思いましたが…。
コップを持った女性のイラスト。正面から見ると指が4本しか見えません。持ってますからね。でも5本で描かないとダメ、ちょっとでも親指が見えてないとダメ、不自然だろうが何だろうがダメ。そう言われまして、全部やり直しになりました。
当時は、目もウインクしてたらダメ、片耳が見えなくてもダメ、と、いろいろやたらとダメが多かった時代でした。

こういう社会的な背景から、アニメキャラの4本指も問題視されるようになったため、鉄腕アトムをはじめとする日本のキャラは5本指に変わっていきました。アニメやテレビの技術革新もあって、6本に見えなくなってきたということもあろうかとは思います。

もちろん、これは日本独特の問題でもあるため、アメリカのキャラは今に至るまで4本指のままということですね。


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