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続・セイコーマートのまともな経営。なぜ丸谷社長は他社と異なる社会的経営を進めるのか?

さて、以前にセイコーマートの社長の発信が話題になり、noteでも取り上げたこともありますが、さらに突っ込んだインタビューも掲載されていたので、より掘り下げてみたいと思います。これよんでなぜ丸谷社長はこういう方針を取り、さらに強い発信を続けているのか?がわかりました。

さらに従来型の本部ばかりが儲かるチェーンストアの仕組み解説とその歴史的経緯、そして限界。さらに地元と個人を尊重することで評価されるローカル&パーソナルファーストの台頭について解説したいと思います。

大手コンビニはフランチャイズ店舗が24時間営業する、しないで年末年始も一騒動になる程に揉めていました。さらに既に大量出店のツケで大量閉店の段階に入っています。北海道ではこんな状況に...。

そのような中で、人口減少も進み、経済も停滞気味である北海道を中心に展開し、実は店舗は展開しないものの商品群は首都圏でも展開して道産食品などの販売を伸ばしていたりするセイコーマート。道内では圧倒的な支持を集め、大手が撤退する地域でも加盟店が経営を続けられるようにしてきたことで高い評価をする道外の人々も多い。もちろん大都市部の大手コンビニは個人的にはやはりものすごいと思いますが、それを支える諸条件があります。それが破綻したときに成立しないので撤退、ではない続けられるモデルというものを考えるというのがこれからの日本社会では大切。

そんなセイコーマートの社長がインタビューに答えています。てか、これ読んでてようやく気づいたんですけど、丸谷社長、あのワイン製造を自治体で始めた池田町の丸谷金保町長の長男さんなんですね。となると、なんとなくセイコーマートの今の方針についても色々と理解できるところですね。

いくつか注目すべき点があるのでそのあたりをピックアップします。日本の大手コンビニチェーンのフランチャイズモデルについても元々問題があり、それが今、ようやく露呈したというだけと語っています。

フランチャイズ制度そのものは悪い制度ではありません。でも、日本のコンビニ業界はそれをねじ曲げてしまった。その綻びが出ているように思います。フランチャイズ制の基本理念は本部と加盟店の共存共栄です。そのベースにあるのは富の正当な配分と、加盟店に独立した裁量権を持たせることです。本来のフランチャイズ制度とは本部と加盟店は同心円状の関係なんですね。ところが、従属関係になっているように見える。ロイヤルティーの問題もあるし、加盟店にどれだけの裁量権があるのだろうか。24時間契約であれば営業時間の裁量権はないし、値引き販売を許さないのであれば価格決定権もないことになる。その地域に集中出店するドミナント戦略をやれば、道を隔てて同じチェーンの店が出てくる。加盟店にはテリトリー権もないわけです。

さらに経営モデルとして北海道であることの強みとして独自商品を外販して稼ぐという食品メーカー的な側面についても触れています。うちの近くにあるライフというスーパーでもセイコーマート商品は売ってて、ヨーグルトが結構おいしいのでよく購入しています。PBビジネスをグループの稼ぎにすることで、個別店舗での稼ぎばかりに注目しない多角的な経営を目指しているようです。今の所はこの戦略はうまくいっている感じですね。

グループの豊富牛乳公社で牛乳もつくっていますが、セイコーマートで売っているのは年間1500万本。1900万本は自社チェーン以外の本州に売っています。羽幌町にあるダイマル乳品ではアイスクリームを年間2400万個製造していますが、3分の1は本州向けです。こうした外販にも力を入れているところです。

人手不足については北海道はそういう意味では他地域より先駆けて発生した地域が沢山あるので、先回りで対応していたということも今の時代に対応ができている点とも言えます。採用でもこんな工夫しているのですね。

北海道も人手不足ですが、5年くらい前に採用の仕組みを見直し、応募、採用が2・6倍くらいに増えました。ウェブから申し込んでもらうと、翌日までにコールセンターから電話がいく。そこで、働きたい人と条件のマッチングをするんです。正社員ではなくパートで働きたい人には事情がある。子供の迎えとか、介護とか。土日は働けるけど、平日の火水はダメという人もいる。そうすると、最初に希望してきた店や業務ではなく、近くの別の店、仕事を紹介したりするのです。

そして私達が地域での事業設計をする時にも口酸っぱくいっているように「逆算して採算をあわせる」ということをセイコーマートの社長も以下のように言っています。

逆算するんです、いかに900人の集落で店舗が成り立つかを。物流コスト、人件費、光熱費を落とす。営業時間を13時間にするなどの工夫をして既成概念にとらわれずにランニングコストを下げます。もちろん地域とも相談します。自治体、住民、私たちの3者で話し合うんです。自治体からの助成金で、店の建設コストの一部を負担してもらったり、自治体が所有する土地を安く賃貸してもらい、地代負担を軽減したり。そういう工夫でコストを下げて、900人の集落でもトントンになるようにする。それに、売っているものの半分はPB商品であり大半はグループで作っているものですから、グループ全体で利益が出る。最終的にグループ全体がトントンであれば、地域を応援できるのではないか、いや、そうすべきではないか、と考えています。

そしてお父様のお話にも触れていますね。ただ少しインタビュワーが極端に経済主義的なものに問題提起しているのが、ちょいと違和感ありますが。笑

新自由主義とは違うと思います。ただ、父親は農業地域でいかに農民の幸せを実現するかに尽力した人で、町営でワイン事業を始めたんですね。公共資本で産業基盤をつくり、その富を分配することで地域全体を豊かにしようとした。社会主義というより農本主義ですね。世界を見渡せば、フランスにもそういうところがある。ドイツや北欧も自由主義経済だけど、社会主義のいいところを取り込み、地域全体の豊かさを求めている。こういうのが成熟国ではないですか。そのために大切なのは地域に根ざした企業の持続性です。地域が本当に必要とするものをやり続ける。その中でいかに効率化して、利益を出すか。利益を出せれば持続できる。持続のために補完的な事業も考える。本州での牛乳販売もそのひとつです。こうしたことを愚直にやっているだけです。私は右肩上がりで収益を上げる必要は、もうないのではないかと思います。そりゃ再生産投資をする利益は必要ですよ。店も工場も古くなりますから。しかし必要以上の利益を追求すべきではなく、少しずつ内部留保が充実していけばよい。それがサステナブルな、現代的な経営だと考えています。

このインタビュワーがあまりに偏っているので、セイコーマートの良さがちょっと最後意味不明な方向にいっているのが残念です。笑 拓銀が潰れたのは拡大路線によるものではなく、みんなそんなことはすべてのメガバンクも地銀もやっていたけど、タイミング悪く全体の不良債権処理の前にアウトになって救済されなかったという不幸が大きいと思いますけどね。

さて、池田町のワイン事業については知らない方もいるかと思いますので、以下のレポートでもお読みいただければと思います。

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