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ファンを連れて次のステップに行くってこういうことか?

このCMを見ていると、自分のファンを連れて次のステップに行くっていうのはこういうことかと考えさせられる。

今は尿漏れパッドとして人気のウィスパーという商品。P&Gから発売されている。

ウィスパーは、もともと尿漏れ用品ではなく、生理用品だった。日本では1986年に発売が開始された。アラフィフの私がちょうど初潮を迎えた頃だ。

ウィスパーはつけ心地の良さから、田舎で生活していた私の周りでも話題になった。中学生だった頃、周りの女子が「生理用ナプキンならウィスパーだよね」と話しているのをよく耳にした。

それまでの生理用ナプキンというのは、ゴワゴワモワモワしていて、経血が貯まるとベットリと肌に貼り付いてくるような、そんな気持ち悪さがあった。

しかし、ウィスパーは吸収体の表面をドライメッシュで覆ったことで、経血がナプキンに吸収されても、メッシュの部分がサラサラとしたつけ心地をキープしてくれるのだ。

当時の初潮を迎えていた女子たちや、その上の世代の多くの女性たちにとっては、不快な生理期間を少しでも快適に過ごせるように工夫された、ある意味で革命的な商品だった。

そして、2018年、P&Gから、それまで生理用ナプキンとして人気のはずだったウィスパーが突如として生産終了が発表された。

特に商品として問題があったわけではない。はじめて発売された当初から、生理用品として変わらない人気を誇り続けていたはずだ。

それなのに突如として生産終了が発表されて、その後は在庫限りとなってしまったのだ。

世の中の女性たちからは、嘆きの声が聞こえてきた。私も驚いた。私自身はウィスパー一辺倒というわけではなく、そのときに安く買えるものをお得に選ぶ、という感じだったが、ウィスパーは比較的特売されていることが多く、また機能性も高いので、安いときにはよく買って使っていたからだ。

しかし、その翌年の2019年、P&Gからまた驚きの発表があった。生理用品だったはずのウィスパーを、女性用尿漏れケア用品としてリニューアルして販売を始めるというのだ。

その後は、ウィスパーは尿漏れケア用品として現在も販売されている。

ずっと生理用品として使い続けてきた私としては、尿漏れケア用品としてCMで宣伝されているのに、いまだにかなりの違和感を感じている。

しかし、今まで生理用品として親しんできた女性たちを、閉経後のステップに連れて行く戦略としては、すごい戦略なのかな、という気もする。

ウィスパーが登場したことに感動した一番下の世代は私くらいの年代だろう。つまり現在50歳前後だ。その上の世代は、不快感の強い生理用品を使っていたので、ウィスパーの快適性から一気にウィスパーファンになった人が多いはずだ。

その後の世代は、ウィスパーがあることが当たり前だった。その後は、またウィスパー以外にも生理中の不快感を軽減させる工夫がされた生理用品が次々と登場したので、ウィスパーにそれほど強力な価値観を感じない人が多いだろう。

ウィスパーの登場に大きな価値を見出した世代が閉経を迎える頃になって、その後の年代で必要になる尿漏れケア用品に一気に転換したのだ。それまで、生理用品として使い続けてきたファンたちを、そのまま閉経後も連れていこうということだろう。

ウィスパーをずっと使い続けていた人たちなら、当然、その後もウィスパーを使い続けるに決まっている。また、私のようにライトに選んでいた人も、使ったことがない尿漏れケアのブランドと並んでいたら、使い慣れているウィスパーを選んでしまうだろう。

しかも、生理用品よりも尿漏れケア用品の方が価格が高い。私も義母のために何度も尿漏れパッドを買ったけれども、おそらく使っている吸収体の量が多いためだろう。生理用品と同じくらいの大きさで同じ枚数が入っていても、値段は3倍ほどする。

尿漏れケア用品は、吸収量によって商品が違うので、吸収量が多くなれば多くなるほど値段も当然高くなる。

しかも、生理用品が使われるのは1ヶ月のうちのせいぜい1週間ほどだが、尿漏れケアはいつでも必要だ。単価が高く、使われる機会も多いのなら、そちらのほうが企業としては利益が見込めるだろう。

なんかな、この軽やかに尿漏れを語る女性たちのCMを見ていると、ついついこんなことを考えてしまうのだ。


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