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「みんなに喜ばれるお寺33実践集 これからの寺院コンセプト」を読んでみた。

たまには「読んでみた」を書いてみます。

今回購入したのは、「みんなに喜ばれるお寺33実践集 これからの寺院コンセプト」です。
「未来の住職塾」の塾長である松本紹圭氏と講師の遠藤卓也氏による、寺院運営の実践例を集めたもの。

松本紹圭さんとは、2016年に初めてお会いし、私が住職を務める称名寺にて「未来の住職塾」が開講されました。

それからも私は、松本さんの活躍にさまざまな形で刺激を受け続けているひとりです。

さてこの書は『月刊住職』で松本さんと遠藤さんが連載していたコーナーが、書籍化されたものである。
タイトルの通り、さまざまなお寺の実践例が紹介されています。

こういう書物は、これまでもあることはあった。
その代表は上田紀行氏の「がんばれ仏教」であろう。しかし「がんばれ仏教」の出版は、2004年であり、あれからずいぶんと年月が過ぎている。

時代の変化と共に、明らかに求められることが変わり続けており、そのサイクルは早くなるばかりだ。
だからこそ松本さんのフットワークの軽さは、大いなる武器となり、私たち受け手にとっては大切な栄養となる。

このような実践書の出版は、「がんばれ仏教」から長い年月が過ぎたなか、多くの僧侶に求められていたものではないのだろうか。

また注目すべきは、第3部「みんなに喜ばれるお寺になるために」という遠藤さんの提言と、第4部「これからの寺院コンセプト」という松本さんの提言であろう。

遠藤さんは寺院を取り巻く現状について、詳細な調査をもとに整理をし、そのデータに基づいた「未来」の提言をされています。

それに対して松本さんは、人(僧侶)の力をどのように活かしていくのか、寺院について、その力の源はやはり人であるという視点に立って「未来」をみているように思えます。

少し話が逸れますが、私が住職を務める称名寺の報恩講に、今年は釈徹宗先生をお招きさせていただきました。

控室で釈先生とお話ししているなか、釈先生が学長を務める相愛大学、私が講師を務める同朋大学、それぞれの現状についての話題になりました。

お互いの共通認識は、いまの学生は明らかに宗派という感覚が薄れているというものでした。

それは卒論のテーマにもよく表れていて、「宗派に属する私」ではなく、「仏教に属する私」へと、意識変化が仏教を学ぶ学生のなかに起きているように感じるのです。

そしてそれは若手僧侶の中に、いま顕著に表れてきているのかも知れません。

さらにいえば、松本さんはずっと前から、宗派の枠を超えて、仏教者として寺院の再生に取り組んでいます。

こういう先駆者がいたからこそ、次に活躍する若者たちが描く「未来」の可能性は無限大に広がっていくのだろうなと、改めて感じさせられました。

私が住職を務めるお寺は、名古屋駅から徒歩2分の場所にあり、リニア名古屋駅がお寺の目前に建設されるため、再開発の波の真っ只中にあります。
そして都市部のお寺には、都市部のお寺としての悩みがあるのです。

しかし根底に流れる「お寺の悩み」は、山間部でも都市部でも、おそらく共通したものがあると感じます。
現れ方が、環境によって異なるだけなのでしょう。

その根底に流れる「お寺の悩み」とは、「お寺とはなにか、僧侶とはなにかがそもそも分からない」ということでありましょう。

これについては松本さんも触れているところで、そこを自分の中でハッキリさせておかないと、何をやっても軸が定まらないものになってしまうリスクがつきまとうことになるのかもしれません。

お寺となにか、僧侶とはなにか。
松本さんは、この答えを探して、明日もきっと旅に出るのだろう。

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