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バトンをつなぐ循環医療

どんな症状の時も、病院に行く度に大抵の場合は行われることがある。

検温する、聴診する、喉を診る。

医療の基本にあるシンプルな「検査」が町のクリニックから大学病院まで、全国、そして世界の診察室で行われている。診察室だけではない。施設や企業への訪問医療、在宅医療、定期検診、さらには山岳医療から災害救助まで、あらゆる医療の現場で行われている。

もし、絶えず世界中で繰り返される「喉を診る」経験を集めることができたならー。

各地の「喉を診る」医師たちと「喉を診られる」人たちから集まる集合的な体験と現象は、医療のあり方そのものを変えるだろう。

そこにフォーカスを当ててこられたのが、医師の沖山翔さんだ。

沖山翔|Sho Okiyama
医師。アイリス株式会社代表取締役社長。
2010年東京大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター(救命救急)での勤務を経て、ドクターヘリ添乗医、災害派遣医療チームDMAT隊員として救急医療に従事。2015年 医療ベンチャー株式会社メドレー、執行役員として勤務。 2017年 アイリス株式会社 創業、代表取締役。国立研究開発法人 産業技術総合研究所AI技術コンソーシアム委員・医用画像ワーキンググループ発起人、救急科専門医。
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引用元:アイリス株式会社HPより

https://aillis.jp/

「みんなで共創できる開かれた医療を創る」をミッションに、株式会社アイリスを立ち上げ、自他の枠を超えて「循環する社会」の創生に取り組んでいる。

沖山さんはこれまで、救命救急医や離島医としての経験を重ね、多様な環境下にある暮らしのそばで数々の現場に立ち会ってきた。どれだけ繰り返すシンプルな検査であっても、二つとして同じことはない。個別具体的に異なる個々の現象や体験を重ねるうちに、情報は蓄積し、知恵は深まり、技は培われていく。そうした日々の診察にこそ、価値がある。

各地の医療現場で為される医療の基本を、個人に留めず共有できたらどうだろう。集まる点を、俯瞰して浮かび上がる集合的現象のようすから、それにまつわる環境要素や文脈もまた、集合的にみえるだろう。個々に異なる事象のうえに "そのようにある" 縁のようすがみえてくる。その時、私たちの捉える「病」の概念そのものが変わる、かもしれない。

経験を集めるためには、まずは「適切に採取できる手立て」が必要になる。誰もが適切に喉の画像を撮影できる土壌をつくるため、アイリス株式会社は、喉を診るハードウェア(検査機器)の開発から製造、販売を手掛けてきた。

▼ アイリス株式会社


今、自分が不調で病院に駆け込んだ時に受けられる医療のすべては、過去の患者さんや医師たちの経験と、それに基づく知見と技術に基づいている。従来の医療は、主には大学病院における診療データや製薬会社が実施する治験結果を参照しながら今日まで発展してきたという。その貢献ははかり知れないが、この世の多くは、暮らしの延長にある領域が占めている。AIの精度を高めるためには、より日常に近い体験の中にある、目立たずもリアルな無数の現象こそが価値をもつ。

どんな小さな診察も、それは最先端の一つであって、そこに生まれる医療体験が、世界の誰か、未来の誰かの役に立っていく。

  • 沖山さん:
    「医療って、先生が作って患者さんに渡すものじゃないと思うんですね。患者さん自身が診療を受けることで、(中略)その方が未来の患者さんを救ってるんですよね。そうやって医療は発展してきました。これがAIの文脈にのれば、患者さんが増えることは、データがより集まることに等しく、それは、未来の医療の精度が上がり、医療そのものが豊かになること。巡り巡って、患者さんがその恩恵を受けられるサイクルです。僕らはこの "医療が共創されている状態" を「開かれた医療」と呼んでいます。

    私の診療データが、未来の医療を少しずつ良くしているーーそんな実感をみんなが得られたら。

    循環してるんだ、自分は誰かの役に立っている、誰かを助けてるんだっていう感覚を、全地球人が感じられるような社会にすることも、アイリスの大事な役割です。その先ではもう、病気とか健康とか、あんまり関係ないんですよね。

    ピラミッドの最高峰を高くするというより、ピラミッドのベースを底上げする技術の価値をみています。それくらい日々の生活の延長線上にある医療を豊かにしていきたいー」

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このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじ…

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