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ホテル療養日誌(1)


東京のお寺に出張滞在中、発熱。もしやこれはと思い、近くのクリニックで新型コロナウィルスのPCR検査を受けたところ、結果は陽性。さて、どうするか。

その時点では、お寺の境内にある独立棟の個室に滞在していた。隔離という点では、そこに籠り続けても良かったのだけど、出張先で一週間も隔離を保ちながら食事をやりくりするのが大変そうなこと、自主療養より健康管理のケアやサポート体制が整っていそうなことから、東京都福祉保健局が提供しているホテル療養を選択した。

ちょうど今、入所から丸2日が経過したところ。だいぶ勝手がわかったので、ホテル療養の様子をレポートします。あくまでも2022年2月時点の、一僧侶の主観的体験の記録として、お読みください。

なお、この記事では自分の感じたことや考えたこと、行動したことをそのまま書いているが、過酷な状況の中でリスクを背負ってコロナ対応に当たっている、医療従事者の方々や、施設運営者の方々には感謝しかなく、この記事にはそうした方々を非難する意図は全くないことは、念のため断っておきたい。


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発熱後、お寺の人に教えてもらったクリニックで予約をとって、PCR検査を受けに行き、翌日の結果を待つ。メールで送られてきた結果は、やっぱり陽性。結果待ちの間にいろいろ調べている中で、東京都が提供する「ホテル療養」という選択肢があるということを知り、専用の電話窓口に連絡。住民票が東京都でなくても入所はできるようで、早速手続きを進めてもらう。「審査の結果、許可が降りたら、入所先を案内するお電話が行きますので、お待ちください。いずれにせよ入所は明日以降になります」とのことで、電話を待つ。夜になっても電話が来ないので、落ちたかなと思っていたら、夜の9時頃に「ホテルが決まりました。明日、専用車で迎えが行くので、準備してお待ちください」との連絡あり。

もともと長期滞在を予定していたわけではないので、急な入所にあたり、色々と足りないものも多い。今現在のルールでは、発症から10日間は隔離が必要ということになるそうなので、ホテル入所時点から最低でも一週間くらいは滞在することになる。お寺の住職と内線やLINEで相談しつつ、スーツケースなども含め、荷物をなんとか調達。「ホテル療養 持ち物」で検索をすると、経験者の人たちが体験談を交えながら、ホテルに持ち込んだ方が良いものリストを作ってくれているので、参考にしてほしい。

ちなみに今回、自分の症状は、軽症だ。38度くらいの発熱と、多少の倦怠感や関節痛があるくらいで、起きていられないようなしんどさではない。ワクチンの接種を2度済ませていたことが効いているのかいないのかもわからない。比べるなら、かつてインフルエンザにかかった時の方が、よっぽど辛かった。なので、滞在中は体調面よりも、閉鎖空間での隔離生活をいかにして乗り切るかの方が、心配なくらい。良い機会だと思い、スーツケースには、積読になっていた本を詰め込んだ。

お迎え当日。送迎車は、大手タクシー会社がコロナ感染者搬送用にカスタムした車だった。運転手さんの携帯から「着きました」の電話を受けて、スーツケースを持って乗り込む。当然ながら、運転手さんと感染者の間は完全に遮断され、さらに専用の送風機が付いて運転者側に空気が流れない仕組みになっている。その分、運転手さんは防護服などではなく、いつもの制服にマスクで涼やかに運転する。「途中、もう一人、乗られます」ということで、少し遠回りして、もう一人の感染者をピックアップ。感染者同士は同じ空間を共にしているわけだが、PCR検査は偽陽性のことだってあるし、軽く目線を向けるくらいで、静かに黙って座る。

入所先は湾岸エリアのホテルだ。もちろん、こちらから指定することはできない。タクシーの乗車時間は30〜40分ほど。到着は、裏口ではなく、メインエントランス。大きくて立派なホテルだ。ホテル丸ごと、療養所になっているようだ。促されるまま、受付で書類とカードキーの受け取り済ませ、指示に従って、血圧を測り、そのまま部屋へ。その間、受付では窓越しに案内を受けるが、それ以外は一切、人と接する場面はない。

一度部屋に入ると、そこからは、ひたすら部屋に篭る日々の始まりだ。


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