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世界がそのまま“お寺“になる日が来る

NYC在住の日本人僧侶、中垣顕実さんと近況交換をしました。NYCといえば超高層ビルが立ち並ぶマンハッタンが有名ですが、中垣さんはクイーンズという郊外のエリアの中でもさらに奥の方に住んでいるので、NYCとはいえ比較的のんびりとした環境です。「ひたすら家に居るので、周囲の状況もよくわからない。NYCのコロナに関するニュース情報としては、日本から知れることと、そう違いはないですよ」と言いますが、ロックダウンすると皆が完全に引きこもるので、「その土地でみんなが共有している空気感」のようなものが失われるのかもしれないと思いました。情報源はインターネットやテレビのみに頼る状態になるので、情報操作に対して今よりも無防備になりやすくなるかもしれません。

街がロックダウンしてしばらく経ち、NYC市民にはかなり大きなストレスが溜まってきているようです。公共交通機関を含めた都市機能も低下しており、治安の悪化も聞かれるとのこと。物流の遅延によってスーパーマーケットでの物資も手に入りにくくなってきていて、今直ちに食料が尽きるような心配はないけれど、いつも買っているお米が買えなくなるなど、欲しいものは手に入りにくくなっているそうです。また、アメリカ社会の「何か事件があると、何かの人種のせいにしがちな性質」によって、今回のウィルス発祥の東アジア人への差別も散見され、社会の分断がこれから広がっていきそうです。

ところで、NYCのビジネスといえば、エンタメ・イベント業界も大きいですが、ロックダウンによって大打撃を受けているとのこと。そして、同じように、昨今はメガチャーチなどイベント業化を推進してきた宗教界も、お手上げ状態だそうです。「どの宗教であれ、日曜日に施設に人が集まらなければ、お金が入ってこない。結婚式とか、お葬式とかも、すべてイベント。寄付を集めようにも、みんながこんなに大変な時に、宗教が市民からお金をとるの?という話になるから、それもできない」ということで、イベント業化した宗教は出口を見いだせていません。

中垣さんは「アメリカの宗教者は、とにかくよく動く、というのが特徴。どんどん動いて、ネットワークを広げていく。でも今、それが裏目に出ている。動いてなんぼの宗教者が動けなくなると、どうしようもない。その点、日本のお坊さんって、お寺でじっと座っている感じがあるでしょう。あれは案外、こういう時にはいいのかもしれないですね」と言っていました。日本のお寺がいいのかどうかはわかりませんが、アメリカの宗教者がコロナによって根本的に行動変容を迫られていることは、よくわかります。

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