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【経験のリレー】 誰もやったことがない引き継ぎ方法


私は仕事をやめた。


新卒で入社した大きな組織を辞めるにあたり、
引き継ぎとはなにかを考えた。

引き継ぎする側もされる側も
不幸になった経験はないだろうか。

これまでの引き継ぎのあり方を変えて
誰もやったことがない引き継ぎを考えることにした。


かんたんに私の会社員としてのプロフィールを話すと….
戦略、企画、マーケティングと深く関わりUX視点で課題やチャンスの可視化、そしてコンセプト設計やそれを実現する方法をつくる「UX Planner」であった。




引き継ぎとは何か?


一般的に現状の業務引き継ぎは、主にドキュメントの作成や形式化、そしてそれらをMTGでハンズオンすることによって行われている。

特にオペレーショナルな業務内容であれば、これで充分だが、知識労働やプランニング、UXデザインといった分野では、新たに引き継ぐ人が実際に自己の能力として身につけるためには、

知識の獲得から実践、フィードバック、経験化といったステップが必要だ。

そして一般的な引き継ぎはそのうちの一部しかカバーされていない。


本来的には引き継ぎとは、一言で表現すると、
「経験のリレー」であるべきだ。

知識はもちろんのこと、経験、感情、思考のプロセスなど、
前任者が培った価値を、できるだけ次の人へとしっかりと繋げること。

そして、そのプロセスは自分から自分へと時間を越えて続けられる、
自己進化の一部だ。。

自己進化の一部と謳っているのは、ただ他人へ情報を渡す行為ではなく、その過程で自分自身の理解を深め、知識と経験を整理する大切なプロセスだからだ。



引き継ぎの問題点や構造的な課題


このようなタイプの業務は一般的にはある程度属人化は避けられないと言われてきた。

いざ後輩や周りのメンバーに引き継ぎをするとなると、
本来は数ヶ月かけて同じ案件に二人三脚で入いりたいくらいだ。

ただ、時間的な制約や組織として引き継ぎを受けるメンバーにも他の業務があるわけでそうはいかない。

現状の引き継ぎ方法では、以下のような問題点や構造的な課題が浮き彫りになる。

  • 静的な情報の伝達
    知識を獲得するのは重要だが、それだけでは不十分。ドキュメントから学ぶことは有用だが、情報は静的で、実践の場で生じる動的な問題に対応するのは難しい。

  • 実践、フィードバック、経験化の欠如
    知識の獲得から実践、フィードバック、経験化というプロセスが抜けている。これは、特に人が退職する時に顕著だ。経験を積み重ねることでしか得られない洞察が失われる可能性がある。

  • 質問とフィードバックの制限
    ドキュメントから知識を学ぶ場合、わからないことがあってもすぐに質問できる人がいない場合がある。また、フィードバックサイクルが遅れることで、学習プロセスが遅くなる可能性がある。

  • 個々のケースへの適応性の欠如
    既存の方法では、特定のタスクやプロジェクトに必要な具体的な知識や経験を引き継ぐのが難しい。その結果、新しい人が個々のケースに対応するための適応力が低下する可能性がある。


新しい引き継ぎのあり方


これらの問題や構造的な課題を
私に残された少ない時間で解決できるのか考えた。

答えは


プロンプトだ


もう、この言葉に飽き飽きしている人が多いかもしれない。

私の中でのプロンプトを作る営みとは、

「世界やモノの捉え方を構造化」



することだ。

プロンプトを作る営み


世界のモノの捉え方を構造化するとは、知識だけではなく、経験、思考のプロセスを言語化し、要素を分解し要素間の相互作用を捉えることにあたる。

以前Schooさんで講師を努めたときの内容を解説した記事も参考になるかもしれない。
「ひらいて、とじる」も一つのモノの捉え方・見かたである


もちろん組織の仕組みで解決できることもあるが、
今回はいち個人として何ができるかにフォーカスする。

さて新しい引き継ぎ方法は、プロンプトを作り、AIとりわけ大規模言語モデルを活用して、上記の問題を解決する。具体的には以下のような特性を持つ。

  • 動的・対話型情報伝達
    ユーザーの質問に即座に応え、必要な情報を提供する。これにより、知識の獲得がより効率的になり、リアルタイムでの対話が可能になる。

  • 実践、フィードバック、経験化のサポート
    具体的なタスクのアクションをサポートし、フィードバックを提供する。これにより、ユーザーは安全な環境で実践し、反省し、経験を積むことが可能になる。

  • いつでもどこでも可能なフィードバック
    24時間365日、ユーザーが学習を続けるのを助ける。これにより、フィードバックが即時に得られ、学習プロセスが加速する。

  • 柔軟で個別化された経験の蓄積
    個々のユーザーのニーズ・レベルに応じて情報を提供することが可能で、ユーザーの経験や状況に合わせてアドバイスを行うことができる。


冒頭で「経験のリレー」を自己進化の一部と位置づけたように、ただ他人へ情報を渡す行為ではなく、その過程で自分自身の理解を深め、知識と経験を整理する行為だ。

AIとの対話は他人の時間を奪わずに、
自己進化ができる最高の手段だ。



ケーススタディー

はじめに、コンフィデンシャル情報に絶対にぜっーたいに触れない範囲の紹介になるので、かなり一般的なフレームワークのプロンプト紹介になってしまうことをお許しいただきたい。

お見せできない内容は…新しいフレームワークを開発、また今までブラックボックスになっていたプロセスをプロンプト化して明確している。


ここで紹介するのは、私が普段プランニングするときに頭の中で描いている価値ピラミッドだ。価値ピラミッドとはユーザーエクスペリエンス(UX)の価値を階層化して表現するフレームワークである。

各レベルの価値を定義し、それぞれがターゲットユーザーにどのように影響を与えるか考え要件に落とし込むことや、プロダクトの提供価値を評価するに役立つ。

可視化:


どんなときに使うのか:

どんなときに使うのか

ドキュメンテーション兼プロンプト


考えている企画に適応するだけではなく、競合他社サービスの分析にも使える。(価値レイヤーで競合や参考となるサービスを探すことができるのが強みだ。)
AI強みである超高速フィードバックが返ってくる。


質問:
意味がわからなくても対話でインタラクティブに疑問は解決
また個々の案件に合わせて対話を通じてプロンプトをカスタマイズできる



会社の固有値もプロンプトで引き継げるのか


「会社だとどうしてもコンフィデンシャル情報があり、ChatGPTに入力できないから使えないという話」をよく聞く

つまり引き継ぎにはプロンプトは使えないと

答えは

Yes But No

である

No:超具体的なコンテキストを含む場合は確かに難しい
Yes:その会社一見その会社固有の知見であっても、ある一定の抽象度をもった情報であれば問題ない

これだけで記事が数本かけてしまうので今回は割愛するが
端的な理由は以下だ。


あらゆる概念は既存の概念の合成やそれらの重み付け、
相互作用によって作り出すことができるからだ。


合成ベクトルといってピンと来る方もいるだろうし、
ジェネリック薬品といってピンと来る方もいるかもしれない。

私が書き残したプロンプトの中には会社のあらゆる施策のトライアンドエラーで培われたことを構造化していれたり、部署どくどくの考え方にチューニングしているものも当然ある。




まとめ

引き継ぎとは、「経験のリレー」である。
新しい引き継ぎのあり方では以下の”シフト”を起こすことができる

  • 静的な情報伝達 → 動的・対話型情報伝達

  • 実践支援の不足 → AIによる具体的なアクション提供

  • 質問とフィードバックの制限 → いつでもどこでも可能なフィードバック

  • 個々のケースへの適応性の欠如 → 柔軟で個別化された経験の蓄積





おわりに


私が最終出社を迎えた段階ではAIを周りで活用している人は少なかった。
つまり、私のプロンプトはまだ知識獲得のドキュメンテーションにすぎないのだ。

活用の推進までやりきることができなかったのは心残りではあるものの、今あのプロンプトたちが動いていたら嬉しい。


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さて、私は次の仕事を探さねば…笑

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