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「生成AIを本格体験!子供向けのワークショップ」をやって心から良かったと思えた話

はじめに

山梨県富士吉田市で開催された施設のオープン記念イベントにゲストとしてお誘いいただいた。そこで、子どもたちが生成AIを使い、彼らの創造力を後押しして作品をつくり、AIを身近に感じてもらうワークショップ企画を提案した。


企業や社会人向けの生成AI講座は沢山あるが、子供向けの講座もワークショップはみかけない。特に地方ではなおさらだ。デジタル・ディバイドならぬ、AIディバイドを起こしてはいけない。

そこで、この機会に子供たちにもAIに触れ本格的に活用する経験を用意できないかと思った。

※掲載許可をいただいた写真を利用しています。



どんなワークショップか

参加者が山梨県富士吉田市のお気に入りの風景や場所の10年後をお絵かきして、その絵とチャットAIとの対話を通じて画像生成AIで作品を生み出す。


まとめ

  • 子供たちは素直で飲み込みが早すぎた。すぐに生成AIと友達になれた

  • 想像力をフル活用し、大人が囚われている枠から抜け出す試行錯誤を楽しむ

  • 年齢のばらつきがあれば有るほど設計が難しいワークショップだが、AIがファシリテーションを手助けしてくれた

  • AI活用を声高に叫ぶ人ほど、ぜひ子供たちのAIとの交流をこれからも積極的に応援や支援できたら良い世の中になるかも



今回は

第1部:当日のワークショップの流れや様子
第2部:ワークショップデザイン・準備

の2部の構成でお届けする。

ちなみに子供向けの設計だがテーマやファシリテーション方法を微調整するだけで、普通に企業の生成AI研修に使える代物である。



その前に、私だけではなく今回はチームでこの企画に臨んだので
私含めメンバーを紹介!

しょーてぃー(私):ワークショップの企画、設計、実施。当日のメイン進行。プロンプト設計・作成や参加者の作品を1枚絵にするなど。(一応、ワークショップデザインの経験・知見は多い。)

西見さん:本施設の運営者と仲がよく、今回私をゲストとして誘ってくれた。当日の生成AIツールセットアップを事細かに行ってくださった。

フミヤさん:どこよりもフラットなAIコミュニティ「AIAD」で仲良くしていただいている。ChatbotUIに仕込むSystem Promptの一部作成や、学生たちの作品をGEN2を用いて動画化してくれた。


第1部:当日のワークショップの流れや様子

ワークショップの流れや様子を抜粋してお伝えする。
まずはアイスブレイク兼みんなが「AI」に抱く印象を聞いた。

すると、子どもたちからは

難しそう..

怖いイメージがある

さらに、生成AIを触ったことがある子は1−2名というところだ。
みんなの顔も緊張しており、反応が薄い…(最初はこんなもんだ)

ただ、お互い自己紹介をしあい、今の気持ちをシェアしあったときにある小学生が

胸がなんだか分からないけどドキドキしているっ

と言っていた。いいドキドキか、わるいドキドキか本人もわからないと!


さぁ、本題にうつる。
私が設定したワークショップのゴールはシンプルだ。

  • 生成AIって面白い!

  • 何かまた作ってみたい

  • 今や未来にちょっと
ワクワクしたかも!


10年後を描く
10年後を描きたい富士吉田市の中の好きな景色や風景を考え、ペンでお絵かき

画像を創造する
自分が書いた画像をPCに取り込み、ChatGTPとSDXLで画像生成して発表

作品にする
私たちがみんなの画像を1つの作品にしたり、動画として命を吹き込む


ワークショップのプロセス

景色を選ぶ

富士吉田市の好きな場所や思い入れのある場所を選んで、チームで共有する

10年後を描く

紙に簡単にその10年後の景色を描いてみる。下手でもいい!

画像を創造する

描いた絵や言葉をから生成AIをつかって画像を生み出す

今回つかった生成AIツールは以下2つ
ChatbotUI

DreamStudio( model SDXL 1.0最新!)


1.自分が描いた内容をチャットで伝える
作成したシステムプロンプトによって、描きたい画像の深掘りや画像用プロンプト生成を自動でインタラクティブに行ってくれる設計

2.画像生成する
PCに取り込んだ絵をDreamStudioにアップロードして、「Prompt」にチャットボットからもらった英語のプロンプトを貼り付けて生成ボタンをおすだけ

最初はみんなそれぞれ自分が書いた作品を忠実に再現しようとしていたが、後半チャットと対話しながら作品に新しいオブジェクトを付け足したり、すきな画風に変えるなど創造性が爆発していた。

みんな100枚近く作成しているので、お気に入りを1枚選んでもらう。

発表する

この10年後にどんな想いをこめたのかつくった画像を写しながら発表してもらった。


額縁に入れてあげる

額縁に入れてあげるというのは作品らしく仕立てるということだ。
これはみんなの作品へのリスペクトであり、想い出にしてもらうためだ。本当に額縁にいれろということではない。

施設の運営の人のはからいで写真用紙に、
参加者それぞれの作品をプリントしてお渡しした。

生成AIの力や驚きを伝えるべく、
休憩時間にサガワさんにGEN2で静止画→動画にしていただいた。


そして私も参加者のみんなと、そしてAIと共創したかった。
なので、休憩時間にみんなの画像を合わせて1枚の作品にした。

DALL-Eでout-painting

それぞれが違う想いを持っていても一つの作品になること、そんな共創の楽しさや枠を超えたクリエティブを感じてもらえたら嬉しいと思っていた。




第2部:ワークショップデザイン・準備


今回の依頼は施設のオープニングイベントであり、私は以下の状況を整理して、最終的にワークショップのコンセプトや参加者のゴールを設定した。

要求定義



また、一般的なワークショップと比較したときにAIを使っているからこその課題や、AIを活用できるからこそ乗り越えられたことがあった。

  1. 幅広い年齢層が楽しめる設計

  2. 安全性と安心性の確保

  3. 創造性の引き出し

  4. アウトプットの精度の担保


幅広い年齢層が楽しめる設計

  • 背景:参加者の年齢層が小学生から大学生と幅広いなかで、参加者全員が楽しめる設計が必要だった。

  • 解決策:参加者全員が一律に楽しめる絵をかくアクティビティを組み入れた。またChatbotが参加者のレベルに合わせて寄り添いサポートすることで参加者間の能力やスキルのギャップを埋めた。

最初に自己紹介をしてもらうことで、Chatbotがその対象年齢に合わせて振る舞うようにしている。

これまで一般的なワークショップで小学生から大学生を一律に扱うのはかなりの難易度であるが、AIが私のかわりにファシリテーションしていくれる部分が大きく、結果として参加者のパートナーとなった。


安全性と安心性の確保

  • 背景:市のイベントでありモデルが法的にできる限りクリーンであること。また、未成年の参加者がいるため、生成される画像に良俗に反するような内容が入らないようにしなければならない。

  • 解決策:
    -Stability.AIのDreamStudioの商用利用可能なSDXL1.0モデルを選択。
    -システムプロンプトでの良俗に反するワードや概念の排除、DreamStudioのデフォルののnsfwフィルターで2段階の検閲。

  1. 創造性の引き出し

    • 背景:子供たちの創造性や、やる気を引き出す問いかけやテーマ設定が必要だった。

    • 解決策:
      -テーマは自分の身近な場所や想い出がある風景という自分ごと化してあげる。
      -問いかけは様々な切り口でファシリテーションを行った。(★これがめっちゃ大切)


例えば、「10年後の自然環境がどう変わっていると想像する?その変化によって何か新しい活動が生まれると思う?」、「未来の富士吉田市で使える交通手段はどんなものがあると思う?新しい交通手段があれば、それを使ってみたい?」、「もし君が魔法使いだったら、富士吉田市の未来に魔法をかけるとしたら、何を変えたい?その魔法の効果を詳しく教えてください。」など。

   -Chatbotの性格とファシリテーション能力
課題を解決して目的達成を手助ける柔軟性が高いシステムプロンプトを作成した。性格もとてもフレンドリーで、参加者の意見を肯定し、どんどん意見を引き出してくれるような設計である。

システムプロンプト長い…

アウトプットの精度の担保

  • 背景:参加者からの指示を柔軟に高品質で反映する必要があった。子供だって素敵な作品づくりができることを証明したかった

  • 解決策:ChatbotUIのAPIはGPT-4を使い、画像生成のモデルはStability.AIの最新版のSDXL1.0を使うことにより、参加者からの指示を柔軟に高品質で反映することができた。


その他

もちろんこれ以外にも当日の詳細タイムラインや各メンバーの動き、そしてワークショップの各プロセスの内容詳細なども同時に作っている。

費用感
今回のAIツールの利用料は、当日利用に限らず事前準備で利用した分も含めて2万円はいかない程度。

DreamStudioの課金が最低10ドルであったことがネックではあった。
今後はモデルをDLしてより格安で実施できるようにできそうだ。



参加者からのご意見

一部抜粋

参加者

(とても満足だった理由は)初めて画像制作をして、想像以上に自分の思い描いたものを作ってくれたこと

AIは最初怖いと思っていたし、PCも苦手意識があったけど、楽しくて身近に感じた



観覧された保護者、市、メディアの方

(みんなの作品を1枚にした)作品見させて頂きました! 見ると昨日のワクワクが蘇り、 また娘とAIに触りたいなーと思いました! またこのような催し物がありましたら、 参加させて頂けたら幸いです。 昨日は貴重な体験を、 そしてみんなの作品を一つにして送って下さり、 ありがとうございました

参加者の皆さんがAIをワクワク楽しんでいたこと
年代関係なく自由に表現して楽しんでいる姿にワクワクしました!

わぁぁーーーん 泣きそう
とても素敵なフィードバックが多く、
胸を打たれたのでした。


しかも……

当日の様子を観覧に来てくださったイラストレターの方が漫画風イベントレポートを書いてくれました(嬉しい)!

フルバージョンは以下のnoteをご覧ください!

イラストレーター もえさん:https://twitter.com/moe_htk



おわりに

このイベントを通じて、子供たちの無限の可能性に触れることができました。彼らはスマホネイティブというより、AIネイティブの世代になるかもしれない。そんな彼らに対して、我々大人ができることは何だろうか。帰りの電車の中で、考えをめぐらせていた。

そして、そのときふと思い出したのは、富士吉田市にある明見湖公園のことだ。人と自然と湖が織りなす身近な自然とのふれあいを創出している。

あー。子供たちが自由に想像力を働かせ、創造性を発揮できる場、彼らのこだわりが形になる機会...  AIネイティブの彼らの未来の可能性をさらに引き出すスタンスがまずは大切そうだ。

つまり、我々大人ができること、それは彼らの可能性を信じ、支え、そして引き出すことだと。

ただ、とても冷静なことを言うと、大人に生成AI”講座”をするのと子供に”ワークショップ”をするのだと、後者が圧倒的に考慮事項が多く設計難易度が高い。

だが、今回のワークショップ設計もChatGPTと行っているため、少し手を加えれば再現性高い状態で一定形式化できそうだ。

ワークショップを終えた彼らの笑顔のおかげで、今週は乗り切れる気がする。


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ワークショップをぜひやって欲しいなどのご要望は
Twitter DMにご連絡を〜

https://twitter.com/shoty_k2


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