見出し画像

初めてのビスポーク(bespoke)体験でプロセスエコノミーを実感した話

先週大阪のストラスブルゴというアパレルショップに行き、国内最高峰ともいわれる五十嵐トラウザーズさんでパンツのビスポークをしてきた話です。

2ヶ月前、ストラスブルゴでこんなイベントをやっていました。

スクリーンショット 2021-09-28 12.43.36

以前からこの五十嵐トラウザーズさんは知っていたのですが、なにせ高いですし、そもそも山梨の会社でショップも東京にあるのですからなかなかオーダーできないなあと思っていました。

ただ、定期的に大阪でもイベントをやっているようなのでメールで問い合わせをしてみると、近く大阪でもオーダーイベントがあるよ、とのこと。
イベント情報が解禁されたのち、即予約し行ってきたわけです。それが約2ヶ月前の出来事でした。

五十嵐トラウザーズ

確かに仕立ての良いスーツは欲しいしビスポークも体験してみたい。でもスーツ着る機会少ないし・・・それなら休みの日も履ける最高のパンツが欲しいなあ〜と思っていたところで見つけたのが五十嵐トラウザーズさんです。
今回僕がビスポークを依頼した五十嵐トラウザーズさんは、日本では希少なパンツ専業のテーラーで、国内のみならず世界的にも高い評価を得ているパンタロナイオ(イタリア語でパンツの仕立て職人のこと)なんです。
そんな五十嵐トラウザーズの創業者、五十嵐徹さんに今回はビスポークの担当をしていただくことができました。

初めてのビスポーク

通常よく耳にする「オーダー」って言うのは、正確には「パターンオーダー」と呼ばれ、採寸して近いサイズのものを試着し、サイズを調整、既存の型紙を微調整することで作ります。
一方の「ビスポーク」は、採寸し、型紙を作るところから始まります。型紙をおこし、生地を裁断、縫製をした仮完成品を試着し、それをさらに微調整して作っていきます。期間にして約4ヶ月!(ひえ〜待てない)ちなみにビスポークって言うとスーツのイメージがありますが、スーツのビスポークって30万円とか当たり前にあってドン引きレベル。

ビスポーク(bespoke)という言葉は英語の“be-spoken”に由来し、「話し合う」という意味がある。顧客と担当する職人との話し合いから作られることから、この言葉が完全注文の紳士服や靴に使われるようになったとされているのだ。
引用:ビスポーク、パターンオーダー、既製服の違いとは?

つまり、服好きによる服好きのための究極の服だと僕は考えています。

初対面〜採寸

「五十嵐さんってどんな人だろう」と思いながら色んなところで写真なんかをみているととても穏和そうな人。知りうる情報だけをもってお店へ。
初めてのビスポーク、採寸はパンイチ?なんか履くものあるの?と、何を着ていけばいいのかわからなくなった結果、短パンで行くことに。

初対面。思っていた以上に明るくて優しい雰囲気の人。
「人の体にたくさん触れる仕事だし、人柄は大事だよな〜」と思っていた僕も、「この人なら安心して身を任せられる」という感覚を感じさせてくれました。

採寸は想像以上に早く、驚いていると、「仮縫いが本番ですから」とのこと。
そう、仮縫こそビスポークの真骨頂!(と僕は思う)
僕の体のパターンに合わせたパンツを履き、さらにボディラインを見ながら調整してもらえるなんて最高!って感じに思っていました。
そう、その仮縫いのとてつもない感動をこの時はまだ知らないのです。

30分ほどの予約時間でしたが、そのほとんどをただただおしゃべりして過ごし、「あ、これが“be-spoken”だな」って感じでした。
ちなみに五十嵐さんもT.mbhの愛用者で、僕もコインケースと財布を愛用しているのでその話で盛り上がりました。

仮縫い

そしていよいよ先週土曜日に行ってきました。仮縫いです。

履いた瞬間

「おお〜〜〜〜〜^^」と満面の笑みが溢れる履き心地。
これで「仮縫い」なんて信じられない!ってレベルでした。

画像2

ここからさらに微調整(上の写真はその微調整をしています)を加えることで究極のパンツが完成するわけです。

つまんでピン留めしながらどんどん体に合わさっていく感じなんですが、一通りおわって動き出すと

「うわああああああ〜〜〜〜〜〜〜^^」

って感じの履き心地。これはもうnoteに記事書きたいって思うレベルでした。

ちなみに記事はカバートクロスと呼ばれるめちゃくちゃタフなウールでオーダーしました。これもかなり調べた結果のセレクトで、ずっと前からこれにすると決めていました。かなり仕立て映えする生地で、目付440gmsという厚手と張りのおかげで落ち感が綺麗で、程よい光沢感があるからとても上品に見えるんです。

Covert(カバート)とは隠れ場所と言う言葉。このカバートクロスは昔、キツネ狩り用のハンティングジャケットに使われたと言われます。狩りをするのに獲物から身を隠す、さらに茂みに耐えうる強度が必要だった事から、縦糸に濃淡2色の双撚梳毛糸、横糸には濃色の単糸紡毛糸を用いて織られ、厚みと張りのある布生地になったのです。
引用:Covert cloth の魅力を語り尽くす。

仮縫い時点でとてつもないオーラを放っていたパンツですが、あと2ヶ月後の11月末ごろに出来上がるそうなので、うきうきワクワクしているところです。

究極のプロセスエコノミー

これ体験して思ったんですが、ビスポークって究極のプロセスエコノミーなんじゃないかと思います。
正しくは「ビスポークが」というよりも、プロセスエコノミーの究極がビスポークにあるのではないかと思います。
プロセスに価値を感じてもらう場合、基本的に見てる側の人間は傍観者になっているわけで、その人たちに「参加者感」を感じてもらうことが重要だと考えます。結局その設計がうまくないと価値を感じてもらいにくい。だからそこに苦労するのがプロセスエコノミーの難しいところってイメージです。

一番うまくやったイメージがあるのはアイドルグループNiziUを生み出したNizi Projectではないでしょうか?
そういうの一切興味ないはずの妻でさえ「〇〇ちゃんは頑張ってる」と応援していました。
頑張ってる姿を見せて、オーディションを開催して、応援してもらう。応援しちゃったらもう傍観者じゃなくて参加者です。少年野球を応援に来ている母親です。

今定義されるプロセスエコノミーの多くは、Nizi Projectはじめ、
プロセスに価値を感じてもらうこと、いわば「共感」ですが、
ビスポーク型はプロセスそのものに価値をもたせることができます。

時代が進んでどんどん便利に、シンプルに物事が完結する時代だからこそ、「あなたのためだけのひと手間」がめっちゃ良いかもしれません。
思いつきですが、例えば美容室でも「4ヶ月で完成するビスポークヘア」とか謳って、初回2万円を払ってもらい、その後の来店日をこちらから指定し、4ヶ月後に理想の髪型を手に入れてもらうとか。
見向きもしてなかったプロセス、当たり前に存在するプロセスを、目的のための価値あるプロセスとして見直してみても良いのかなと思いました。

「大切なものは、ほしいものより先に来た」

僕が大好きHUNTER×HUNTERのジン=フリークスのセリフです。
僕の一番好きな言葉でもあります。
人生においても、小さい目標でも、目指す過程にめちゃくちゃ魅力的なものが転がってるなあって感じさせられる良いセリフだと思います。

きっと僕は五十嵐トラウザーズでのビスポークの経験を一生忘れないと思います。それは相応の金額だってこともあるし、服自体を大切に所持し続けるだろうから、ってこともありますが、やっぱりこのプロセスに魅力を感じていて、特別感を既に持っているからなのかなあと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?