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前世はフランス人?

あたくし、オジおばさんの前世はフランス人である。根拠は何もない。でも全くないわけでもない。
ラヴェルが好き、ラウル デュフィが好き、サガンが好き、アメリが好き、マカロンが好き。
部屋の片隅はパリのアパルトマンみたいに装飾している。

趣味の一角


こんなミーハーなことだけで、前世云々を言っているわけではない。
25年程前、イギリスを1ヶ月間バックパッカーとして旅行した。その際、どうしてもユーロトンネルを通ってみたくて、ユーロスターに乗ってドーバー海峡を超え、4泊パリに滞在した。
ロンドンのカオスとは違い、均整のとられたパリの街並みは美しかった。コンコルド広場にメトロから上がった瞬間、しばらく息をのんで動けなかったのを覚えている。

ここから面白いことが起こる。

地図を全くみなくても、パリの街を自然に歩けるのだ。ただの徘徊ではない。あそこに行けばこんな店があるはず、オペラ座にはこの道を行けば良い、こんな感じであった。
道ゆくパリジャン、パリジェンヌ、マダム、ムッシュにすれ違いざまに挨拶される。カフェに行けば「Un café et un croque monsieur, s'il vous plaît.」と注文するとテラス席に案内される。全てが自然で不自由がなかったのだ。

シャンゼリゼ通りを凱旋門に向けて歩いていると、ふと右側が気になった。そのまま足を向けるとそこにはエリゼ宮があった。「懐かしい」。そう呟いたのを覚えている。

極め付けはヴェルサイユ宮殿での出来事だ。
ある部屋を見学している時に急に涙が止まらなくなった。悲しいわけでも、嬉しいわけでもない。自然に涙が出てきたのだ。郷愁の念のような、なんとも不思議な感覚を覚えた。

だからあたくし、オジおばさんの前世はフランス人だと確信した。友達にこの話をしたら、「きっとヴェルサイユ宮殿にいた鼠が前世だね」と言われた。

あたくしは、高級娼婦からルイ15世の妾に成り上がり、かつてエリゼ宮とヴェルサイユ宮殿に暮らし、緑色と文化を愛して、マリア テレジアと政治外交を行ったコミュ力をも持つポンパドール夫人の生まれ変わりだと思っている。

言うだけは、ただである。

ポンパドール夫人。ポンパドールヘアの生みの親。

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