1人社長が法人化するタイミングとメリット
個人事業主の方から「法人化すべきかどうか」について相談を受けることがあります。
無計画に法人化をしてしまった場合、逆に税金の支払い額が増えたり、運営コストがかさんだりして後悔する場合もあります。
そこで、今回は「法人化を行うタイミングとメリット」について解説していきたいと思います。
メリット1:法人税率と所得税率の差を利用
まずは、法人化した場合にどれくらいの税金を支払うかを理解しましょう。
法人が支払うべき法人税や住民税などを加味した法人税率(実効税率)は、「およそ25~33%」です。つまり、法人の利益の増減によって利益率自体は大きく変わりません。
一方で、個人の場合の「所得税率」は、所得に応じて税率が高くなる「累進課税」が適用されていますので、税率自体が大きく変動します。
この所得税率に加え、住民税率(約10%)や事業税も支払う必要があります。そこで、課税所得別に個人事業主が支払う税額と税率を簡単にまとめてみました。
中小企業の場合で利益が800万円未満の場合は、法人実効税率は、約25%と想定しておけばよいでしょう。そう考えると、課税所得が600万円を超えたあたりから、法人税率と所得税率が25%程度で同じになると考えられます。
つまり、課税所得が600万円を超えてくる場合は、法人化をすることで、税率を下げ、節税メリットを享受することができます。
メリット2:法人だから落とせる経費がある
親族に役員報酬を払うことで経費にできる
個人事業主の場合は、「専従者給与」として親族に給料を出すことができますが、専らその事業に従事している必要があります。
つまり、その事業でメインに働いている必要があるので、家族が別の仕事をしている場合は、給料を出せません。
しかし、法人の場合は、非常勤役員にしておくことで、メインで働いていない場合でも役員報酬を支払うことができます。
生命保険料を経費にできる
個人事業主の場合は、生命保険料控除という「所得控除」として実質的に経費計上できますが、上限額が数万円になっています。
一方で、法人の場合は、上限はないので、何百万円でも経費計上できる可能性があります。
自分に出張手当を出すことができる
法人の場合は、旅費規程をちゃんと作っておくことで、出張に行った際に出張手当を出すことができます。
この出張手当は、法人で経費に落とせる一方で、所得税が非課税なので、いくらもらっても個人側で所得がかかりません。
メリット3:2年間は消費税が免税になる
個人事業主の時に消費税の課税事業者になっている場合は、毎年消費税を払っていると思います。しかし、法人化した場合、法人設立後から2事業年度は、原則として、消費税の免税事業者になることができます。
つまり、個人事業主時代に支払っていた消費税を2年間免除されます。
ただし、現在は、インボイス制度で、免税事業者になれる場合でも課税事業者を選択する法人も多いと思います。
その際でも免税事業者特有の「2割特例」を適用できるため、納税する消費税額を減額できる可能性があります。
「2割特例」は、本来、免税事業者である事業者が課税事業者になった場合に使える制度で、売上高の2%相当の消費税として納税すればよいという簡易的に消費税を計算する制度です。
法人化のタイミング
法人化のタイミングは、以下の4つの要素を総合的に判断して決めると良いでしょう。
課税所得が600万円を超えた時
法人だけが費用計上できる経費がある時
消費税の課税事業者になった時
国民健康保険を削減したい時
逆に言うと、個人事業主のうち、消費税の免税事業者、かつ、課税所得が600万円未満の人は、法人化せずに個人事業主のままの方が有利な場合もあります。焦って法人化しないようにしましょう。
法人化のタイミングは、専門家と相談して決めることをオススメします。
まとめ
法人化により節税メリットがありますが、ケースバイケースのため、慎重に検討しましょう。
また法人化した後も節税メリットをとるためには、節税施策をしっかりとうつ必要がありますので、専門家に相談しながら進めていくことをオススメします。
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