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【インストカバー】おとななこども/Otona na Kodomo by きゃりーぱみゅぱみゅ/Kyary Pamyu Pamyu 解説

以前から考えていたゲストをお招きした遠隔コラボ企画、ついに1つ完成しました!

菊ちゃん、諸越さん、寛幸さん、ありがとうございました!
※記事末尾に今回参加頂いたゲストのチャンネルや各SNS一覧をまとめています。

というわけで、作ってみての所感や解説などをこちらにまとめていければと思います。自分の性格上、分作にすると投げ出しそうなので広く浅い内容で一回にまとめて書きます。

【構想】

今年2月(色々あったから2月がもう昔に感じる)に仙台・山形にやってきたサックス奏者Patrick Bartley Jr.氏がNYで行なっている"J-Music Ensemble"、日本の音楽のアレンジして演奏しているプロジェクトを、私がとても興味深いと感じていたことが今回の構想のバックグラウンドとなっています。
(日本語字幕もあります↓)

”歌”の支配力がとても強くその前提で制作されることが多い日本のポップス。
歌のない"インスト(ゥルメンタル)"カバーをする場合、多くが"カラオケ音源"的な立ち位置になりがちですが、"インスト"として聴き応えのあるカバーをアレンジする企画をやってみたいと考えていました。

そして、この度の外出自粛措置によって楽器も練習できないし(家で大きな音を出せない)し、ちょうど製作時期にゴールデンウィークが挟まるため、私のキャパシティでもゲストをお招きしても何とかなりそう。

そこに、4月後半からきゃりーぱみゅぱみゅ公式YouTubeチャンネルが過去のライブ映像を公開していったタイミングが重なりました。
Perfumeとはまた違った、パッと見でのポップさの中に、そんな単純な言葉では済まない毒々しさや違和感を含んだビジュアル、特に説明もされないままその世界観を圧倒的に提示され続けるライブパフォーマンス、「なんかすげえ!」(←語彙が乏しい)と感じながら、アップされる毎に一通り観るゴールデンウィークを過ごしました。

…時に人は、特に詳しくない分野でも「よく分からないけど、なんか、すごいよかった」みたいな感動を味わう事があると思います。
余談ですが、私も普段誰かにもそれを味わってほしいという思いを持って、楽器を練習したり、音楽を作っています。

(例:よく分かんないけどすげえ感じ)

【アレンジ】

さて、一通りライブビデオを観ているうちにハッとした1曲がありました。

2:01~のパート、ベースの音色がアコースティックベースの音源が使われています。それに合わせ、2:19~のシンセの跳ね気味のリズム。
この辺りのパートをジャズ的な4ビートに変換出来そうな気がしました。
となると、連想ゲーム的に上物にジャズ寄りの要素を含んだアレンジの構想が固まってきます。

・全体の声のコーラスを管楽器のハーモニーに置き換える
→フルートとフリューゲルホーンを起用して柔らかいサウンドにする、同時にトロンボーンを入れて重心が据わったサウンドにする

・メロディーは管楽器のユニゾン
→トランペットとテナーサックスのオクターブでカッチリしたサウンドで、ハーモニーとの対比を生む

…この時点で管楽器のゲストをお招きするビジョンも見えてきました。

世の中に出回っている「既存曲のアレンジ」の方法は大きく以下のパターンに分類され、その複合であると個人的に感じています。

(A)楽器やサウンドを(原曲から)変える
  …これは最も分かりやすい例だと思います。「アコースティック/アンプラグドver.」や「●●(曲名)を◯◯(楽器名/ジャンル)でやってみた」とか。
(B)ハーモニー/コードを(原曲から)変える
  …原曲のハーモニーを複雑に変化させたり、またはシンプルにしたり
(C)テンポやリズムを(原曲から)変える
     ...(A)のジャンルに合わせたリズムを適用する、全く異なったリズムを適用する
(D)キー(調性)や構成を(原曲から)変える
  …使う楽器に合わせてキー変更や、イントロやエンディングに別なパートを設けたり、原曲のパートをカットする、など
(E)メロディーを(原曲から)変える
    ...変化させたハーモニーやリズムに合わせる(あまりに変えると曲の原型がなくなるが)

例えば、、

※公式ではない映像も混ざっています。

今回の「おとななこども」のアレンジは、、
(A)楽器をシンセベースから違った雰囲気にしたく、エレキベース/アコースティックベースへ、管楽器を多用する
(B)コードは変更なし
(C)リズムを4拍子から7拍子へ、そのためバスドラム/キックの4つ打ちのパターンも変わる
(D)キーの変更も無し。スラップベースのソロパートを挿入、ライブビデオ(これ自体も原曲に比べ演奏時間が短いバージョン)にあった間奏部分2:01~をトランペットのソロパートとして利用
(E)7拍子へメロディーを合わせる

という方針でアレンジを進めました。

【制作編:楽曲】


制作の過程は以下の手順でした。

・まずはメロディーとコードを耳コピし、リードシートを作成する

個人制作であれば直接DAWに打ち込みで完結しますが、今回はゲストに資料をお渡しするため譜面を使いました。

・突然7拍子にアレンジしてみようと思い付いた
そのため、リードシート上で7拍子に合わせてメロディーを作り変えます。
この思い付きのせいで演奏難易度が跳ね上がり後でみんな大変な思いをします。

楽譜というメディア、近年全く使う習慣のない作曲家も増えていますが、慣れているとやはり視認し易く便利です。
やはり数百年音楽の表記に使われ続け成熟しているメディアだなと思います。

・トラックの核となるデモ音源を作る
以下のようなメロディー、シンセ音源で作った管楽器のバッキング、コード、ベース、大体のドラムを打ち込みデモ音源を作成。
この時点で曲全体の構成を固めます。
デモの音質がもっさりしていたり、音圧が低すぎるとレコーディング時にプレイヤーの手元で聴きづらくなる可能性があるため、先日入手したOzone9 Elementsで簡易マスタリングを咬ませて音源を書き出し。

・ゲストミュージシャンにオファー、デモ音源と譜面資料を送る
「久しぶり!元気?これ弾いて!」という内容のメッセージを心からのリスペクトと共に送りつけます。
今回お願いしたお三方、快く引き受けて頂き本当にありがとうございました。

・ゲストミュージシャンの遠隔レコーディング中、並行で出来る作業は進めておく
ドラムのフィルを入れる、ドラム・パーカッション(というかドラムマシン)、キーボード・シンセなどの音色作りや位置関係の調整など。
デモ音源っぽさから段々と広がりのある音になっていく感覚は、時間を忘れるほど楽しいものです。この辺りから夜眠れなくなります。

・ゲストミュージシャンの吹き込みデータが届き次第、デモのトラックを順次差し替える。同時に自分の演奏の録音も進める
連休明け、私が住む地域で「1人で寄り道せずスタジオに行く位は許容範囲であろう」という段階まで外出自粛の状況が改善したのはとても幸運でした。
しかし、7拍子アレンジで演奏難易度が上がり、自分のサックス・フルートの録音を予定の期日で録りきれず。特にサックスソロは20takeくらい録っていて、もはや最後には全てキメキメ。アドリブとは無縁の作り込みになりました。
各々のスケジュールの都合の良いタイミングで吹き込みデータが届くため、この段階でも進められる箇所から順に進めていきます。これは遠隔制作の最も良い部分です。基本的に夜眠れないです。

・ミックス
コンプレッサーで複数の管楽器の音の立ち上がりを揃えたり、EQを使って全体に馴染み易くする、今回マイクをあまりの良いものを使えなかったので可能な限りエフェクターなどで音色を盛る、リバーブ(音の残響に関するエフェクト)などを加える。その他、不自然にならない範囲で出来る限り作り込む。
この頃には自然と体内時計が狂って朝にならないと眠れなくなります。

・マスタリング
最後に全体的に過剰な成分を削るなど調整し、音圧を加えたりなどします。
「最後に」とは言いましたが、動画の制作と並行して数日間この工程の微調整を続けました。

【制作編:その他】

・動画制作
StayHome期当初から流行った「自撮り映像を重ねた風の動画」のアイデアがあったため、音データと一緒に撮って頂いた映像を元に編集。
こちらも運が良く、AppleのFinal Cut Proの90日間トライアル版を利用する事が出来ました。
恐らく、これよりグレードの低いソフトではこのようなコラージュ動画を作るのに機能面で厳しく、ハイグレードなソフトであれば私の使用マシン(Macbook Pro 13inch 2015版)では動画の処理の負担で挙動が良くなかったであろうと思います。
Final Cut Pro、時間が掛かりそうな処理を一旦後回しにするなどのそこそこのスペックのユーザーに優しい工夫がなされていて使い勝手が良かったです。
コレは正式にお買い上げコースですね。
このソフトのおかげで、動画についてはふた晩でほとんどの作業を終える事が出来ました。上記のマスタリングもあり、作業するから眠れないのか、眠れないから作業してるのかどっちか分からなくなりました。

・サムネイル

写真をキラキラさせて肌を美白にするスマホアプリや、みんな大好きいらすとや様、Canvaを駆使して作成しました。
西遊記とハロウィンのキャラクターはきゃりーのこれまでの楽曲のMVのモチーフとなっているため、一応イメージを寄せておきました。
毎度思うのですが、こういった動画と画像関係は作るのが好きな方にお任せした方が必ず良い効果を生むはずなので、やりたい方がいらっしゃれば本当にお任せしたいです。。

【完成、アップロードへ】

お疲れ様でした!数日掛けて体内時計を戻します。

というわけで、カバープロジェクトをまず1つめ、やってみました!
演奏活動については今後も不透明なこの状況。
遠隔で距離や時間に囚われず作り込みが出来る、その上、「最近どう?」の挨拶も兼ねて演奏仲間と一緒に創作が出来るこの活動形態は不定期でも続けていきたいなと思っています。
「この曲を聴いてみたい!」「この人にオファーしてみて!」というものがあればぜひお気軽にリクエストをお寄せください!
1人でリサーチ出来る範囲には限界がありますので、ぜひありがたく活動の参考にさせて頂きます!

最後に、今回ご参加頂いたゲストミュージシャンの皆様です。
お三方それぞれYouTubeチャンネルやSNSのアカウントを持っています。
ぜひこの機会にご登録、フォローお願いします!

【Guest】
●菊田 邦裕(Trumpet, Flügelhorn)from 仙台
・YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/channel/UCL7aERvz2tS1SvXQYUEmybw
・Twitter: https://twitter.com/hiro_tp_flg_roy
・instagram: https://www.instagram.com/hiro.tp.flg/
●諸越 俊玲(もってぃ)(Trombone)from 秋田
・Blog: http://motty.sblo.jp/
・Twitter: https://twitter.com/rb_motty
・instagram: https://www.instagram.com/rb.dr.tb.motty2/
●黒瀬寛幸(Electric Bass, Acoustic Bass)
・YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/channel/UCo2qhKm3JNB5IejMcu1ArfA
・Twitter: https://twitter.com/Kurose_Hiroyuki
・instagram: https://www.instagram.com/kurose_hiroyuki/

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