スケッチカード_ヘッダー

自分も知らない形と出会うための「スケッチ展開カード」

昨年から、大学でアイデアスケッチの授業を受け持ち、いろいろ実験的なワークを用いて学生と一緒にアイデアスケッチの探求をしていました。中でも好評だったのが、この「スケッチ展開カード」です。

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スケッチ展開カードとは?

この「スケッチ展開カード」は、一体何をするためのものかと言うと、スケッチワークの中で特に下流にあたる「スタイリング(造形)スケッチ」の展開段階で、自分の中にある造形の引き出しから飛び出して、自分自身も思わぬ形を発見することを楽しむための発想を促すカードです。

<スケッチの主な段階>
→「なにをしよう?」の企画段階 Whyの領域
・スケッチノート
・グラフィックレコーディング
→「どう叶えよう?」の構想段階 How Toの領域
・サムネイルスケッチ/ラフスケッチ
・アイデアスケッチ(IAMAS)
→「もっとこうしよう!」最適化段階
・スタイリングスケッチ ◀︎主にここをトレーニングする
・テクニカルスケッチ

造形展開の基本的なセオリー

身の回りにあるモノをよく見まわしてみると、基本的な形態が存在することに気が付くかと思います。例えば「まる」や「しかく」「さんかく」といった「多角形」などです。当たり前といえば当たり前ですが、こういった基礎形態(あるいはその変形)によって、様々な製品の要素が構成されています。

●:丸、円、球など

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同じ「●」のモチーフでも、これだけ造形展開の違いが出ますね。

■:面、多角形など

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立方体の場合、角の丸みの取り方だけでも大きく印象が変わります。また、一面だけ膨らませたり、大きくカットしたり、基礎形態中の基礎形態なので様々に展開できます。

ー,〜:ライン、稜線など

線材やパイプの曲げで構成されている製品などがあげられます。また、面の稜線が特徴的(クルマのデザインでよくある造形「キャラクターライン」と呼ばれる)であったり、グラフィック処理で帯が入っていたり、線の使い方も多様です。

スケッチ展開カードの種類

■オレンジのカード(フォルムベースカード)
基礎形態を規定するカードです。まず最初にこのカードを引いて、基本のモチーフとする形状を決めます。
形の解釈を固定化しないように、説明には「丸?球?円?」など疑問形で書いています。

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■青のカード(メインビューカード)
基礎形態が決まったら、それがどこから見たときにその形状に見えるのか?を規定するカードです。
ex)マエから見て「丸い」、ウエから見て「多角形」、など

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■グレーのカード(フォルム展開カード)
基礎形態から、どう形状を変化させていくか?の指令が書かれているカードです。
ex)のばす、どこかを大きく、ふくらませる、など

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スケッチ展開カードを使ったワーク

<アイスブレイク>
まずは、オレンジのフォルムベースカードを使って、身の回りにある「引いたカードの形」の物を順番に挙げていきます。ざっくばらんに挙げていっても良いのですが、慣れてきたらリレー形式でやっても盛り上がります。

<オレンジ・トレーニング>
アイスブレイクと同様にフォルムベースカードを使い、お題を出してスケッチをしていきます。例えば「カメラ」をお題に、カードを引きます。こんなワークシートも使って展開します。

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ワークシートの下には、スケッチの中から発見した形状が内包する「意味」をタグ付けする欄があります。カードを使った展開中は、純粋に形状の展開に集中してもらい、後から「この形にはどんな意味があるのだろう?」と振り返ってもらいます。

<ブルー・トレーニング>
フォルムベースカード+メインビューカードを使っていきます。やることはオレンジメニューと同様ですが、「どこから見てその形なのか」の制約が追加されます。オレンジトレーニングよりも高負荷なメニューです。

<グレー・トレーニング>
フォルムベースカード+フォルム展開カードを使っていきます。(必要に応じてメインビューカードも使います)まずフォルムベースカードを使ってスケッチを描き、そのスケッチの形状展開をフォルム展開カードで決めて強制発想してもらいます。

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展開の方向性を「規定する」効果

形を創作する力は、意識していないとすぐに自分の知っている形や好きな形、馴染みの形ばかりになってしまいます。形に対して意識的に向き合わないことには「コロンとしてかわいい」「シュッとしてスマート」など、感覚的な造形の説明しかできないようになってしまいます。

なぜ、この形は「かわいい」と形容される気持ちを呼び起こすのか?なぜ、スマートな印象にするにはシュッとさせるのか?他にスマートに見える方法はないのか?など、自分自身の生み出す形に、どれだけ意味を見いだせるかが造形展開の幅を決めます。

そのためには、自分の見知った世界から飛び出すための「きっかけ」が必要なのです。このカードを使ったワークは、あくまでトレーニングが目的のものですが、ここで培った物の見方は、きっと発想を広げてくれるでしょう。

アイデアスケッチフィットネスの案内

そんな、発想手法としての「アイデアスケッチ」を探求するワークショップを開催していこうと考えています。随時Peatixでイベント出していきます。

第一弾は #観察スケッチ のワークショップを企画中です。もちろん、このカードを使ったワークショップやアナロジーを使ったアイデア展開などもやっていきたいと思っています。

▼観察スケッチに関するnote記事を集めたマガジン


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