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令和婚は口頭で。

歴史的な改元から既に3時間が経過した。
改元をこんなに明るいムードの中で迎えるのは全ての日本人が初めて経験することだ。
さすがに年末年始のような派手さは無かったけれど、やっぱり渋谷は雨にもかかわらずビニール傘を差しながら改元のときを待つたくさんの人で溢れ返っていたし、このタイミングに合わせて新しいことを始めようなんて人もどうやら多いみたいだ。

起業を考えている人たちなんかは令話元年5月1日の設立を希望する人も多かったみたいだけど、残念ながら新天皇即位の日ということで祝日になってしまった。
祝日だと登記所は休みだからね。
どうあがいても設立は無理ということになる。

一方で婚姻届となるとどこの区役所、市役所でも24時間365日受け付けてくれる(ということになっているけれど、そうじゃないところがあったらごめんなさい)。
なので令和になった瞬間に提出することももちろん可能。
というより実際にそれをやっている人たちが全国にたくさんいるようだ。
令和婚と名付けられてちょっとしたブームが起きている。

平成を書き換えて令和にしているのが何だかとてもいいじゃないか。

令和婚されたみなさんおめでとう!!!
末長くお幸せに。
だけど令和婚っていつまで有効なんだろう?
令和に結婚すればそれすなわち令和婚ではないのかな?
ついつい疑問に思ってしまう。

ところで皆さんは婚姻の届出を口頭でもできることを知っていますか?
根拠となるのは民法739条です。

民法 第739条【婚姻の届出】
① 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

② 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人2人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

ちなみに戸籍法の定めるところによりとあるが、戸籍法にはこのように書いてある。

戸籍法第27条 届出は、書面又は口頭でこれをすることができる。
第37条 口頭で届出をするには、届出人は、市役所又は町村役場に出頭し、届書に記載すべき事項を陳述しなければならない。

② 市町村長は、届出人の陳述を筆記し、届出の年月日を記載して、これを届出人に読み聞かせ、且つ、届出人に、その書面に署名させ、印をおさせなければならない。

③ 届出人が疾病その他の事故によつて出頭することができないときは、代理人によつて届出をすることができる。但し、第六十条、第六十一条、第六十六条、第六十八条、第七十条乃至第七十二条、第七十四条及び第七十六条の届出については、この限りでない。

民法の規定と戸籍法の規定を合わせるとつまりは

婚姻をするカップルが証人二名と一緒に市町村長の前で

「僕は!」
「私は!」
「この人と結婚します!」

「私たちはその証人となります!」

って言うのを市町村長が聞いて筆記し、それを陳述し間違いなければその書面に印を押させるという流れでいいのかと思います。
目が見えない方は口頭の方法を取ればご自身の気持ちをちゃんと伝えて婚姻できるということになりそうですね。

ちなみに戸籍法の28条を見ると

戸籍法28条

法務大臣は、事件の種類によつて、届書の様式を定めることができる。

② 前項の場合には、その事件の届出は、当該様式によつてこれをしなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。

となっていますので、婚姻の場合で言えばまずは書面が定められた様式だと思っていいでしょう。

やむを得ない事由があるときに限って口頭が許されると。

さてこのやむを得ない事由。
今この瞬間に届出ないと彼女が結婚しない!とか言っているような緊迫した状況はやむを得ない事由になるのかな。

例えば今夜令和婚をするために区役所を訪れたカップル。
夫婦として認められるその瞬間を幸せ一杯な気持ちで待っていました。
しかしなんということでしょう。
いよいよ提出という瞬間になって青ざめた彼氏くんが言うのです。

「あれ、、、やっば、婚姻届どこかに落としてきちゃった、、、」

と。

それまでずっと笑顔だった彼女の表情は一変。
どうしてあなたはいつもそうなんだ!そういうところが本当に嫌だ!やばいのはお前だ!と泣け叫び、近くで咲き誇っているツツジをむしっては投げ、むしっては投げを繰り返す。
他の令和婚待ちカップルたちも見ているだけで何もできません。
そして赤、白、ピンクと一通りのツツジを投げ終えた彼女が諦めたようにこう言います。

「もういい。結婚やめる」

さぁ困ったのは彼氏くん。
とりあえず新しい婚姻届をもらって書き直そう、幸い印鑑も持ってるから証人さえ周りの人にお願いすれば何とかなるんじゃないかなと提案してみても立つ瀬なし。
理由はこうだ。

「だって二回も婚姻届書くなんてさ、再婚みたいじゃない」

それなら今から探しに行ってくると言ってもやっぱりダメ。

「私は令和婚が良かったの。探して帰ってきても時間経っちゃってるからもう意味ないし。令和婚って友達に自慢できないし」

ああ哀れな彼氏くん。この子は自分と結婚したかったのではなく、もしかして令和婚がしたかっただけなのか、そんなことを思ってる。
怒りと悲しみに感情的になっているんだと理解はできるけれど、、、悲しくなってきた彼氏くん。

そんなカップルに令和初めての奇跡が起こる!

「区長!!!こんな時間にどうされたんですか?」

という職員の声。
見れば先の選挙戦でポスターに載っていたあの人が目の前に。ああまさしくあなたは区長ではありませんか!!!

「ん?いやいやせっかく令和だしね。令和婚をする区民たちをこの目で見てみたくて」
溢れる区民愛。なんていい区長なんだろう。

彼氏くんは思うのです。
さあ区長!ここで今あなたに問いたい!
私は!私のこの状況はやむを得ない事由にあてはまりますか!
戸籍法第28条2項にあてはめてくれるんですか!と。
あてはめてくれるのならば、先日はライバル候補に入れられた一票が、次回はあなたのもとに入るでしょう、と。

まぁあてはまらないでしょうね。笑
本当にこんな状況になったら美談としては区長が臨機応変に対応してあげるってのが一番いいのでしょうけど、そもそもそんな権限もあるかわかりませんし。
何より妄想が進み過ぎてどこまで現実的に考えればいいのかわからなくなってしまいました。
私の悪い癖です。

いよいよ始まった新時代、令和。
たくさんの人たちがたくさん笑える時代になりますように!

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