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メディア業界研究してみました。

1:メディア業界とは?

メディア業界とは、メディアを通じて多くの人々に多様な情報を届ける業界のことで[1]、大きく「テレビ」「新聞」「雑誌」「ラジオ」「インターネット」に区分されています。

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図1:メディア業界市場規模推移(日本の広告費より筆者作成)

メディア業界全体の市場規模は微増傾向ですが、そのなかでもインターネットに限定すれば、2015年から2020年の間に約2倍に成長しています[2]。

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図2:日本の媒体別広告費(サイバーエージェントHPより)

インターネット領域の成長は媒体ごとに見てみると明らかで、他の「テレビ」「新聞」「雑誌」「ラジオ」の衰退とともに、成長してきたことが分かります[3]。このことから、インターネットに限定して掘り下げて分析していきたいと思います。

2:インターネット広告の成長理由

インターネット領域が成長している理由は複数ありますが、最も大きな理由はスマートフォン等のモバイル機器の普及だと考えています[4]。

〔スマホなどのモバイル機器の普及〕
NTTドコモのモバイル社会研究所の調査によると、日本国内のスマートフォンの保有率は2010年の4%から、2021年には93%となっており、急速に普及が進んでいます[5]。

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図3:スマホ保有率推移(NTTドコモ モバイル社会研究所公表資料より)

スマートフォンは常時インターネット接続が可能なため「いつでも・どこでも」利用でき、ユーザにとっての利便性がとても高いです。こうした背景から、新聞や雑誌ではなくスマートフォン等のモバイル端末で情報収集するユーザが増えています。

総務省の実施した2020年の調査では、平日のネットの利用時間(平均168.4分)が初めてテレビを生で視聴する時間(163.2分)を上回りました[6]。2016年のスマートフォンによるネット利用時間は、67分であるため、急速なスマートフォンの普及が定量的に分かります[7][8]。

TV視聴時間とネット利用時間の推移

図4:TV・ネット利用時間推移(総務省資料より筆者作成)

広告は掲載する価値のある(ユーザが集まる)場所に掲載され、それに伴い広告費が発生します。こうしたユーザのデジタルシフトを背景に、インターネットの広告の価値が向上し、成長したと考えられます。

それに加えて、
・費用対効果が良いことで利用しやすい媒体であること
・広告手法の多様化とアドテクノロジーの発展
など様々な理由があり、インターネット広告領域は成長しています[9]。

また、矢野経済研究所の調査によると、インターネット領域の成長は滞ることなく、2023年度には約2.8兆円(19年度比+49.7%)まで拡大すると予測されています[10]。


3:インターネット広告市場の動向

成長著しいインターネット広告領域ですが、市場に大きな影響を与える外部要因として、法規制やプラットフォーマーによる規制が挙げられます。近年は個人情報保護が重視される傾向にあるため、それに伴う規制によって業界が影響を受けています。

大きな規制としては以下のものが挙げられます。

1:Googleのクッキー規制

まずクッキーとはなにかについて説明します。

※クッキーはファーストパーティークッキーとサードパーティークッキーの2種類に区分されますが、今回はサードパーティークッキーについて記載してきます。

まずクッキーとは、サイトに訪れたユーザーの情報を一時的にユーザーのブラウザに保存する仕組みで、Webサイトに残る「足跡」のような役割を担っています[11]。

正直これだけではイメージしにくいと思うので、クッキーが活用されている具体例を紹介したいと思います。

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画像1:クッキーの仕組み(日本経済新聞2019年2月)
具体例:
ある通販サイトで買い物中にお客様情報を途中まで入力し離脱。
その後別のWEBサイトを閲覧していたところ、先程購入しなかった商品の広告が表示された。

クッキーは保存した「足跡」をトラッキングすることで、ターゲティングされた広告配信などに利用されています。広告配信を行う企業にとっても、自分に最適な広告が配信されるユーザにとっても、クッキーは便利なものです。しかし、ユーザの行動追跡を行う点でプライバシーの侵害に繋がるとの声から、規制が設けられることになりました。

具体的には、複数のサイトを横断して閲覧した履歴(足跡)を追跡していくために活用されるサードパーティークッキーが廃止される予定であるとGoogleが公表しています。そのため各企業はクッキー規制に対応する動きを強化しているようです。


2:Yahoo!の広告規制強化

・重大な違反表現」と認定された広告は掲載不可
明らかな虚偽・誇大広告など、Yahoo!の広告審査において「重大な違反表現」と認定された場合に、該当する広告内で宣伝された商品は広告掲載ができなくなります。そのため、一度重大な違反表現と認定されると、表現を訂正しても広告掲載ができないこととなります[12]。

・広告掲載の規制を強化
新型コロナウイルスに関連する広告や、外見のコンプレックスを露骨に表現した広告の規制が設けられました。また、定期購入を前提とした通信販売の被害が増加しており、広告に対する審査が強化されました[12]。

このように消費者を優先するクリーンな広告を求める流れが生まれているのです。そしてこのクリーンな広告規制を求める規制の影響を大きく受けているのが、アフィリエイト広告市場です。

国民生活センターによると、2020年のネット広告関連のトラブル相談は約8.6万件と過去最多となり、そのなかでも「アフィリエイトをみて商品を1回のみ購入したが、いつの間にか定期購入契約となっていた」という相談が目立っているそうです[13]。

そのため消費者庁が大規模な実態調査を実施することとなり、ガイドライン作成や、必要性によって法の罰則強化が検討されるとのことでした。

アフィリエイト広告市場が右肩上がりで成長していますが、クッキー規制や広告規制の強化の影響を大きく受けています。そのため、各社がどのような戦略を描いているのかなどより深めて分析していきたいと思います。

4:アフィリエイト広告市場の概要

アフィリエイト広告の市場規模は、2020年度で3258億円(前年比+5.2%)とコロナ禍の影響で成長は鈍化したものの、年々市場規模を拡大させています[14]。

2024年度には4950億円規模に成長する見込みであり、各社の事業分析や戦略理解を通じて今後の市場動向についても考察していきたいと思います。

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5:企業分析

続いて、各社の成長戦略を分析してみたいと思います。

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画像②:アフィリエイトの構造(WEBメディアより)

まず、アフィリエイト広告市場のプレイヤーとしては、ASPサービスを提供する事業者と、アフィリエイトメディアを運営する事業者の2つに区分されます。それぞれについて、企業をピックアップし分析したいと思います。

まずは、ASPサービス事業者についてです。

1:アドウェイズ
個人メディアでの情報にはなりますが、アフィリエイト広告代理事業で最も売り上げを上げているのがアドウェイズです[15]。アフィリエイト市場において、ASPを提供するリーディングカンパニーです。

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画像③:アドウェイズのサービスラインナップ(HPより)

アドウェイズは、アフィリエイトサービスを専門で行うのではなく、特にスマートフォン上の媒体(アプリ・WEBメディア等)に対する広告サービスを複数展開[16]することでシェアを拡大しているように感じました。

お肉屋さんや八百屋さんがあっても、スーパーに買い物に行くように、複数サービスを展開していることは、クライアントからみると利便性が高く、かつ継続的な取引により信頼関係も生まれるため、とてもメリットが大きいように思います。

2:ピアラ
ピアラはの業界特化型(ビューティ&ヘルスケア)で広告代理事業を展開しています[17]。業界特化型になることで統合的なソリューション提供が可能となっているのだと思います。

また業界特化型になることで、ピアラとしてもノウハウの蓄積ができるため、成果(KPI)保証型でサービス提供しているのも特徴の一つです。

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画像④:ピアラ・サービス内容(HPより)

今後の戦略としては、分散しているデータをすべて集約し、一元管理することで効果測定やPDCAを可能とする、通販DX事業に注力していくとのことでした[18]。

業界特化型となることで成果(KPI)保証ができる点も魅力ですが、やはり領域特化して複数サービスを展開することで、業界の性質の把握ができそれに応じてサービスを提供できるのが魅力であると感じました。

続いて、メディアサービスについてです。

3:RPAホールディングス
インターネット広告(アフィリエイト市場)は変化の激しい市場です。そうした市場の変化に対応しながら、付加価値の高いサービスを提供するには、業務の効率化が必要不可欠です。

RPAホールディングスでは、RPAを活用してレポーティング業務などの定型業務を自動化することで、高い生産性のメディア運営を実施しています。現状の事業規模としては77億円(2020年2月期実績)とそこまで大きくなく、これからさらなる拡大期を迎える事業フェーズです。既存領域での拡大を狙い、RPA活用した業務の有効性を確立しつつ、新規領域に展開するのが今後の成長戦略になると考えられます。

実際に、既存メディア領域である金融、人材、通信分野で取扱シェアの拡大を進めるとともに、未参入のメディア分野への新規参入という成長戦略を描いているようです[19]。

2021年度第一四半期では前年比+22%増となっており、今後の成長に期待ができるかたちとなっております。

アフィリエイトメディアを運営し収益を得ている企業は多いため、RPAホールディングスのように生産性で差別化したり、高い運用効果で差別化をして事業を運営している企業が多い印象を持ちました。

その他では、トレンダーズやキュービックなど、WEBメディアを運営することで収益を上げている企業があります。気になる方はぜひ見てみてください。


4:マーケットエンタープライズ

マーケットエンタープライズのメディア事業の特徴は、広告収入を得るアフィリエイトメディアでありながら、自社サービスに送客を行うオウンドメディアとしての機能も持ち合わせている点です。

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画像⑤:ME・メディア事業の内容(2020年度決算説明会資料より)

自社集客機能のあるオウンドメディアのみであれば保有する企業は多いですが、運営コストはすべて費用となってしまいます。しかし、アフィリエイトメディアとしての機能と両立することで、集客機能を持ちながら収益を得られるという両取りをしている状態です。

SESSAの投資リサーチでは、以下のように記載されていました。

同社のメディアは、掲載された記事のオリジナリティの高さやコンテンツの品質が良好であることに加えて、検索エンジンにおいて検索ボリュームの高いワードで上位を獲得できるSEOスキルの高さなどを背景に、ページビューは着実に拡大しており、2020年4月はコロナウィルス拡大に伴う外出自粛要請がある中、月間1448万ページビューと過去最高を更新した。

中長期経営戦略によると、新規立ち上げされたメディアを拡大していくのが直近の成長戦略のようです。メイン事業の拡大に貢献しつつ、メディア単体でも収益を稼いでいるので、会社としてもシナジーを発揮しているといえると思います。


6:今後の市場動向の考察

1:ASPサービス
ASPサービスについてはアドウェイズ・ピアラの戦略からも推察できるかと思いますが、サービスの利便性を高めるために複数サービスを展開していく方向性だと思いました。

複数サービスを展開するだけでなく、各サービスにおいても質の担保は必要になるため、事業運営に必要なリソースも拡大してくと思います。そのため、既存のリーダー・フォロワー企業を中心に業界が拡大していくのではないでしょうか。

2:WEBメディアサービス
企業が運営するメディアは、オウンドメディア(自社集客)の機能の必要性が高まり、アフィリエイトメディア(収益機能)と両立したメディア運営をする企業が増えていく方向性だと考えています。

規制の部分でもお話ししたように、サードパーティークッキー規制によるターゲティング広告問題によって、ファーストパーティークッキーとして自社メディアを活用し、集客機能を持つことの重要性が高まってきます。自社メディアによってクッキー情報を取得できれば、ターゲティング広告も配信でき、かつ集客機能も持っているので自社事業を伸ばしていくことができます。

ただオウンドメディア運営だけではコストになってしまうので、運営する企業が少ないという側面があるので、上記で紹介したマーケットエンタープライスのようにアフィリエイト機能によって収益を上げつつ、集客機能も持つメディアが増えていくのではないかと思います。

以上、

最後までお読みいただきありがとうございました!!!

【参考】
[1]:https://job.rikunabi.com/contents/industry/910/
[2]:https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/
[3]:https://www.cyberagent.co.jp/ir/superiority/internetad/
[4]:https://www.flat-inc.jp/blog/webmarketing/webmktg-04108/
[5]:https://www.moba-ken.jp/project/others/ownership_index.html
[6]:https://www.asahi.com/articles/ASP8T64WFP8TULFA00G.html
[7]:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111120.html
[8]:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd252510.html
[9]:https://iwparchives.jp/files/pdf/iwp2005/iwp2005-ch05-02-p282.pdf
[10]:https://markezine.jp/article/detail/32538
[11]:https://service.aainc.co.jp/product/letro/article/what-is-cookie
[12]:https://marketing.creditsaison.jp/article/2021/06/14/104
[13]:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG202TN0Q0A221C2000000/
[14]:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2656
[15]:https://careerup-jobchange.net/salesranking_affiliate.html
[16]:https://www.adways.net/service/
[17]:https://www.piala.co.jp/ec-transformation/
[18]:https://ssl4.eir-parts.net/doc/7044/ir_material_for_fiscal_ym/106108/00.pdf
[19]:https://ssl4.eir-parts.net/doc/6572/ir_material_for_fiscal_ym/98620/00.pdf










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